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カゼキリ風来帖  作者: ソネダ
カゼキリ風来帖(8) ~ 山陰奈落の変 の章
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山陰奈落の変 の章(25) ~ 想像する過去と未来

 「そういやさ、ナオキはこの後、どうしようと考えているんだ?」

 ふと風切あやかがナオキへ問いかけた。

 ここはアイトスの火焔堂の宿泊の施設である。

 部屋の内装は綺麗に整っている。

 サキの話によれば、滅多に使われないらしい。

 地底世界も争いごとを忘れて永い時が経った。そのお陰で、火焔堂を使い、

 「地底世界について話し合うこと……」

 は殆どなくなってしまったのだ。

 これが大昔のことならば、毎日のように争乱の作戦会議やら喧嘩沙汰で、

 「この施設も死霊達でいっぱいだった」

 そうだ。

 さて……

 小さなランプに照らされながら、身体を丸めていたナオキが、すっと顔を上げた。

 「あー、そうだな」

 ナオキは宙を眺めてから、風切あやかへ視線をやった。

 「お前、ベッドは初めてだろ?どうだよ、寝心地は?」

 「ああ……中々だな……って、そうじゃない。お前はこれからどうするんだって聞いてるんだよ」

 「これからって?」

 「……分かってるんだろ?クァーシアとウェンシアを倒した後だよ。ここに戻るのかってことだよ」

 「そりゃ戻らねぇな」

 「なんでだよ?」

 それは思いもしない答えであった。いや、風切あやかとしては、

 「ナオキは戻るだろう……」

 と考えた上で敢えて聞いてみたものだったが、想定していない返事に、思わず風切あやかの目が丸くなった。

 「おっ、お前、驚いてるな?いっとくが、これは意地悪で言ってるんじゃねぇからナ」

 どうやら本気らしい。ナオキは更に続けて、

 「ま、アイツらを見ていたら、ここに居ても良い……とは思った、が……な」

 ナオキは小さく笑っていた。

 『アイツら』とは、あの作戦会議場に居た多くの火焔族のことだろう。

 多くの年月が過ぎ、一緒に過ごしていた種族としての『死霊』を捨てて、新しく『火焔族』となったのだ。

 かつてナオキの腹心であったサキもまた同様であった。

 「…………」

 ナオキはそこに寂しさを感じているのだろうか。

 風切あやかはまじまじとナオキを見つめていると、

 「地底には、もう俺の居場所はないんだよ。アイツらは気にしてねぇけど、俺には気になってしょうがないんだよ……言うなれば俺は過去の遺物ってヤツさ」

 「遺物ねぇ……」

 風切あやかが呟いた。

 遺物とはいえ、火焔族はナオキを受け入れているのである。

 反発することなく、憎悪の念を持つのでもなく、サキをはじめ、至って歓迎しているように風切あやかには見えていたのだ。

 それなのにナオキは自分を地底世界の過去の遺物と話し、この戦いの後は、

 「地底を去る……」

 つもりだそうだ。そればかりではない、

 「そうだ!地上で暮らすのもいいかもな。山城のヤツに頼んで、護山家に入れてもらおうか……!」

  などと言い出したのだった。

 「おいおい……」

 これには流石の風切あやかも苦笑を浮かべるばかりであった。

 その一方で、ナオキは本気のようで、目をキラキラと輝かせていたものである。

 もしもそうなればナオキは地上で護山家として活動をすることになるのだろうか……。

 風切あやかが思い浮かべてみるに、

 「……待てよ、お前、その姿のままで護山家に入るつもりなのか?」

 ナオキの姿は未だカラス(のような鳥)の姿のままなのだ。もしもナオキが護山家に入るとしても、

 「元の姿へ……」

 戻して貰えるとは限らない。

 いや、そのことはとても難しいことだといえよう。

 地下世界と違い、地上世界では今尚、奈落王は邪悪の権化と認識されているのである。

 そんな中へナオキを元の姿のまま迎え入れることは、

 「無理な話……」

 といえるだろう。

 しかし、ナオキはそんなことはお構いなしといったような調子で、

 「これでもお前なんかよりは十分強いぜ?」

 と笑ったものだった。

 「…………」

 風切あやかもこれには苦笑するばかりで返す言葉もなかった。

 満更、冗談ではない。

 元の姿の戦闘能力は勿論、カラスのような姿になっても、その威圧感や迫力、そして身のこなしには十分なものがあった。

 風切あやかはここへ来るまでの邪炎獣とナオキの戦いを見て、それをひしひしと感じ取っていたのだ。それを思えば、

 「……それも良いかもしれないな」

 小さく呟いたものだった。

 「だろぉ?」

 「そのためにも、クァーシアとウェンシア、それにバーンアウトをなんとかしなくちゃな……」

 「ああ、分かってるさ」

 そうして二人は眠りについたものだった。

 佐渡せきもまた風切あやかやナオキと同じ部屋で眠っていたものだったが、二人よりも先に眠りに落ちてしまい、この会話を聞くことはできなかった。

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