山陰奈落の変 の章(23) ~ 戦うべきは…
「それがあれだけの邪炎獣を作り出し、そして操っているんだから暗黒石の獲得を疑うべきなんだよ。それに……」
バーンアウトがクァーシアとウェンシアに乗っ取られてしまったのは、丁度、ナオキが地上に復活して間もない頃の話なのだ。
これらのことを考えると、やはり暗黒石はナオキの封印を解いた流 あさひの手からクァーシアとウェンシアの二人に渡ったと考えられる。
「ただな……」
ナオキは言葉を濁すと、
「あさひのヤツの目的が分からねぇ。恐らくは水霊としての自分の立場と能力をもとに、クァーシアとウェンシアを利用しようと考えたんだろうが……」
それにしてはやることが飛びぬけてしまっている。
もしもクァーシアとウェンシアの目的が達成されてしまったら、
「アイツの大好きなヒスイを立てることもできなくなるんだけどな……」
ということである。
流 あさひの目的は分からない。
しかし、まずは目の前の問題である。バーンアウトを奪還し、地上の崩壊を止めなければならないのだ。
さて……
それはともかく風切あやかである。
風切あやかがウェンシアと戦うべき根拠は三つほどあり、
「まず一つは、ウェンシアならタイマンで戦えることだ」
というのがある。クァーシアには護衛の上級邪炎獣が三体ついているが、その三体は、
「全て私が引き受けましょう」
サキが話している。
サキが全ての邪炎獣を引き受けてくれれば、ウェンシアと向かい合うだけで済む。
「もう一つは、お前が山の人間じゃないことだ」
「どういうことだよ。それは……」
「お前……いや、あやかは元々八霊山の人間じゃないんだろ?」
「……む、そうだけど、どうしてそれが分かるんだよ?」
「ま、簡単に言うと雰囲気だな。アイツらは『死霊』を捨てちまったけど、俺は未だに『死霊』のままだ、だから八霊山の人間を見ると、『コイツはやれるな……』って気持ちがするんだよ。あ、これは昔からな。実際、八霊山の人間、もとい護山家は『死霊』を相手にするのが苦手ときている」
そうした『死霊』としてのナオキの感覚からすれば、風切あやかは八霊山の人間ではないようだった。
「だから、あやかは地上の護山家達よりもウェンシアと十分に戦えるってことだ……そういや、さっきの寝てたやつも、本来ならかなりの使い手だろ?だが、あいつは八霊山の人間だ。ウェンシアと戦うにはかなりの不利があったワケだ」
「うーむ、そういうものなのか……」
いまいち実感のない話である。それもやはり風切あやか自体が、あの高山かなたよりも実力的に大分劣っているからだった。
……だが、山城 暁と同等以上の実力を持っているナオキが話すならば、
(間違いではない……)
のかもしれない。
ともかく、色々とそれについて考えていた風切あやかにとって、ナオキの話す三つ目の根拠は、そのことを半ば確信的にするものだった。それは、
「三つ目、それは俺がお前についていてやる!ということだ」
「……なんだって!?」
「俺がお前と一緒に居てやるっていってんだ。勿論、お前が死ぬと俺もヤツらにやられることになるな」
「…………」
風切あやかは閉口した。
先ほどもナオキは自分が突入メンバーと一心同体であるということを話してはいた。しかし、それがまさか自分と一緒であるなどということは、
「全く考えてはいなかった……」
のであった。
「一つ話しておくと、クァーシアの能力でウェンシアは正確な攻撃と行動ができるんだよ」
「それはどういうことだ?」
「クァーシアは俗に言う千里眼を持っていて、自分が生み出した邪炎獣が見ているものと、ウェンシアの周囲を離れたところからでも見ることができるんだよ」
「邪炎獣は分かるけど、なんでウェンシアの周囲を見ることができるんだよ?」
「それは分からないなー。ともかくウェンシアの周囲を見て、逐一テレパシーでウェンシアに知らせるんだ。相手の位置や攻撃、反撃のタイミング、精度100%でやってくる」
「厄介だな……」
風切あやかで言えば、自分の剣術の動きを読んで、的確に攻撃、反撃をしてくる剣術や武術を用いる相手とは何度か手合わせをしたことがあるものだった。だが、それは相手自身による経験と実力から来るものであり、いくら実力を持っていても全てを見切ることは難しい。
その点で言えば、ウェンシアの戦い方は特異であろう。
何しろ相手の行動を見るのが自分ではなく他者なのだ。他者から送られてくる言葉通りに動けば、
「まず間違いなく……」
立ち回れるというのだから恐ろしい。
風切あやかでも、そうした特殊な能力の持ち主と戦ったことは、
「一度もない」
のである。
だから正直、その話を聞いただけで、
(そんなヤツを相手に私が戦うことができるのだろうか……)
表情を曇らせてしまったのだった。
「おいおい、あやか、なーんか忘れてないか?」
そんな風切あやかの表情を見て、ナオキが笑いながら、声をかけてきた。
「俺がお前と一緒にいてやるって言ったろ?ウェンシアにクァーシアがいるなら、お前には俺がいる、それで同等以上だぜ」
「……でも、お前、そんな姿じゃないか」
「バッカ言うなよ!?クァーシアとウェンシアなんて元の俺からすればザコ極まりないんだぜ?俺がお前に戦わせて丁度いいハンデってトコロだよ。分かったか?」
「分からないよ」
「だろうな」
そうしたところでバーンアウト攻略会議はお開きとなった。
作戦はバーンアウト周辺の邪炎獣を火焔族で引き付けている間に、裏手のマグマ地帯から少人数でバーンアウトへ侵入、クァーシアとウェンシアを倒し、バーンアウトを止める……というもので決まった。




