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七人目は偽勇者?  作者: 木南
第三章
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第三十一話

今日二話目の投稿となります。

その代わり、もし来週投稿できなくても勘弁して下さい。



「っし、それじゃあそろそろ休憩しよう」


「そうだね。時間もちょうどいいし、お昼ご飯でも食べよう」


以前戦った豚もどきの群れを一掃した俺たちは、ひとまず休めるところを探しにその場を離れた。


「今日は何食べようか?」


「昨日はお肉食べたし、今日はもうちょっとあっさりしたのがいいなあ」


呑気な事を言いながら、辺り一面に鮮血や死体がバラバラに飛び散った場所を歩いていく。

初めて迷宮に潜った時であれば間違いなく吐き気を催すであろう光景も、俺たちは食事の話をしながら平然と歩けるほどに慣れてしまっていた。


「よし、ここなら大丈夫でしょう」


そう言って、先頭を歩いていた南条さんが止まる。

それぞれちょうどいい大きさの石を探しそこに腰掛けたところで、待ちきれないとばかりに篠原ちゃんが口を開いた。


「ってことで、東先輩!シーザーサラダ出して下さい!」


俺に皿を差し出してくる篠原ちゃん。一体何を言っているのだろう、と思うかもしれないが、残念ながら何も間違ったことは言っていない。


「ああ、分かった」


俺も当然のように頷いて、魔力を手のひらに集めた。


「ーー【クリエイト・ソード】」


淡い緑の光を放ち、俺の手の中に不恰好な剣が現れる。

フランベルジュを更にグニャグニャにしたような、最早剣とは言えないような形の剣。

俺はそれを、篠原ちゃんが差し出した皿に向かって軽く振るった。

すると微かに煙を上げて、シーザーサラダがその皿に降り注いだ。


……何が起こったのか、というと。まあ要するに、また【創剣魔法】で変な剣を創り出したという話である。


俺たちが迷宮に来るにあたって、まず問題となったのがやはり食糧の問題だった。

いくらアイテムボックスがあるといえど、そもそも王城にあった食糧にも限りがあったのだから持ってこれる食糧など大した量ではない。

自然俺たちは困窮し始めた。


そこでまたしても、俺の固有魔法が大活躍したのだ。


きっかけは、南条さんの一言。

「ド○えも○みたいだね」の一言で、俺は様々な使い道を考え出した。


例えばこの剣のように、食べ物を生み出したりとか。

他にも水を出したり、果汁まで出せるような剣が生み出せた時はさすがに笑ってしまった。


いや、それでも最初はここまで何でもできるとは思っていなかった。

しかし、アニメの影響は強いもので、何がどうなってそうなるのかを知らずとも、そういうことが起こるというイメージが頭に刻みつけられていたおかげで碌に知識もなく再現出来てしまったのだ。

全く、アニメ様々である。


ちなみにもちろん味は悪くない。

魔力を使うこと以外欠点が見つからないあたり、やはり固有魔法は卑怯だと思う。


「……いつ見ても魔法みたいですよね」


剣の先からシーザーサラダが降るというトンチンカンな光景を見た二ノ宮さんが、微かに苦笑いを浮かべながら呟く。

そんなオブラートに包まないで、ハッキリ気持ち悪いって言ってくれてもいいんだけどな。

フランベルジュが紫色してるせいで、見た目からしてなんか毒々しいし。


「まあ実際に魔法だしね。……それで二ノ宮さんはなに食べる?」


「……茜ちゃんと同じものでお願いします」


「はいよ」


少し恥ずかしそうに皿を差し出してくる二ノ宮さんに剣を向ける。

ボトボトと音を立ててサラダが降り注ぐ様子は何度見ても違和感を拭えなかった。


「あ、私も同じので」


「ああ、分かった」


南条さんも、あっけらかんと皿を差し出してくる。

さも当然のようにこんな事をされると少し気になりはするが、わざわざ言おうとはしない。


南条さんの皿に同じように注いだ後、自分の皿をアイテムボックスから取り出し、肉炒めのようなものを剣から出す。


「それにしても」


「どうかしたの?」


呟いた俺に、南条さんが問いかけてくる。

ひとり言のつもりだったんだが、四人もいるのだから流石に聞かれてたみたいだ。


「いや、さ。三人とも、よくそれだけで足りるなって思ってさ」


仕方なしに俺が答えると、三人が顔を見合わせて微妙そうな表情になる。

何か聞いちゃいけないことを聞いてしまったのかと思い少し焦っていると、微妙そうな顔のまま南条さんが答えた。


「えっと、別に東くんが悪いって言うわけじゃないんだけどね」


「何かあったのか?」


「いや、その……」


「何だ?悪いところでもあったなら教えてくれ」


言いにくそうにする南条さんを急かす俺。

俺は気づかなかったが、もし何かこの剣に問題があったのならすぐに直さなければならない。

そういった意味もあり、焦っている俺を見て仕方なさそうに南条さんは言った。


「……美味しすぎるんだよ」


「……は?」


そして、南条さんから出てきたのは予想外の言葉だった。

思いつきもしなかったその問題に、思わず呆然とする。

そんな俺の反応も予想の内だったのか、表情を変えずに南条さんは続けた。


「だから、美味しすぎるんだよ。だから余り食べられないんだよ」


「……すまない、何が言いたいのか分からない。美味いならそれでいいじゃないか」


ますます困惑する俺に、意を決して南条さんは言った。


「美味しすぎて止まらなくなるんだよ!そのせいで太りそうなの!」


「……すみませんでした」


うん。

それは女子からしたら死活問題なんだと思う。

でも、それを俺に察せというのは無理があるんじゃないだろうか。


言いたくないことを言わされて、冷めた目を向けてくる南条さんに必死に謝りながら、俺は心の中で弁明するのだった。



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