第二十二話
そういえば、ブクマが100件いってたみたいです。みなさんありがとうございます。
夕食後、俺は一人で部屋の中で眠気と戦っていた。
四季には俺の部屋で説明をすると言っておいたため、すぐに来るだろうと思っていたのだが、やはり女の子というものを侮っていたようだ、恐らく準備に時間を取られているのだろう、すでに夕食が終わってから三時間は立つというのに一向に姿を見せない。……まあ流石に三時間は準備だけにしては長すぎると思うが。
(ね、眠い……)
まだ日付けは変わっていないくらいの時間だ。普段であれば全然起きていられるのだが、ついこの間迷宮に行った時の疲労がまだ完全には抜けきっていなかったため、危うく睡魔に負けそうになる。
もうこのまま寝てもいいんじゃ?なんて考えだしたところで俺の部屋がノックされる。ようやく四季が来たみたいだ。
ベッドから離れるのにかなりの精神力が必要だったが、どうにか立ち上がってドアを開ける。
「四季、と茜も一緒だったのか、やけに遅かったけど何してたんだ?」
「うん、実は……」
やけに憔悴した四季に聞いてみると、どうやらこういうことらしい。
夕食が終わってから一時間ほどで支度を終えた四季は、俺の部屋に向かうところでまず茜に捕まったそうだ。
実は俺は茜ともステータスを見せあっている。もちろん四季もだ。そのため、茜はついてきても構わないと事前に言っておいた。
その事を踏まえて、説明するのが面倒だったこともあり、茜はそのまま連れて来ようとしたらしいのだが……。
そこで運悪く北川先輩に見つかったらしい。
他の人に見つかっても大して問題はないのだが、あの堅物みたいな人は夜遅くに男の部屋に行くと聞いて黙ってはいなかった。
俺としては、異世界に来たなんてイレギュラーな状況で誰かに手を出したりするなんてあり得ないのだが……。普段の茜の問題発言を聞いていた北川先輩は危機感を覚えたようで、自分も着いて行くと言って聞かなかった。
だが、四季達だけならまだしも、北川先輩にまで俺のスキルを教えてやるつもりはない。
その事を分かっていたのだろう、四季は北川先輩が着いてくるのを断固拒否した。
すると、そのまましばらく押し問答を続けていたところで、通りすがった西原先輩が話しかけて来たらしい。
他の男の部屋に北川先輩が行くと聞いた西原先輩は当然のように激怒。全力で止めようとするが、北川先輩からしてみれば西原先輩は関係無いのに邪魔をしてくる部外者だ。元々低かった好感度がそこでまた下がったらしく、虫ケラでも見るような目で今度は西原先輩と押し問答し始めたらしい。
そしてその隙を突いてその場から脱出、どうにか俺の部屋に辿り着いた、ということだった。
なんともまあ。反応に困るなあ。
夕食が終わってからここに来るまでの間にそんな事があったとは……。四季が憔悴してしまうのも仕方ないだろう。
何と言えばいいのか分からなかったので、とりあえず無言でお茶を用意する。
「ひとまずこれでも飲んで休め」
「あ、ありがと〜」
「ほら、茜も」
「ありがと、ゆー兄」
そうして渡したお茶を、二人とも一息で飲み干した。本当に疲れてたんだな……。
それから二度おかわりをした二人が落ち着く頃には、もう日付けが変わろうとしていた。
「それじゃあゆーくん、説明して」
「はいはい。それじゃあまずはスキルの説明……の前に、何があってこんな説明なんかをしようとしてるのか、を茜に教えてやろうか。どうやら四季は何も教えずに連れてきたみたいだしな」
「あ、あはは……」
笑っても誤魔化せないぞ。茜も呆れてるし。
そんな四季を尻目に、今日の朝あったことを茜に説明する。
「……ってことがあったんだ」
「ナルホド。それでスキルの説明なんだね!」
「そういうことだ」
やっぱり茜は説明が楽でいいな。四季とは大違いだ。
そんな事を考え、四季を少し冷めた目で見る。
「……なんだかいきなりゆーくんバカにされてる気がする!」
「気のせいだ」
俺は普段からお前の事をバカにしてるから。いきなりではない。
「バカのことは置いといて。いい加減スキルの説明するぞ」
「今バカって言ったよね!?」
「「四季(しー姉)、うるさい」」
「二人して酷いよ!?」
「あーもう後で愚痴は聞いてやるから、今は黙れ。話が進まないから」
そう言って撫でてやると、ひとまず静かになった。ふう、本当に四季は単純だな。
少し心配になるも、茜が待ちくたびれているので説明に集中する。
「二人にはもう見せたと思うけど、俺の【万能】ってスキルがあるだろ?あれのせいで、アホみたいにスキルの数が増えたんだ」
ちなみに、スキルの数が俺が異常に多いが、スキルレベルに関しては勇者達にそこまで違いはない。
【万能】のスキルはあくまで取得に関わるものであり、成長に関わるものではないからだ。
それでも、騎士団長なんかと比べれば分かる通り、俺たちのスキルレベルの上昇速度は圧倒的に速い。
勿論理由はある。
それは、俺たちの共通した称号……【勇者】が関わっている。
この称号には、スキルの成長速度のみならず、レベルの上昇速度もかなり早まるという効果があり、そのため俺たち勇者は僅か一ヶ月という短い期間でここまで強くなったのだった。
これぞまさにチート。
鑑定をした時は思わず苦笑いしてしまったくらいだ。
そんな事を考えながらスキルの説明をし、終わった時にはもう日付けは変わっていたのだった。
【転化】についてはまだ詳しいことは説明しません。
こういう切り札的なのはここぞという時に説明したい、という作者のどうでもいい願望です。