第十七話
終わらない第一層。次こそは……!
そういえば、西原先輩の迷言のせいで忘れてたけど、他の奴らには戦わせなくてもいいのか?
一年生二人はまだ怖がってるから仕方ないにしても、四季は結構戦えそうだし、樹も今はそこまでビビってないみたいだ。
一応北川先輩に言ってみるか。
「北川先輩、ちょっといいですか?」
「どうしたの楠くん?そろそろ戦おうかと思ってたんだけど……」
えーっとですね。樹と四季は、見た感じ怯えてたりしないんで、後々の事も考えて戦わせた方がいいんじゃないかと思うんですが……」
そう言うと、北川先輩は渋い顔になって反論して来た。
「確かに戦わせた方がいいかもしれないけど、それは今じゃなくてもいいでしょう?まずは私と楠くん……あと一応西原くんも、の三人で様子を見てもいいんじゃない?」
「時間があるならそうかもしれませんが。俺たちにはどれだけ時間が残っているのか分からないんですよ?だったら一刻も早く慣れさせた方がいいです」
王様達は最悪、この迷宮だけでも潰せればいいって思ってたみたいだけどな。そうすれば少なくともこの大陸は安全だって考えてたし。
でも、俺が文献漁った感じだと、そう上手くはいかない。
ここの迷宮を潰せたとしても、まあ間違いなく他の大陸の迷宮から魔物が襲ってくる。
それぞれの大陸にある迷宮同士が干渉してないのは、お互いに潰し合いをしないように、ってことでらしいからな。考えてみれば当然だ。
まあ、この世界の人も、定期的に魔王討伐なんかさせられて疲れてるんだろう、思考停止してしまう気持ちも分からなくはない。
まあとにかく、そういった事から、俺は全ての迷宮を潰さなきゃいけないと思ってるし、その分時間が圧倒的に足りないとも思ってる。できればそれぞれ仲間を作って、別々の迷宮を潰しに行ってもらいたいしな。だからこそ低階層にいる間に、なるべくみんなに戦えるようになってもらいたい。
「それに、第一層で戦わないでいきなり下の階層で戦わせるつもりですか?それこそ死ぬ確率上がりますよ」
まあ、これも本音だ。
早いうちに戦いを経験させとかないと、下に行って俺たちに守る余裕があるとは限らないわけだし。
「……分かったわ。言ってること、いちいちその通りね。私が先を見えてなかったみたい。ありがとう、楠くん」
良かった、分かってくれたか。
「ってことなんだが……大丈夫か、樹?」
「え、何で俺!?南条さんの方を心配しろよ!」
「え、だって……さっきの豚もどきが出た時、四季は結構普通にしてたけど、お前北川先輩に隠れてただろ?」
「ぐっ!それは言わないでくれ!」
「そんなビビりな樹くんを心配するのは仕方ないと思うが?」
思わずニヤニヤしてしまう。
ま、あの時北川先輩に隠れた罰、ってことで。決して面白いからからかってるわけじゃないぞ。
「楠くん、そろそろいいかしら?」
おっと遊びすぎたか。
まあこれで樹の緊張も多少はほぐれただろう。
「はい。とりあえず、四季と樹用に一匹ずつ残せばいいですかね?」
「そうね、いきなり全員で集団戦闘するのは難しいだろうし……。とりあえず私が弓でなるべく倒して、後は楠くんと西原くんが、二匹だけ残すように倒すって感じでいきましょうか」
「了解です」
大体俺と同じ考えだったみたいだし、それでいいか。
んー、まだ第一層だし、ひとまず今回は魔法無しの近接オンリーで戦うことにするかね。
そんなことを考え、俺と西原先輩を先頭に大部屋に入っていく。
その後ろから入ってきた北川先輩は、豚もどきを見つけると弓を構えた。
そして、豚もどきがこちらに気づいた瞬間。北川先輩が矢を放った。
三本同時に放たれた矢は、寸分の狂いなく豚もどきの目に命中し、そのまま貫通して壁まで突き刺さった。
流石生徒会長。でも途中で不自然に矢が動いてたところを見るとスキルでも使ってるのかもな。
魔石に変わった三匹の豚もどきを見ながらそんな事を考える。
すると有角種の豚もどきが雄叫びをあげた。そしてそれに合わせて七匹の豚もどきがこちらに襲いかかってきた。
んー、やっぱあいつが指揮とってる感じかね?
突進してきた豚もどきを一閃する。
「残り七匹、いや二匹残すから残りは五匹か。……北川先輩、俺あの有角種を先に潰してきます!」
そう宣言して豚もどきたちの中に突っ込んだ。
「ちょっ、待ちなさい!そんな勝手な……」
悪いけど無視させてもらおう。
第一層なのに連携してくるなんて考えてなかったし、このまま指揮させておくと万が一ってことがありえる。
独断専行と言われてでもあいつを潰しとかないとな。
すれ違いざまに豚もどきの足を斬りつけて行く。走りながら首を狙って斬るほど剣に精通してはいないが、この程度ならステータスに無理を言わせれば簡単に出来る。
そうしてようやく有角種の元に辿り着いた。走る勢いそのままに首を断ち斬りにいく。
が。
「なっ、避けた!?」
恐らくまぐれだとは思うが、渾身の一撃は避けられてしまった。
(ちっ、めんどくさい)
今は自分が抑えているため無いとは思うが、万が一豚もどきが連携して、茜達が攻撃されたら困るので、急いで倒してしまうことにする。
「早く豚もどきの殲滅しなきゃいけないんでな……悪いけど、さっさと死んでもらう」
そう言った俺は、剣の間合いの外で隙を伺っている有角種の豚もどきに向かって、上段に構えた、鞘に入れたままの剣を振り抜いた。
そして。
ドゴォン!
何かが爆発するような音に合わせて、有角種の豚もどきが居た場所はクレーターのように凹んでいたのだった。
最後、ようやく主人公がまともな戦闘を……すると思いきや、また瞬殺です。




