水霊ヒスイの挑戦! 対決! あやか 対 せき !! の章(16) ~ 2人
ここに来るまでの間、山城 暁と流 ヒスイの関係はしばしば述べたことと思う。なので、これ以上のことをくどくどしく話していく必要性は今のところはないだろう。
また必要性があれば余談として上げていこうと思う。
さて……
声を投げかけた山城 暁には、最初は風切あやか……というよりは特徴的な姿をした精霊鳥が目に入ったものだった。
その次に風切あやか、そしてである。
「っ……お前は……!?」
風切あやかと精霊鳥の向かいに座る、流 ヒスイの姿を見て、しばし閉口してしまったものだった。
しかしそこは次代の山神さまにして護山家のトップである。
「ヒスイも一緒だったのか。丁度、一緒に食事がしたいと思っていたんだ」
などと話し、嫌な顔や気持ちは少しも表に出さない。
そういった様子が風切あやかには意外なもので、
(山城さまとコイツは互いにいがみ合っていた仲だったはずだ……)
目を丸くしてその様子を眺めていた。風切あやかは一介の護山家である。
今のところ、気に入らない相手はおらず、誰とでも気にせずに接することができるものだが、
(やはり気に入らないものは好きではない)
部分があり、むしろ嫌なものはとことん嫌う性格を持っている。
例を挙げてみると『約束を違えること』そして『自分を裏切ること』を激しく嫌っている。
これは風切あやかが上役の高山はるかとの雑談において出てきた話である。
護山家の仕事において、こうしたことは、
「まずない……」
から、そういった風切あやかの性格がどのように出てきたのかは分からない。
ただ約束に関しては煩いのは事実であった。
…………話が逸れた。元に戻そう。
そうした格好で相対している流 ヒスイの前でも平静を崩さない山城 暁であったが、その相手、流 ヒスイはというと、
「…………ふん」
ちらりと山城 暁 を見て、鼻で笑うと、それ以上のことは話さない。
(こっちの方は話のとおりだな)
風切あやかは眉をひそめた。それでいて、山城 暁 は、
「ふっ、相変わらずだな。だが、この場所に出てきたということは……」
「ふん。言われるまでもない。そもそも水霊の立場など、意味を成さないものだ。それをお前達は仰々しく扱っている……ただ、それだけのことだ」
「はは、そうだったな」
楽しそうに笑っている。
そのまますっと風切あやかの側の席、精霊鳥の隣の席へ腰をかけると、
「魚料理はあるかな?」
働いている水の精へ声を掛けた。その様子があまりに自然なもので風切あやかは心のうちで苦笑した。
(まるで私達と変わらないようだ)
と思ったからだった。
その一方で、ツンと山城 暁から眼を背けている流 ヒスイはというと、
「私は野菜が欲しい。この時期は何がある?せき」
「えっ、えーとだなぁ……」
話の向きは佐渡せきへと向かっていた。もとはといえば、流 ヒスイと佐渡せきの二人の食事だったのである。
それがどうしたものか、風切あやかに精霊鳥、更には思いもがけず、好敵手と位置付けている山城 暁が出てきてしまったのだから、流 ヒスイとしても面白くはないのだろう。
「私はほうれん草かな。醤油をかけて食べると、おいしいんだ」
「なるほど、それにしてもらおう」
そう言うと小さく笑う
(流 ヒスイ……佐渡せきのことが気に入っているのか?)
風切あやかは流 ヒスイと佐渡せきの様子を注視していて、それを感じ取っていた。
どういう理由で彼女を気に入っているのかは分からない。だが、流 ヒスイが佐渡せきにかける言葉や態度、それに佐渡せきの言葉には従順な部分を見ると、
(何か思うところがあるのだろう……)
ということは分かる。
しばらくして料理が運ばれてきた。風切あやかが注文したのは山菜蕎麦、精霊鳥はトウモロコシのお吸い物、山城 暁が鮭の刺身……
それに流 ヒスイと佐渡せきが揃ってほうれん草の盛り合わせが運ばれてきたのだった。




