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七人目は偽勇者?  作者: 木南
第二章
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第十八話



有角種を葬った俺は、豚もどきの殲滅に戻ろうと後ろを振り返った。


「あと五体……思った以上に倒せてないみたいだな」


まあ、俺の独断専行のせいだと言われればそれまでなんだが。

にしても、西原先輩は何をしているんだ?

まだ死体残ってるやつは全部矢で殺されてるっぽいし、あいつ下手したら一体も倒せてないんじゃ……。


どうやらその考えは正しかったようで、豚もどきの攻撃を捌くことしか、西原先輩は出来ていないようだった。


「あれってもはやただの肉壁じゃん……」


予想以上の西原先輩の役立たずっぷりに辟易としながらも、いつまでも見ているわけにはいかないので参戦する。


「北川先輩、有角種は潰したんでまたこっち参戦します!」


「分かったわ!でも、後で覚えておきなさい!」


あ、そういや北川先輩が何か言ってたの無視したんだっけか。

うーん、まあお説教くらいなら甘んじて受けるとしよう。


そう考えながらも、突進してきた豚もどき(こいつ突進しか出来ないのか?)を一太刀で葬る。

いやはや、豆腐かってくらい柔らかいな。

でも、西原先輩は何でこんな程度の魔物も倒せないんだ?

いくらなんでもこれで苦戦する実力ではなかったと思うが……。

と、北川先輩が二体倒したみたいだ。あとは樹と四季の分だな。


「それじゃあ南条さん、東くん!一体ずつ残したから、試しに戦ってみて!」


そう言われて、震えながら前に出る樹。

あちゃー、俺たちの戦闘を見て余計に萎縮しちゃった感じか。

それにたぶん西原先輩が役立たずすぎたってこともあるんだろう。あれでも普段は偉そうにしてるし、実際樹よりは強かったからな。

それなのに豚もどきを全く倒せて無かったから、自分じゃ勝てないんじゃないかって思ってるんだろうな。

仕方ない、一肌脱いでやりますか。


「なあ樹」


「な、なんだよ」


声も震えてるよこいつ。これは重症だなあ。


「なんでそんなビビってるんだ?」


「び、ビビってなんかねえよ!」


「いや思いっきり声震えてるんだが」


「これは武者震いだ!」


うーん、漫画とかでよく見かけるな、この台詞。

まあそんなことは置いといて。


「まあ、何でもいいけどさ」


「何でもいいのかよ。じゃあ言うなよ」


「西原先輩が碌に戦えてなかったのは、単純に一対多の戦闘だったから、ってのもあると思うぞ。いくら北川先輩が弓で援護してたとはいえ、ほとんどそれで豚もどきを倒していたとは言え、なんだかんだ、北川先輩はお前らのことを気にかけつつ戦ってたわけだしな。それに俺も途中で有角種潰しに行かなきゃいけなかったし」


まあそこを差っ引いても西原先輩は役立たずだと思うが。


「何が言いたいんだよ」


「だからさ。俺より強いお前があんな豚ごときに負けるはずないだろ?」


ニヤリと笑って、そう言ってやった。

本当にこいつが俺より強いのかは分からないが、少なくともあんな豚もどきに無様を晒すほど弱くはないことは分かってる。


「……ありがとよ」


「ん、何がだ?俺はただ激励してやっただけだぞ?」


そう言うと、苦笑いを浮かべる樹。


「なんだ、あの時の意趣返しか?」


「そんなつまらんことするかよ。というか早く倒せ。俺は疲れて眠いんだ」


「いや急に酷くないか!?やるけども!」


「ならあと十秒以内に倒せなかったら罰ゲームな。……じゅーう、きゅーう」


「わー待て待て!流石にそれは無理ある!」


「ならさっさと行ってこい!」


「分かったから、罰ゲームはやめろ!」


走りながらそう言う樹に、思わず笑ってしまうのだった。


「ねえ、ゆーくん」


「ん?って四季か。お前も早く倒してこいよ」


「さっきの独断専行には私も怒ってるからね?ついでに茜ちゃんも。だからあとでお仕置きね」


「待ってくれ。お前らのお仕置きは洒落にならん。というかあれは必要な事だったんだ」


慌てながらそう弁明する。

いやだってこいつらのお仕置き怖いんだもん……。


「まあ、冗談なんだけどね」


「その冗談はマジで怖いからやめてくれ……」


寿命縮まるから。


「まあ怒ってるのは本当なんだけど」


「ちょっ!謝るから、勘弁して下さい!」


「仕方ない、許してあげる」


あれ?

拍子抜けするくらい簡単に許してくれたな。まあ、ありがたいんだが。


「……けどその代わり。最後に使ってた必殺技みたいなやつ!あれ私にも教えてね!」


あー。

四季の考えが読めた。

こいつは最初からそれ目当てだったわけか。


「教えるのは構わないけど、あれお前には使えないぞ?」


「え!何で?」


「だってあれ固有魔法使ってるしな」


「えぇ〜。どうにかして使えるようにしてよ〜」


「いや無茶ぶりすぎるわ。というか、早く倒してこいよ、北川先輩が疲れてるぞ」


俺たちが駄弁っている間、一人でずっと牽制してたんだからなあの人。後で精一杯労おう。


「む〜、分かったよ」


不満気に豚もどきの元へ歩いて行く四季。

よし、それじゃあ戦わせるか。


「北川先輩、二人とも準備出来ました!」


そう言うと、牽制するのをやめてこちらに歩いて来た。


「……楠くん。後で正座ね」


「何で!?」


そんなコントみたいなやり取りをしていると、豚もどきが四季と樹、それぞれに向かって突進した。


因みに四季はハンマー、樹は剣を二本使っている。

四季よ、本当にハンマーにしたんだな……。

脳筋っぽさが格段に増したぞ。


そんな考えが読まれたのか、こちらを睨んでくる四季。

思わず首を横に振ってしまう。

四季も戦っている最中だということを思い出したのか、不承不承ながらも豚もどきに向き直った。


「……悪いけど、今は虫の居所が悪いんだ。少し八つ当たりさせてもらうから!」


そう言ってハンマーを振りかぶった四季は、突進して来る豚もどきに向かってタイミングよくそれを振り下ろした。


グチャッ、と。


まるでトマトが潰れるような音を立てて、豚もどきは一発でミンチになったのだった。


「えー!もう少し耐えてよ〜!全然ストレス発散できないじゃん!」


いやいや。

北川先輩と揃って首を振る。

何というか、色々台無しだなおい。

少し脱力しながらも今度は樹の方を見る。


だかそこには樹が一人でポツンと立っているだけだった。


「樹?」


「なんだ?」


「もしかして、もう倒した?」


「はぁ!?見てなかったのかよ!」


「あー、悪い。四季がトマトを潰すとこしか見てなかった」


どうやら見ていない間に終わっていたらしい。




……少し罪悪感を感じるが。それよりも、無事終わったことに安堵のため息をもらすのだった。

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