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七人目は偽勇者?  作者: 木南
第二章
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第十六話

一話で第一層が終わらなかった……。




暴食の迷宮第一層。

聞いていた通り、そこは石で出来ていて、某ドラゴンをどうこうするゲームを連想するような、いかにも迷宮といった場所だった。




入ってから大体十分くらい経った。今のところ何もでてこないけど……。

だが、そんな考えを読んだかのように曲がり角から豚っぽい何かが飛び出してきた。


「出たわ、魔物よ!一匹しかいないみたいだし、私が仕留めるから、みんなは後ろで……」


そう北川先輩が言っている間に、音を立てずに近づいた俺が豚っぽい魔物の首を断ち切った。

……思った以上に動きが鈍るな。やっぱり、誰にも守られていない状態での実戦は違うってことか。

煙を上げて魔石へと変わる魔物を見る。

迷宮の魔物は死ぬとその強さに応じて魔石へと変わる……らしい。相変わらず詳しいことは分かっていないそうなので、暇な時に調べることにして今は考えないでおく。


ふと周りを見てみると、俺の行動に驚いたのか、まんな固まっている。

うわ、四季と茜以外みんな北川先輩の後ろに隠れてる。樹ってあんなビビりだったっけか?西原先輩はむしろ予想通りだけど。

そんな事を考えていると、一番早く気を取り直した北川先輩が、少し怒ったように話しかけて来た。


「私が仕留めるって言ったでしょう?何で一人で無理して倒しに行ったの?」


「そりゃもちろん無理じゃないって分かってたからですよ。というか、あんな豚ごときに躓いてたら迷宮なんて攻略出来ないんですから、先輩がみんなを守ってちゃ意味ないでしょう?」


そう言うと、北川先輩は少し怯みつつも言い返して来た。


「そうは言っても、戦うのが苦手な人だっているんだから、私が守ってあげないと。確かにあなたは戦えるのかも知れないけど……」


うーん、めんどくさくなってきたな。みんなを守る決意が早くも鈍りそうだ。

さっき豚と戦おうとしてた北川先輩は、今度はかなり分かりやすく震えていた。だからこそ、万が一を危惧した俺がさっさと豚を殺したのだが……。


ああ、それが分かってるから認めたくなくて俺を叱ってる訳か。みんなを守るって言いながら、土壇場になって震えて動けなくなりそうだったわけだしな。

少し思う所があるが、ここでそれを追及してもし北川先輩が壊れたら、それこそみんな戦えなくなってしまう。

なのでとりあえずは大人しく説教を受けることにする。


「………分かった?」


「はい、すみませんでした。以後気をつけます……が、俺は前衛としても戦えるので、先輩よりも前に出ます。今戦えるところは見せましたし、今後何を言われても、前に出て戦うのを辞める気はありません」


心配されていることは分かるが、それだけは言っておいた。

北川先輩に全員が守られていたら、もし北川先輩が怪我でもして戦えなくなった時、誰も戦えなくなってしまう。

それだけは避けなければならない。

北川先輩もその事は分かっているのか、俺の一言にむしろ安心した様な表情になった。


「分かったわ。でも無理だけはしないでね」


「それはもちろん。死にたくありませんしね」


笑いながらそう言うと、西原先輩から睨まれた。

いや睨むくらいならお前が倒せば良かっただろうに。

北川先輩を守るとか言っといて真っ先に北川先輩の後ろに隠れるとか……男としてどうなんだ?

そう思い、つい睨み返してしまった。


「楠くん、どうしたの?魔物でもいたのかしら?」


どうやら俺が睨み返していたのが気になったようで、北川先輩が聞いて来た。


「いえ、なんでもないです。それより、早く進みましょう」


そう誤魔化して、逃げるように先に進んだ。


「あ、待ちなさい楠くん!みんな、早く追いかけるわよ!」




そうして一時間程先に進んだところで、大部屋を発見した。


「さっきの豚もどきが11匹……いや、10匹ですね。1匹だけ角が生えてるので、あれは有角種みたいです」


有角種。本来であれば角が生えていない種類の魔物に、ごく稀に角が生えている時があり、他の魔物とは一線を画する強さを誇る。基本的に群れのボスであることが多く、魔物の群れに有角種がいた時は、その魔物の適正ランクよりも一つ上のランクだと思って戦った方がいいと言われている。


「どうします?たぶん俺一人でも片付けられると思いますけど?」


まあ、有角種とは言っても所詮は第一層の魔物だ。今の俺たちの敵じゃない。この程度の群れなら一人で、片手でもどうにかできるレベルだ。


「いえ、私も今度は戦うわ」


そう言った先輩は、今度は震えていなかった。俺も戦うって言ったことが多少なりとも効いたのかもしれない。


「分かりました。じゃあ二人でやりましょう」


そう言った俺に、待ったをかける人物がいた。


「後輩のくせに勝手に決めてんじゃねえ!俺も戦うぞ!」


そう、西原先輩だ。


「はぁ、別に構いませんが……ちゃんと連携とかはして下さいね?」


「あぁ!?お前が合わせりゃいいだろうが!なんで俺がお前みたいな雑魚のために連携なんざしなきゃならない!」


ああ、めんどくせー。

思わず辟易としてしまう。

やっぱりこいつの手綱を握るのは俺には無理だ。ということで北川先輩に丸投げする。


「……とか言ってますけど、どうするんですか、北川先輩?」


「西原くんと楠くんそれぞれ別に戦えばいいわ」


決断はやっ。

というかそれ西原先輩、若しくは俺のことは切り捨てるってことか?

そう考えていることが分かったのか、少し焦ったように北川先輩が付け足した。


「い、いえ、二人は別々に戦ってもらって、私が後ろから二人を援護する、ってことよ!」


あーなるほど。


「それなら大丈夫そうですね」


あいつと連携なんて死んでもごめんだし。


「俺には援護なんざいらねえけどな!」


そんな事を言う西原先輩に、北川先輩は絶対零度の視線を向けた。


「……一度言ったと思うけど。貴方が好き勝手するのは自由よ。でも、それで私たちにも迷惑をかけるのはやめてくれない?いい加減、周りに合わせるって事を覚えてくれないかしら」


そう言われて思わずたじろぐ西原先輩。

こいつは学習しないのかね。

似たような事ばっかりやってるけど、いい加減にしないと俺もキレるぞ。


「……まあいいわ。行きましょう。楠くん、よろしく頼むわね」


そう言われてようやく我にかえる。


「あ、はい」


ま、あんなやつのことは放っておこう。それよりも、どうやって戦うか考えないとな。


23話目にして初めての戦闘!

……まあ一瞬で終わりましたが。

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