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七人目は偽勇者?  作者: 木南
第三章
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第二十三話

難産でした。



あれからどれだけ時間が経ったのか、天井裏にずっといた俺には分からないが、意外とあっさり王様が見つかった。

王族といえば謁見の間だろう、という安直な考えが正しかったようで、体感では数十分くらいしか経ってないように感じた。


「ユーフォル……」


そこには悔しそうに、悲しそうに顔を歪めている王様の姿があった。

それは生徒会長に求婚していた姿とは余りにもかけ離れていて、一瞬話しかけるのを躊躇ってしまうほどだった。


「……」


ある種の威圧感のような、人の上に立つ者によく見られるオーラみたいなもの。

こんな状況で初めてそれを見せた王様に、感服すればいいのか呆れればいいのか困ったが、今はそれを考える時じゃないことを思い出して頭から追い払った。


「……王様」


索敵系のスキルも持っていないので、できる限りで周りの気配を探す。

そうして周りに人がいない事を確認した俺は、天井から飛び降りて後ろから話しかけた。


「……アズマ、どうかしたのか?」


すると王様は、特に動揺する様子もなく振り向いてきた。

その様子に少し戸惑いながら、俺は聞きたかったことを聞いた。


「まず、聞きたいんですけど。先輩方と勇真……楠の三人がいなくなったことは知ってますか?」


「流石にそれくらいは聞いとるよ」


もしも知らされてすらいなかったら。

そんな最悪の可能性を考慮しての問いだったが、そこまでないがしろにはされていなかったようで、苦笑いしながら王様は答えた。


「ならよかったです。……それで、ならどうして会いに来なかったんですか?朝食に顔を出すくらいできたはずだ」


「……」


「時間がなかった、なんて嘘は通用しませんから」


無表情になった王様に先んじて言う俺。

王様は考え込むように少し間をとった後、口を開いた。


「……黙秘する、と言いたいところだが……お前はそれでは納得しないのだろう?」


「当たり前です。王様に会えないだけなら我慢しましたが、ここの人達がおかしくなってることといい、俺たちを束縛するような対応といい、おかしなことが多すぎる」


ただでさえ勇真達がいなくなって焦っているのだ。

場所が分からないし探す方法もない以上、わざわざ探しに行こうとは思わない。

だからといって何もしないでいられるほどおとなしい人間なつもりもない。


できる限りの事はしたい、と思っているところでこの王宮の異変だ。

王宮の人たちがおかしくなっても普段であれば放っておくところだが、あまりにもタイミングが良すぎる。

こうなると、勇真達の転移……ひいては西原先輩の異常にも、この王宮の異変が関わっていると考えるのが妥当だろう。


と、するなら。


「これを聞くことが、勇真達を探すことに繋がる一番の近道だと思います。だから、絶対に話してもらいますよ」


「……これは王族の恥だ。言いたくなかったのだが」


俺が考えたことなんて、王様はとうの昔に考えていたのだろう。

特に否定もせず、溜め息を吐いてから王様は続けた。


「全ての元凶はユーフォルだ」


王宮の中にいる貴族が元凶なら、使用人達ならいくらでも操れるだろう。

そんな俺の浅知恵を、粉々に打ち砕く一言だった。


「ユーフォルがおかしくなったのか、貴族の誰かがユーフォルをおかしくしたのかまでは分からん。だが、使用人達がああなるようになった元は、間違いなくユーフォルだ」


動揺する俺に構うことなく王様は続ける。


「このことは、精神に影響を及ぼす魔法の類いが一切効かなくなるアイテムを持った、私直属の部下に調べさせた。だから、ほぼ間違いない。やつらがアイテムすら超越できる魔法が使えるなら分からん、というかお手上げだがな」


皮肉げに笑う王様。

呆然としながら聞いていた俺だったが、その状態でも引っかかる言葉があった。


「……やつら、とは?」


まるで犯人まで分かっているような言い草に、思わず問いかける俺。

王様は心底悔しそうに顔を歪めながら答えた。


「犯人のことだよ」


「それは分かってます。誰、なんですか?」


「……恐らく、魔族だ」


「なっ!」


それは、王宮の異変について調べた中で、最も驚くべき事実だった。


「魔族がこの王宮の中枢まで入りこんできたって言うのか!?」


思わず言葉が乱れてしまうが、それすら気にならないくらいの衝撃。

なんせ、この国の中で最も安全であるはずの王族が、敵であるはずの、それも絶対に警戒しているはずの魔族から被害を受けたのだ。

それは俺たち勇者も絶対に安全だとは言えなくなったということであり、しかも魔族から一番恨まれているはずの俺たちがいつでも狙われるということに等しい。

驚くのも仕方ないことだった。


「いや、中枢には入り込んでいない。これは王族にしか伝えられていないことだが、各国の王宮には魔族が入ってきたら感知できる結界が張ってある」


だが、流石にそこまでザルな警備ではなかったようだ。

そんな便利なものがあるなら、確かに王宮は安全なのかもしれない。

しかし、俺はそれで安心は出来なかった。


「それが絶対だってどうして言えるんだよ!」


結界の安全性自体は、誰が保証してくれるのだろうか。

そう思った俺は、何も考えずに口走っていた。


「昔召喚された勇者の固有魔法によるものだ」


「だから……!」


「固有魔法、固有スキルの絶対性は、お前達勇者が一番分かっているはずだ」


「……」


俺は言われたことに何も言い返せなくなった。

確かにそれは俺たちが一番分かっていることだし、そもそもそんな能力があるから、魔族に対抗できると思われているからこそ勇者が召喚されるのだから。


「……すみません、取り乱しました」


そんな簡単なことまで言われるまで気づかないとは、俺は相当頭に血が上っていたらしい。

そう思った俺は、血が上ったのとは別の意味で赤くなりながら軽く頭を下げた。


「よい。こうなってしまうまで何もできなかったこちらが悪いのだ」


手のひらを前に出しながら言う王様は、これ以上謝る方が困るとでも言いたげな顔をしていた。

それを見て頭を上げた俺は、今更になって聞きそびれていたことに思い至った。


「……そもそも魔族って迷宮から出られるんですか?」


今更過ぎるその質問に、王様は一瞬呆然としてから吹き出したのだった。



キリが悪いですが、このままだと三千字超えそうだったんでこれで終わらせました。


あと、今月中にこの章が終わりそうに無いです。感想では今月おかしいところは修正すると書きましたが、それが出来そうにありません。

申し訳ないですが、来月以降になってから修正することになりそうですので、それまでお待ち下さい。

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