水霊ヒスイの挑戦! 対決! あやか 対 せき !! の章(9) ~ 白刃の魔物
その翌日のことである。
この日は残っていた赤川も役目があると戻っていった。
残っているのは風切あやかと精霊鳥だけである。
「今日はいよいよ、聖白の森……修行の場へ向かうのですが……」
妙に言葉を詰まらせている精霊鳥だった。風切あやかもそれを怪訝に思い、
「何か問題でもあるのか?」
自分よりも一回り小さい、子供のような体格をしている精霊鳥を見やって聞いた。
「いえ、問題……というより宿命、といいましょうか」
「宿命?」
「はい。その修行場はこの先にあります。しかし、その途中にはその場所を護っているかのように、白刃の魔物がいるのですよ」
「白刃の魔物だって!?」
まるで聞いたことのない言葉であった。
八霊山では毎日のように、浪霊や周囲の山から偶然に山へ入ってきた侵入者と戦ってきた風切あやかである。しかし、そんな風切あやかでも、
「白刃の魔物……」
というのは、
「まったく聞いたことがないぞ……」
なのである。
もともとそういった生物が住み着いていたのか、それとも外から入ってきた上でそこに住み着いたのか……
全く想像することは出来ないが精霊鳥の話によると、どうやらもともと住んでいた生物が、偶然に聖白の森へたどり着き、その空気にあてられ、成長したものだという。
「私のこの姿も、何かの意思が働いた影響もありますが、この聖白の森の『聖なる気』によるものがあります」
と精霊鳥が言うものだから、この森の空気は何か特別なものがあるようだった。
さて……それで問題なのが、
「白刃魔物……」
である。
精霊鳥の話によれば、その魔物は、
「白い体をした巨大な蟷螂」
で、聖白の森の『聖なる気』が一番集中している特別な場所を縄張りとして独占しているというのだ。
勿論、その場所を風切あやかは修行場として使わなければならないのだから、必然的に、
「その白刃の魔物を倒さなければならないのか……」
ということになる。
風切あやかはごくりと唾を飲んだ。
正直に、その白刃の魔物を自分が倒すことが出来るのかどうか……それが分からないのであった。
(今まで戦ったことのない相手だ……どれだけ強いのか全く分からない)
それが単純に怖いのである。こうなったら、山城 暁や赤川や青山に助太刀を頼んだほうが良いのかもしれない。しかし、
(いや、それは駄目だ!)
その修行場を使うのは他ならない自分である。それならば、その白刃の魔物を打ち倒してこそ、
「その修行場を使う資格がある……」
と考えるべきではないだろうか。
「なるほど、だから『宿命』だというのか」
「お分かり頂けたでしょうか?あの場所を取り戻すした者こそが、聖なる気のもとで力を得るものができるのでしょう」
「分かったよ。その白刃の魔物、必ず私の手で倒してみせるさ!」
「どうかご健闘を……そして、あなたが白刃の魔物を倒したとき……」
精霊鳥が僅かに空へ目を移し
「私の役目が果たされるのでしょう」
呟くように言ったものだった。




