第八話
10万pv突破しました。ありがとうございます。
テンション上がったので投稿しました。
さて、黙らせるのはいいとしてどうやって黙らせようか。
いかに弱体化しているとはいえ勇者は勇者、そう簡単にはやられてくれないだろうし。
せめて北川先輩が手伝ってくれたら楽なんだけど、
「私は手は出さないわよ。一人で何とかしてね」
ですよねー。
「そう言うと思ってました、っと!」
俺の真似なのか、西原先輩が投げつけてきた鞘を避ける。
「会話の邪魔するなよ」
「俺と戦ってるっつーのに話してる方が悪いんだろうが!」
「あ、確かに」
そういえば戦ってる途中だったっけ。どうやって黙らせるかしか考えてなかったわ。
「……つくづくムカつくやつだなぁ、てめえは!」
俺の態度が癇に障ったのか、何も考えずに突っ込んでくる先輩。
……この速度だけ見てもあの時とは比べものにならないくらい遅いな。
うーん、黙らせろって言われたけど、別にすぐ黙らせろとは言われてないわけだし、ちょっと色々と見て調べてから黙らせることにしようか。
……別に何も思い浮かばないから先送りにしたわけではないんだよ?いや本当に。
まあ、というわけで。
「あれ?その程度なのか?まだ一回も俺に当たってないけど?もしかして、全力なの!?嘘だよね!ほら、もっと頑張って!先輩ならやれるって、ほらほら!」
ーーーまずは挑発してみましょうか。
ニヤニヤしながら煽ってみると、やはり簡単に釣れたみたいで、すぐに顔を赤くして、さっきまでより断然早い速度で剣を振ってきた。
「楠ぃぃぃ!!!!」
「いいよいいよ、その調子!ほら、もう少しで当たる!」
「クソがァ!」
わざと紙一重で避けながら言うと、更にスピードを上げながら狂ったように剣を振るってくる。
煽られると速度が上がるってことは、やっぱり感情と強さが連動してるってことかな。
ついでに目も少しずつ紅くなっていってる。目の色で強さがある程度判断できるってこともほぼ間違いなさそうだ。
「てめえ、舐めるのもいい加減にしやがれ!【ボルケーノ・キャノン】!」
考えながら相手をしているということに気がついたのか、更に怒りのボルテージを上げた先輩は一度距離を取ったあと、火魔法の中でも上位に入る威力を持つ魔法を使ってきた。
(これは【グラビティ・ウォール】じゃ防げないかな)
いかに固有魔法とはいえ、その中でも下位の魔法だ。いくらなんでも、上位の魔法を防ぐことはできない。
一瞬でそう判断した俺は、せっかくなので同じく上位の魔法を使うことにした。
「【ダークネス・クウェイウォール】」
俺が魔法の名前を呟くと、俺の前に黒い靄のような物が集まり、壁を作り出した。
そして、ほぼ同時に着弾。辺りに土煙が舞い散り、俺の姿を覆い隠した。
「はっ!何の魔法だか知らないが、俺の魔法はその程度じゃ防げ……なっ!?」
勝ち誇ったように言う先輩だったが、途中で言葉が止まった。
そう、晴れた煙の中から、無傷の俺が出てきたからだ。
「その程度……何だって?」
性格が悪いとはわかっているが、どうしても笑みがこぼれてしまう。
「どや顔で嬉しそうに言ってたけど、残念だったな!その程度の魔法じゃ、この魔法は破れねえよ!」
「何でだ!魔法は、同じ位なら攻撃側が勝つはずだろ!」
確かに、属性の相性を除けば、注いだ魔力量が同じであるならそれが普通だ。
だが、何事にも例外はある。
「あのさ、光魔法使えるんだったら考えなくてもわかるだろ?」
光魔法は俗に上位属性と呼ばれる魔法だ。文字通り、他の属性魔法よりも上位に位置する魔法で、同じ位の魔法を使ってもほぼ確実に上回る。
もちろん、固有魔法やスキルを使うなどすれば話は別だが。
「なっ!まさか!」
「分かったみたいだな」
俺が使った魔法は、偽勇者であると言われた原因の魔法、闇魔法。
これは光魔法の対となる魔法。
つまり、
「闇魔法も上位魔法なんだよ」
「くっ……」
唇を噛む西原先輩を見て、俺はほぼ確信する。
「俺の勝ち、かな」
西原先輩は、肉弾戦では敵わないと感じたから魔法戦に持ち込んだのだ。
魔法は俺には通じず、しかも元々先輩は魔法よりも物理よりのステータスだ。MPの量においても、ほぼ間違いなく俺の方が上だろう。
だから、俺の勝ち。
後は消耗戦にしかならない。
そう判断した俺は、油断していたのだろう。
「まだ、負けてねえ!俺は必ず、てめえを殺すんだ!」
「……はあ」
呆れる俺。
やっぱり先輩はバカだったのか?なんて事を考える。
しかし、それは間違っていた。
「……【倍加】!」
「なっ……!?」
固有スキル、いや固有魔法だったのかもしれない。
とにかく、勇者は全員持っているそれの存在を、俺は忘れていた。ついさっき、固有魔法の事を考えていたというのに。
……自分もまだ固有スキルは使っていないから、という考えがどこかにあったのかもしれない。
「死、ねっ!」
「うぐぅっ……!」
咄嗟に一歩下がった事で、どうにか死ぬことだけは免れた。
けれど。
「ぐ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
油断した、そのせいで。
俺は、左腕を失った。
油断がデフォの主人公です。
そして散ったのはどちらかというと主人公、という。
まあ、一度痛い目見てもらわないと主人公は油断し続けることになっていたので、ここらで痛い目見てもらいました。




