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肥沃の土地へ

作者: サケオ

かの有名な偉人は何も持たない貧困時代にこんなことを言ったという。

「進めば我らの環境も変わる。環境は人を変える。」

少年はその言葉を信じて、スラムからこっそり抜け出した。周りを砂漠に囲まれた国から出て、宛てもなく進むことに恐れはあった。迷いも、苦しみもあった。もしかしたら仲間のグループが半殺しにあっているかもしれない。戻りたい気持ちもあったが、戻ったところで、彼らに何と言えばいいのか。

進めば見つかる道もある。彼らを助けられるかもしれない。

少年は意を決して歩を進めた。

見たことのない世界、肥沃の土地へ。


少年がしばらく歩くと、砂漠の真ん中に、オアシスがあるのが見えた。

オアシスなど空想の産物、そう笑っていた大人たちに見せてやりたい、と心から思った。

少年は思わず走り出した。

なんだ、そんなに遠くない土地に、こんな楽園があるなんて。

もう何日歩いたかもしれないのに、足はすり切れボロボロなのに、それでも少年はそう思った。

砂漠の道はぼこぼこしてるので、何度も何度も転びながら、目の前に見えるオアシスを目指す。

少年は希望を抱きながら走った。走って走って、転んで、また走った。

それから何時間走ったのだろう、少年はもう走れなくなっていた。

オアシスはすぐそこにあるのに、それでも少年はオアシスにはたどり着けなかった。


うっすらとした意識の中、ふと、友のことを思う。

母のこと、父のことを思う。


目を覚ますと、少年はオアシスの真ん中にいた。

ヤシの木の下で涼んでいたようだ。

今までの悪夢を振り払うかのように頭を幾度も振り、そうして思いっきり湖へと飛び込んだ。



村に残った友は、村の大地を一人で耕そうとした。

砂が肥沃の大地へと、そんな話があるものか。幾度も幾度も馬鹿にされ、それでも友は耕した。

数日、数年、数十年、気づけば村はオアシスに。

友は必死に耕して、必死に掘って掘り当てた。

徐々に湧き出た水の中、友の姿を見たという。

悪い夢を見ていたと、友の友は言ったけど、肥沃の土地へ目指す旅、行きつく先は元の村。


肥沃の土地はやはり近くにあったじゃないか。

少年だった友の友はにこりと笑ってつぶやいた。

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