山陰奈落の変 の章(2) ~ 雪かき
そういった蒼水れいと謎の人物の出会いがあったのと同時刻のことである、
風切あやかは佐渡せきの小屋まわりで雪かきを行っていたものだった。
あの次代山神さまの山城 暁と大昔の悪魔 奈落王との戦いにより生じた衝撃波……もとい地震というべきだろうか。
八霊山の大部分を大きく揺るがしたその戦いは、護山家の役場の一部だけでなく、風切あやかの小屋までも崩壊させてしまったのだった。
そういう出来事もあり、風切あやかは住処を失ってしまったのだった。
「……むむぅ、これからどうしたらいいんだ……」
これには流石の風切あやかも途方に暮れてしまったものだったが、そうなった以上は、
「うーん、そうですね。しばらくはせきの小屋を借りるしかないですね」
という上司の高山はるかの提案により、その時から佐渡せきと寝食を共にしているという訳なのだ。
風切あやかの傍で佐渡せきも一緒になって雪かきを行っている。
「あやかさん、少し休みませんか……腰がもう、痛くて痛くて……」
佐渡せきはそう言おうとして、既に1時間が経っている。
風切あやかが黙々と雪を除けている手前、自分が先に音を上げるわけにも行かず、
「ひぃひぃ……ふぅ」
と息を吐きながら雪かきを行っているのだ。
そのことを風切あやかも気が付いているのだが、
(ここは敢えて黙っているか……)
ということで佐渡せきには声も掛けない。
そうして気が付いたら昼になっていた。
太陽が高く昇り、白い雪が光を反射してとても眩しい。
「ふぅ、これくらいでいいかな。ちょっとご飯でも食べに行こうか、せき」
「えっ……あっ……はぃ」
佐渡せきはぐったりしている。
さすがに少し身体を使いすぎたようだった。
小屋の縁側に座り込んでは肩で息をしている。
(そこまでやるくらいだったら、いい加減で音を上げればいいものを……)
風切あやかは心の中で苦笑をしつつ、そうした佐渡せきの様子を見ていて、
「おや……」
と思ったことが一つあった。
そうした光景、状況を昔、
「自分が体験した……」
ような気がしたのであった。
(ああ、そうだ。この感じは……)
思い当たることがいくつかあったのだ。
いくつかある……とはいえ、その大まかな出来事の発端は、
「ある人物」
によるものだけであった。
(かなたさまは今頃、何をしているのだろうか……)
ふと風切あやかがそう思ったように、そうした出来事の多くは、
『高山かなた』
という高山はるかの姉にして、風切あやかの護山家での師匠(と呼んでいいのか分からないが、少なくとも、風切あやかは彼女を師事してはいた)によるものだったのだ。
風切あやかは小さく笑うと、
「せき、少し休んでから行くとしよう。息が整ったら声をかけてくれ」
そう佐渡せきへ話したものだった。
今となっては、自分があの頃の高山かなた……要するに佐渡せきの師匠に当たるのかもしれない。それならば、
(せきに無理をさせることはないな)
そう思う風切あやかなのであった。




