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カゼキリ風来帖  作者: ソネダ
カゼキリ風来帖(7) ~ 水霊ヒスイの挑戦! 対決!あやか 対 せき !! の章
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水霊ヒスイの挑戦! 対決! あやか 対 せき !! の章(26) ~ 五光剣と暗龍剣

(奴も余計な攻防をするつもりはなさそうだ……)

 太陽はなお天へ上りつつある。時間にして8時を過ぎた頃だろうか。

 奈落王が流 ヒスイとの戦いで自身を強化、変化することができたのが朝の6時頃であるから、この一連の戦いが始まってから、かなりの時間が経っていることになる。

 そしてそのことは長時間戦っている奈落王にとっては、

 「非常に不利なこと」

 なのである。

 流 ヒスイの実力からして、奈落王が疲弊していることは山城 暁にも十分に分かっていた。だからこそ、余計な戦いはしてこないだろう。それがたとえ、

 「相性的に優位に戦うことのできる相手、山城 暁……」

 であったとしてもだ。

 山城 暁はさっと大和刀を前へ構えた。いわゆる正眼の構えというものである。

 「はっ、そんな構えで良いのかよ?俺を倒すなら、もっと派手な方がいいんじゃないか!」

 すかさず奈落王が口を挟んだが、山城 暁は小さく笑うと、

 「昔の私だったら、そうしていたな」

 平淡な声で返事をしたものだった。

 「へっ、やっぱり昔とは違うのか……こいつは楽しめるかぁ。オイ!!」

 「それはお互い様だろ?いくぞ!!」

 そう言うと山城 暁の身体が光を帯び始めた。

 太陽の光だろうか。周囲の光を集めているように暖かい光が山城 暁の周囲へ集まり、やがてそれは彼女の持つ大和刀へと流れていくのだ。

 「ふうん、なるほどなァ……周囲の光を集め、自分の『気』と合わせているってところか。ちっとは器用になったみたいだな」

 奈落王の脳裏には昔の山城 暁が思い浮かんでいた。

 「くそぉ!このぉ!!」

 自分の放つ挑発にいとも簡単に掛かり、直線的な力任せにな攻撃に終始していた昔の山城 暁である。

 その様子がいかにも必死であり、また愚かであった。それが奈落王にはたまらなく愉快であった。

 その山城 暁が長い時を経て、再び自分の前へ立っている。

 (あの時はコイツも弱っちかったし、ヒスイの野郎の横槍も入りやがった……!!)

 流 ヒスイ……と流 あさひの姉妹に対しては強い復讐心を持っていた奈落王であるが、山城 暁については別の気持ちを持っていた部分はある。

 それは一種の、

 「遊び相手……」

 であったのかもしれない。

 戦っていて『楽しい』と思ったのは、あの時の山城 暁だけであった。

 それを思い起こしているうちに、なおも山城 暁を包む光は強くなっている。

 (あれだけ強い光だと、俺もヤバいか……なーんてな)

 奈落王も応えるように剣を構えると、山城 暁の光に対抗するように、黒い暗黒を集め始めた。

 (…………あれは)

 これだけ周囲が明るいのに、明らかに暗い煙のようなものが奈落王へと集まっている。

 原理としては山城 暁が行っていることと同じであろう。しかし、奈落王が集めているのは、

 『黒いもの』

 恐らくは負の『気』や『怨念』の類のものだろう。

 対峙している山城 暁には、あの黒いものが冷気を帯びているのを5mほど距離をあけていても感じている。

 そしてそれはどこか重苦しい空気を纏っているのも目に見えて分かるのである。

 やがて二人の集めた『気』が満ちた。

 それは同時のことであった。もしも片方が先に『気』を集めることが出来たなら、容赦なく攻撃にうつったことだろう。しかし、そうはならなかったのは、今の互いの実力が、

 (拮抗してやがる……か、ヒスイの奴との連戦が響いているのか、それとも暁が強くなってやがるのか……)

 そのどちらかということになる。

 「まァ、どちらでも良いんだよ!お前との戦い、これは案外、楽しみにしていたんだぜ!!」

 「……滅多なことを言うんだな。お前が私を認めているというのか?」

 「違う違う、気まぐれだよ。そんなのは……ただ今は、お前とやりあうのが楽しい、それだけだ」

 「…………そうか」

 決戦を前に不思議と二人は会話を交わしていた。

 奈落王にとっては、再び山城 暁と戦うのを楽しく思い、山城 暁にとっては、奈落王との戦いを、

 「越えなくてはならない壁……」

 であるように思っていたのだ。

 その二人が今、互いの力をもってぶつかろうとしている。

 太陽が更に昇り、八霊山の生き物達が活動を始めている時間になるが、今、二人の周囲には鳥の1羽も鳴いていない。

 静寂につつまれたこの戦場で、

 「…………!!!!」

 二人の身体が弦を離れた弓のように、その場から飛び出した。

 「今度こそお前を倒す!生命の光を蓄えたこの大和刀……その五光剣で!!」

 「結果は変わらねェ!この山にはびこる負の念を纏った暗龍剣だ!生命の光など残さず食いつぶすぜ!!」

 光と暗黒の剣が互いの持つ『念』もろともに激しくぶつかりあった。

 幾重にも衝撃が発生し、それを感じて遥か遠く隣の山に居る鳥たちが一斉に空へと飛び立っていった。

 また衝撃波による影響はそれだけではない。

 「む、地震か……いや、かなり大きいな」

 護山家の役場では、その大きな揺れにより棚が倒れ、書類や陶器が散乱したし、

 「ひえぇ……すっごい揺れだったな……ってこりゃ、まいったな」

 倉庫に使っていた古い小屋が崩れ落ちたくらいであった。

 またこれは余談になるが、この衝撃で風切あやかの小屋も崩れ落ちてしまっている。

 幸い彼女は聖白の森へ出かけていたので、怪我などを負うことはなかったが……。

 さて、1分ほどこの衝撃は続いたものだったが、やがて収まった。

 その衝撃の発生源……すなわち、山城 暁と奈落王の戦場は、

 「…………」

 巻き上げられた砂埃により、両者の安否は不明であった。

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