第四話
後半四季視点になります。
(ふぅ……疲れた……)
あの後、一先ず今日は休むことに決まった俺たちは、それぞれの部屋に案内され今はベッドに横たわっていた。
(それにしても、今日は色々あったなぁ…)
財布を忘れて教室に戻ったら四季に絡まれて。
かと思ったら、光に包まれて異世界転移して。
怪しいやつらに囲まれたと思ったら、俺たちは勇者で。
勇者かと思ったら、俺は勇者(笑)で。
(……いや、むしろ勇者(偽)と言うべきか?)
なんて自嘲気味に考えていると、誰かが歩いてくる音が聞こえてきたので、体を起こしてベッドに腰掛けた。
コンコン
「(ん…?誰だ…?)…はい」
「あ、ゆーくん?少しいいかな?」
「ああ四季だったのか、開いてるから入ってきていいぞ」
「じゃあ、入るね?…お邪魔します」
そう言って部屋に入ってきた四季は、少し部屋を見回すと、意を決したように俺の隣に座った。
「……っておい、顔赤いけど大丈夫か?」
「ふぇ!?だ、大丈夫だよ、心配しないで…」
「…?ならいいんだが…」
とりあえず、四季が落ち着くまで待つことにしよう。
召喚されて最低限の説明を受けた後、私たちはそれぞれ宛がわれた部屋に案内された。
(異世界、かぁ……)
四季は勇真の影響からか、そこまでディープではないとはいえオタク趣味である。そのため、勇真を除いた勇者達に比べれば、召喚という異常事態に順応するのはかなり早かった。
それによくある勇者らしく、チート能力に魔法まで使えると聞いて、喜ばないはずがなかった。
しかし、そんな中で一つだけ問題が生じる。
そう、王女である。
召喚された勇者の面々で最も早く落ち着きを取り戻した勇真は、初対面だというのに何故だか王女に懐かれていた。
(いや、あれはもう懐かれてたどころか、完全に落ちてたよね……。一目惚れされたってことかな……。ああもう、なんでゆーくんは私をこんなに……)
心配させるのか。
……何て殊勝なことは四季は考えていなかった。ただ単純に嫉妬をしていただけであって、そもそも一目惚れをされただけで特に口説こうとしたわけでもない勇真に文句を言われるような筋合いはない。
(うぅ〜、モヤモヤする…。……そうだ!今からゆーくんに会いに行けばいいんだ!)
有言実行、すぐに勇真の部屋に向かう四季であった。
勇真の泊まっている部屋をメイドに聞いた四季は、そこまで距離が離れていないらしいこともあり、考え事をしながら歩いていた。
(うーん、何て言って会えばいいのかな……。あ、そうだ。ゆーくんのステータス見せてもらってないんだし、お互いに見せ合おう、って言えばいい っか)
と考えている間に、いつの間にか勇真の部屋に着いてしまったので、とりあえずノックをすることにする。
コンコン
「はい」
「あ、ゆーくん?少しいいかな?」
「ああ四季だったのか、開いてるから入ってきていいぞ」
「じゃあ、入るね?…お邪魔します」
(あ、あれ?イスとかないの?ってことは……ふえぇぇ!?ゆーくんの隣に座るしかないの?……う、うん。落ち着け私。どうせゆーくんは何も思ってないんだろうし……。大丈夫、だよね?)
ポスン。
「……っておい、顔赤いけど大丈夫か?」
「ふぇ!?だ、大丈夫だよ、心配しないで…」
「…?ならいいんだが…」
(あわ、あわわわわわ!ゆーくんがすごい近いよぅ!?なんだかいい匂いもするし…!は、恥ずかしいし、落ち着かないよぉ……!)