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七人目は偽勇者?  作者: 木南
第一章
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第一話

思った以上に話が進みませんでした……。次話ではもう少し進む予定です。

目が覚めると、周りには黒いローブに杖を持った、いかにもな格好をした人たちが、俺たちを囲うように立っていた。先ほどまで確かに教室にいたはずだが、机や椅子、黒板などは無く、それどころか窓や蛍光灯すら無かった。床はコンクリートでは無く、俺たちを囲うように立っていたローブの人達の内側ーーーつまり俺たちの足元ーーーには、白い何かで描かれた六芒星のようなものがうっすら光っていた。


(…ん?俺、たち…?)


そこで俺は、ようやく自分の周りに倒れている人たちに気づいた。そして自分の真横で倒れていた、つい先ほどまで自分と喋っていた幼馴染みの存在に気がついた。


「おい四季!四季!起きろって!」


「……ん、んぅ……。どうしたの、ゆーくん…?というか、なんで私眠って……。はっ、まさか!?ようやくゆーくんが私のことを!?苦節16年、ついにこの時が…!」


「いやなに言ってるのかよく分からんが、とりあえず落ち着け!そして周りを見てみろ!」


その俺の言葉でようやく我に返った四季は、辺りを見渡す。

それにつられて少し周りを見てみると、六芒星のようなものはすでに発光をやめていたため、四季以外の顔はうっすらとしか見えなくなっていた。


「…あれ?ここどこ?というか他にも人が倒れてる!?一体どういうことなのゆーくん!?」


「俺が聞きてえよ!お前に詰問されてたと思ったら、気がついた時にはこの状況だぞ!?一体なんなんだよ!」


そうして俺たちが不毛な言い争いをしていると、他に倒れていたやつらも次々と起き出した。

と、その中で最も俺たちに近いところにいる人間が起き上がらない。そこで近づいてみると、そいつが自分の見知ったやつであることに気がついた。


「っておい、樹じゃねえか!なんでこいつまでこんな所にいるんだよ!おい、起きろ樹!おい!」


そこに倒れていたのは、無二の親友である東 樹だった。もしかしたら自分たちと一緒にここに来たのか?と考えるも、確かにあの時自分は四季と二人きりであったことに気づき、すぐに否定する。

(こいつはどうしてここに……)

樹の体を揺さぶりつつそんなことを考えていると、ついに樹が目を覚ました。


「……あれ、勇真?一体どうしたんだ?というか、どこだここ?俺は確か部室にいたはずなんだが……?」


「よかった、やっと目を覚ましたか。ここがどこなのかは俺も分からん、さっきまで俺も四季も気を失ってたしな。俺たちはここに来る前教室にいたんだが、急に辺りが光で埋め尽くされたかと思ったら、こんなところで倒れていた。お前はどうだったんだ?」


「俺も同じだ、急に光ったかと思ったらここでお前に起こされた。てか待て、四季さんどころか、生徒会長までいるじゃねえか。全員同じ高校のやつみたいだが、これは一体何なんだ?何かのイベントか?」


その言葉を聞いて再び周りを見回してみると、確かに全員起きたようであることは分かったが、顔までは確認できなかった。


(こいつ視力?よかったんだな……知らなかったわ)


どうやらそれぞれ状況把握に務めているようだ。

そんな中、俺は樹の問いかけに答えずに一人で考えこみ始めた。


(この状況……どう考えても普通じゃない。もしかしたら誘拐にでも巻き込まれたのかと思ったが、ここに来る前、光に包まれてから気づいたらここにいた、という状況が樹とも一致しているというのは明らかに異常すぎる。そして、何よりこの足元にある白い六芒星もどき。まるで魔法陣みたいだ。これらの事を鑑みると導き出される答えは一つ。…俺らは異世界に転移したのか?いやまあオタクとしてこの状況に憧れないと言ったら嘘になるが…。一体何の為に?)


とそんな事を考えていると、しびれを切らした様に樹が話かけてきた。


「おい、聞いてるのか勇真?一体この状況は何なんだ?お前は何か知らないのか?」

「悪いが何も分からん。だが全員目覚めたということは恐らく…」


そろそろあの怪しいローブのやつらが何か言ってくるはずだ。と言おうとしたところで、魔法陣っぽい何かの外側に立つやつらの中で唯一ローブを着ていない、いかにも異世界の、それもまるで王女のような格好をした少女が話かけてきた。


「みなさん目が覚めたようですね。少し、私の話を聞いて頂けないでしょうか?」


そう言って俺たちを見回した少女は、金髪碧眼、身長は160そこそこのメリハリの取れた身体をしていて、まるでライトノベルのテンプレ王女様のような容姿をしていた。


(うわっ、メチャクチャ可愛い!方向性は違うが、四季と同じくらいに美少女だな……)


そんな事を考えていると、その王女様(っぽい美少女?)が予想通りの、ただし樹たちにとっては予想外の発言をした。


「ではまず自己紹介からしましょう。私はこの国、ミレディアル王国の第二王女で、フェシリア・ミレディアルと言います。勇者様方をこの世界に召喚した魔導士です」


(やっぱり俺たちは召喚されたのか!ってことはここは異世界で間違いなさそうだな。しかしこの流れ、勇者ってのをいいことに、面倒なことに巻き込まれそうな予感がするなぁ……)


勇真がそんな事を考える一方で、他の勇者達はただただ呆然としていた。

だが、こんな異常事態が起こったのだ。平然と受け止められている方がおかしい。

そんなことにも気づかない勇真は、周りの勇者達の反応を全く気にせず、王女に話しかけた。


「あーっと、王女様。いくつか聞きたいことがあるのですが?」


「リアで構いませんよ?」


「分かりました、リア様。」


「様もいりませんよ?」


「いやあんた王女様でしょうに。初対面の平民に何求めてるんですか?」


「この世界では、勇者様というのは王族と同等の権威があるのです。ですから、リア、でお願いしますね?それと、敬語もやめて下さいね」


この王女様は何でこんなに俺に対して友好的なんだ?

どこか不安ではあるが、そろそろ(我が親愛なる幼馴染様から)突き刺さる絶対零度の視線が恐ろしくなってきたので、話を進めるために仕方なく従うことにする。


「あー分かったよ、リア。これでいい?」


「ええ、百点です。花マル差し上げます」


そう言って微笑んだリアは、女神か、というくらい可愛らしかった。不覚にもドキッとしてしまった俺は、少しドギマギしながらも質問を続けることにした。


「え、えっと、まず自己紹介からするけど、俺は楠勇真。楠が家名で勇真が名前な。で、何で俺たちを召喚したんだ?あと、俺らに何をさせたいんだ?」


「分かりました、ではユウマ様と呼ばせていただきます。それで貴方方を召喚した理由ですが…。実は今この国、というより世界ですね。は、滅亡の危機に瀕しています。」


「何だ、魔王でも現れたか?」


ファンタジーもののテンプレの様な流れだったので、冗談半分で聞いてみた。


「な、なぜお分かりに!?」


「え、合ってたの!?」

「え、ええ…。なぜユウマ様が驚いているのですか?」


「あ、いや、ごめん。気にしないで、続けて。」


「は、はぁ……。それで、ですね。この世界には、五百年に一度、六体の魔王が現れるという伝承が残っているのですが、今年がその年にあたるのです。もうすでに二体の魔王が確認されたので、まず間違いなく伝承通りになると思われます。ですがこの魔王は、大変強大な力を持っていまして、並大抵の兵士や魔導士では相手にならないのです…。そこで、今までに六体の魔王が現れた時はどうしたのかを調べてみたところ、勇者召喚を行っていたということが分かりました。我々はその文献を準えるように、勇者召喚を行ったのです。…これが皆様を召喚した経緯です。勝手なことをして申し訳ないとは思いますが、どうか勇者様方、私達の世界をお救い下さい……!」


話しているうちに気持ちが昂ぶったのだろう、目は真っ赤に充血しており、今にも涙が零れ落ちそうだ。しかしそれよりも先に聞かなければならないことがあったので、ひとまず心を鬼にして質問を続けることにした。


「あーごめん、とりあえず先にあと一つ、いや二つか、聞かせてもらえるかな?」


「は、はい。何でしょうか?」


「まず、俺たちはどうやったら元の世界に帰れる?」


「魔王を全て倒すと帰れると文献にはありました」


それを聞いて、普通であれば誰かしらが「ふざけるな!」「早く元の世界にかえせ!」などと言っていただろう。

しかし、俺以外の勇者達は未だに状況に追いつけていないようで、頭から煙が出ている。


(……あれ?じゃあさっきの視線は何だったんだ?)


何となく腑に落ちないが、今は現状把握が最優先である。

使えない勇者達だな、と思わないでもないが、話が無闇に止められたりしないことには感謝しつつ、先ほどから気になっていたことを聞くことにした。


「ん、じゃあこれは何となく気になっただけなんだけどさ。なんで魔王は六体なのに俺たち勇者は七人いるんだ?」


この質問に対し、リアと黒ローブ達は


「「「「「え!?」」」」」


みんな度肝を抜かれたかのような反応をしていた。

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