第二十話
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西原先輩は最初から俺が気に入らなかったらしいが、それでも怪我させようとか、ましてや殺してしまおうなんては考えていなかった。からかってやるくらいで気が晴れるだろうと、そう思っていたらしい。
そんな先輩がどうしておかしくなったのか。
事の発端は、西原先輩があるものを手にしたことだった。
「あるもの?」
「俺の持っていた武器だ」
「あ、あの妖刀みたいな?」
「そうだ。まああれは刀じゃなくて剣だから、その言い方であってるのかはわからねえけどな」
先輩の持っていた剣。
それは妖刀と呼ぶに相応しい、禍々しい剣だった。
「って、もしかして」
「たぶんお前が今思った通りだ。あれのせいで、俺はおかしくなった」
妖刀や魔剣と言われて思い浮かぶもの。
強力であることや、武器が意思を持っていたりすることなど、様々な特徴がある。
その中でも、俺が最も厄介だと思う特徴。
「精神汚染の類いですか……」
「厳密に言うと思考誘導みてえなもんだった。ついでに催眠も少し」
「うわめんどくせえ……」
つまり先輩は、その剣のせいで人格を変えられたに近い。
思考誘導というからには多少元から考えてはいたんだろうが、それでも「殺したい」と「殺す」では全然違う。
あまりにも悪辣な武器に、俺は気分が悪くなってきた。
「大丈夫か?」
「はい。……にしても、俺のこと心配する先輩ってもの凄い違和感ありますね」
「ぐっ。普段ならこれくらいは言うってーの!」
そう言って顔を赤くする西原先輩。
先輩には悪いが、こうして時たまふざけていないとやってられない。
今までさんざ俺たちに迷惑をかけてきたのだし、これくらいの扱いは甘んじて受けてもらおう。
「……で、お前がムカつくって思ったところから、最終的にはお前を殺してしまうってところまで考えが極端になったわけだ」
「なるほど。まああの時の先輩はどうみても狂人でしたしね」
「うるせ」
「それにしても、やけに強かった気がするんですが、それはどうしてです?」
「あれはそういう能力があったんだよ。使用者のステータス1.5倍みたいな」
「強っ!」
レアな武器にはそういった能力が付いていることが多いが、それにしても1.5倍は破格すぎる。
異常と言ってもいい性能に、俺は唖然としてしまった。
「たぶんあれは思考誘導で使用者が狂うようになる能力もついてて、その度合いでステータスが上昇するようになってたんだろうな。そうでもねえとあそこまでの武器にはならねえ」
「そうかもしれないですね」
狂わせることが前提。しかも狂えば狂うほど強くなるとは、この武器を作ったやつは何を考えていたのだろう。
先輩だったからその程度で済んだが、もっと追い込まれていた人間がもったら洒落にならないことになる。下手したら魔王を越えるかもしれない。
それは世界を滅ぼす危険すらあることを示していて。
今となっては分からないが、破滅願望でもあったのかもしれない、何て思ってしまった。
「ところで」
「あん?」
「何で先輩は元に戻ってるんです?」
武器の思考誘導が効かないほどステータスが高くなったなら分かるが、そこまで上がっているとも思えないし、上がっていてもごくわずかしか上がらないくらいにしか魔物とは戦っていないはずだ。
「……お前、気づいてないのか?」
「何にです?」
そう聞くと、呆れたような顔になる先輩。
そんなバカを見るような目で見られても、何のことだか分からないんだが。
「……俺はどうやって魔物を倒したと思う?」
「そりゃもちろん剣で」
「あの剣は今持ってねえぞ」
「えっ?」
目が点になる。
さっき一度鍔迫り合いをしたような気がするのだが。
「ほれ」
「うわっと」
答えるのが面倒になったのか、先輩は剣を投げてよこしてきた。
それを慌てて受けとる。
「うわ、マジで別物じゃん」
改めて見ると、それが普通の剣だということはすぐに分かった。
勘違いしていた自分が恥ずかしくなる。
「妖刀はどこにあるんですか?」
それを隠すように、早口で俺は問いかけた。
少し声が裏返ったが、先輩は何も言ってこないので気がつかないふりをする。
「何でお前が覚えてねえんだよ」
「えっ?」
「この迷宮に来てからお前が俺の腕をぶった斬っただろ?その時に手放してたんだよ」
「言われてみれば……」
そんな気もする。
自分の記憶力のなさにビックリだ。
「……それで、そもそもこれは誰に渡されたんです?」
恥ずかしくなってきたたので話を変える。
先輩が狂うようにし向けたのが誰なのか。それは俺を殺そうとしたのが誰なのかを聞くに等しい。
俺は緊張しながら、先輩の答えを待った。
「俺も、絶対とは言えねえんだ。あれのせいで所々記憶が混濁してるし」
「それでもいいです。教えて下さい」
しばし逡巡した後、重苦しそうに先輩は口を開いた。
「……王太子、だ」
「は?」
……冗談だろ?
そう思ったが、残念ながら冗談でも何でもなかった。
表情を固くした先輩が続ける。
「王位継承権第一位、ユーフォル・ミレディアル。それが俺に剣を渡した人間の名前だ」
それは、最初から俺に敵愾心を持っていた人物の名前で。
王国に致命的な事態が起こっているという証だった。
納得のいかない部分があるので書き直すかもしれません。
次の話は明後日になるかも。




