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七人目は偽勇者?  作者: 木南
第二章
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第二十六話

少し遅くなりました。



第二層に入ってから二時間。

早くもボス部屋まで辿り着いた俺達は、ボス戦の前に休憩を取ることにした。


王城で作ってもらったお弁当を開けるみんなの前で、一人虚しくパンを囓る俺。

……うん、固い。やっぱり日本のパンとは比べるべくもないな。

水で流し込みながらパンを食べる俺を見て、四季達は目を剥いて驚いていた。そのまま固まってしまったみんなの中で、唯一すぐに気を取り直した四季が俺に話しかけてきた。


「な、何食べてるのゆーくん?」


何って、見れば分かるだろ?パンだよ、パン」


今更何を聞いているのだろうか?思わず首を傾げる俺に、少し顔を引きつらせる四季。


「お弁当渡されなかったの?」


「?ああ」


そんなもの渡されたことは一度もないぞ?

それを聞いた四季は、何故か怒ったように北川先輩に問いかけた。


「北川先輩、どういうことですか?何でゆーくんだけお弁当渡されてないんですか?」


「ごめんなさい。私も知らなかったわ。一度勇者同士で差をつけないように言ったから、それ以降は直っていたのだと思ってたの」


苦虫を噛み潰したような顔で北川先輩はそう言った。

そんな事言ってたのか、知らなかった。


「部屋といい服といい、果てはご飯までいつも差がついてたから、みんな納得済みだと思ってたんだが」


俺の一言に愕然とするみんな。やっぱり知らなかったんだな。


まずベッドの質。

勇者の部屋のベッドは、ほとんど地球と変わらないくらい柔らかいベッドに最高級の羽毛布団。

対して俺の部屋のベッドは、一見して分からないようになっているものの、寝るとほとんど床と変わらないような寝心地な上にすぐにくたる掛け布団。

備えつけのトイレも俺の部屋だけ和式だし、そもそも部屋自体の広さが一回り違う。


次いで服。

見た目は変わらないように見えるものの、触ってみれば分かるが全く違う。勇者達のを最高級シルクと例えるなら俺のはまるで使い古しの雑巾だ。

むしろよくもまあここまで見た目を似せられるなと感心したくらいだ。

流石に下着は他人のものを見たことがないから分からないが、恐らく同じような感じだろう。


あとはご飯か。

これは珍しく同じ物を出しているから、一番気づきにくいかもしれない。というかここで不味いものを出されたら、いかに俺とはいえブチ切れてただろう。

で、ならばどこで差をつけられていたのかというと。

まあ簡単だ、バレない程度に量を減らされていただけだ。

最初の頃は、そこまで均等にも出来ないんだろうと気にしてなかったけど、流石に何十日も続けられたら気づく。

おかげで微妙に脂肪が減ったみたいだ、嬉しくはないが。


そうして一通り話し終えてみんなを見ると、少し引いているみたいだった。俺に、なのかそれとも国に、なのかまでは分からないが。


「それが本当なら、ちょっと国王に抗議しないといけないわね……」


般若のオーラを纏った北川先輩が、ドスの効いた声でそう言った。

いやいや、抗議って何するつもりですか。実力行使するつもりにしか見えないんですが。


「まあ、今更なんで別に構わないですよ。ぶっちゃけ慣れましたし」


ひとまず北川先輩を止めようとする。

実際、慣れたってのも嘘じゃないしな。一ヶ月も続けてたらこれが普通になってくるし。

しかし北川先輩は怒りが収まらないようで、俺のことを睨んできた。


「そもそも楠君が私達にそれを言ってくれていれば……」


おいおい。


「いくらなんでも、それはお門違いってものでしょう」


正直、イラっとした。

俺はみんなが納得してると思ってたって言ったはずなのに、なぜ俺のせいにするのか。苛立ち紛れに、残ったパンのカケラを口に放り込む。


「気に入らないからって俺に当たるのはやめて下さい」


俺が珍しく少し怒っている事が伝わったのか、北川先輩が少したじろぐ。

一度視線を彷徨わせたあと、一呼吸入れて落ち着いてから口を開いた。


「……そうね。あなたは何も悪くなかったわね。気づけない私が悪かったのよね」


「それを言ったら私達みんなそうですよ、北川先輩だけが気に病むことじゃありません」


少し落ち込んでいる先輩に、四季がタイミング良くフォローを入れる。俺に対するフォローがない事が不満だが、今口を出すと余計ややこしくなるので黙っている事にする。


「とにかく、今は先に進みましょう?どちらにせよ、このことは帰ってからしかどうにもできないんですから」


「そうですよ、早く行きましょう!」


「西原先輩の事も気になりますしね」


四季の一言に同意する茜と二ノ宮さん。そういえば、二ノ宮さんの声聞くことってほとんど無いよなあ、なんて余計なことを言いそうになるも、四季に睨まれたのでどうにか堪える。


「そうね、今は先に進みましょうか。……帰ってから必ず落とし前はつけてもらうけど」


そう言って立ち上がる先輩。最後にボソッと付け加えた部分が怖すぎる。ヤクザも真っ青な恐ろしさだ。

が、どうやら俺以外は誰も聞こえていなかったようなので、俺も聞いてなかったことにする。


周りを見てみると、どうやら全員食べ終えたようなので、俺もパンのゴミをアイテムボックスに放り込んで立ち上がる。


「そういえば、西原先輩はどうなってるの?」


すると同じく立ち上がった四季が、弁当箱をしまいながら聞いてきた。


「そういえば忘れてたな。調べるか」


もう一度風の魔法を発動。ついでに補助で土の魔法も発動する。

どうやらまだボス部屋にいるようで、生物の反応を感知する。


(……ん?)


そこでふと違和感を覚える。

ボス部屋でまだ戦っているのなら、生物にせよ何にせよ、反応が二つあるはずだ。なのに、それが一つしかない。

なにやら嫌な予感がしたので、北川先輩に注意を促そうとするも、待ちきれなかったのか、北川先輩の指示の前に扉を開けようとする茜の姿が目に写った。


「ちょっと待て茜!何かおかしい!」


「ふぇ?」


だが、どうやら注意は間に合わなかったようだ。少しずつ扉が開いていく。


「クソっ、仕方ない。全員戦闘態勢!最大限に警戒しろ!」


この際指揮系統なんて気にしていられない。北川先輩が抗議したげな顔をするも、俺の切羽詰まった顔を見て何かを悟ったように口を噤んだ。


そして、扉が完全に開ききると。


その中には、一面に染まった紅と、中心にある肉塊、ーーーそしてそれに腰掛けた西原先輩の姿が視界に入った。



次は久しぶりの戦闘シーンです。

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