第二話
今日二話目です。
「いいか、魔王様はな……」
「魔王様は……」
「魔王……」
「ま……」
移動中、余りにも暇だったので魔王について聞いてみたんだが、完全に失敗だった。
「魔王様は素晴らしい」「魔王様は偉大だ」みたいな、全く役に立たない情報しか集まらなかった。
そもそもこいつに聞いたのが間違いだった、っていうのもあるけど。
そんなこんなで、魔王様(笑)の武勇伝をテキトーに聞き流していると、ようやくそれっぽい扉が見えてきた。
「ーーーてことだ!いいな!」
「ん?あー、ああ」
注意事項か何かを教えてくれていたらしい。
やっべ、完全に聞いてなかった。
まあ、どうせ対した事じゃないだろう。
それにそもそも、俺は勇者なんだから魔王相手に何かしてやる必要はない。
「魔王様、失礼します!」
この辺のマナーとかは人間と変わらないんだな、何て考えながら扉が開くのを待つ俺。
横で跪いている魔族(仮)もいるが、わざと見て見ぬ振りをする。
(おい、貴様!)
小声で俺に注意してくるが扉が開く音で聞こえていない振り。
魔王相手に跪いてやるわけがないだろうに、本当にアホだなこいつ。
呆れ気味の俺をよそに、扉が完全に開ききる。
「よくぞきたな、人間」
そしてそれと共に、威厳たっぷりの声が届く。
「我こそこの迷宮を統べる魔王」
朗々と響くその声に、思わず玉座に目をやる。
そこに居たのはーーー
「六大魔王の一人、ルキフェルだ」
ーーー仁王立ちした、長靴を○いた猫だった。
「ブフゥッ!」
「何がおかしい!」
つい吹き出してしまう俺に、先ほどまでの威厳が完全に無くなった様子で突っ込んでくるルキフェル。
いや、だったらもう少し威厳のある見た目をしてくれよ。
せめて身長が50cmじゃなくて5mあれば少なくとも笑いはしなかったのに。
腹を抱えて笑い転げながらそんな事を考える。
プルプル震えている猫を見て、余計に腹が痛くなってくる。
「あははははははは!!!」
「笑うなぁ!」
もはや涙目になっている猫、もとい魔王様(笑)。
これほど本当の意味で(笑)が似合う魔王も中々いないだろう。
「だ、だって、猫って……!はははは!!」
ダメだ、収まらない。
流石魔王だ、今までの敵で初めて勝てる気がしないぜ……!
「これが、魔王の力か……ぷっ!」
「そんなわけあるかァ!」
「ははは、あははははは!」
それから数分間、俺は魔王の前で無防備にも笑続けていたのだった。
「で、ここはどこだ?」
「その前に言うことがあるだろう!」
「……ご馳走様?」
「何でだ!」
「面白かったから」
「我は何も面白く無いわ!」
「我(笑)」
「何だ、文句でもあるのか!」
「いや別に、興味も無い」
「なら言うんじゃなァァァァい!」
言い切って、ゼエゼエと荒い息を吐く魔王。
さて、いい加減魔王をおちょくるのも終わりにしようか。
真面目な話、そろそろ何がどうなってるのか教えてもらわないとな。
「で、ここは何処なのか、いい加減教えろ駄猫」
「駄猫ッ……!?貴様、それが人にものを聞く態度か!」
「お前は人じゃねーだろ」
「それもそうだな」
「いや納得するのかよ、まあいいけど」
とりあえず答えてくれるなら何でもいい。
「ここは傲慢の迷宮。その、最下層だ!」
「うわあ……」
それを聞いて、思わずくらっとしてしまった。
俺が潜っていた暴食の迷宮があるのは、ミレディアル王国。
地球で言うと、ユーラシア大陸のヨーロッパの辺りだ。
そして傲慢の迷宮はと言うと。
フォレア精霊国、地球で言う南アメリカ大陸にある国だ。
つまり、
「地球の裏側まで転移したようなものか……」
その事実に、俺は愕然とした。
あれだけ発展していた地球でさえ、世界の裏側まで行こうとしたらそれなりの時間がかかるのだ。
過去の勇者達のおかげで多少は発展しているとはいえ、魔法があることを差し引いても、俺があの国に戻るのには3ヶ月はかかるだろう。
「はぁ……」
溜め息を吐くと運とか幸せが逃げるとよく言われるが、そんな事どうでもよくなるくらいの出来事。
というより、こんな事態に陥っている時点で運はマイナスなんだから、これ以上運が逃げようが気にならないというのが正しいのだが。
「どうするか……」
早く四季達に会いたいが、そもそもどうやってあの国に行けばいいのかすら分からない。
八方塞がりに近い状況に、目の前が暗くなる。
そんな時だった。
「む?貴様、もしかして異世界から来たとかいう勇者か?」
一人で考え込む俺をジロジロ見ていた魔王が、何かに気づいたのか俺に問いかけてきた。
「……だったらなんだよ」
お前の相手はしてられない。
そんな思いを思い切り態度に出しながら、面倒そうに返す俺に。
「……日本人か?」
「……は?」
この魔王は、
「我も日本出身だ」
「はあ!?」
更なる爆弾をぶち込んで来るのだった。
……最初は百獣の王になる予定だったんですけどね。
友人が「猫の方が面白いんじゃ?」なんて言ったおかげでこうなってしまいました。




