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虚史   作者: 田中 平八
時代との邂逅
9/13

[万刀流殺戮事件]  潜入調査

 月末やけど漸くアップできた。

【0】 ある門番の愚痴


 今俺の目の前には死人のような雰囲気をこれでもかというくらいかもし出している人間がいる。

 何か前に嫌な事があったのか、本当に死んだ魚のような目をしている。

 その男はどっかの大名が特別に選んだ侍で本職はなんやら捜査を本職としているらしい。なんでも先日の万刀流の事件で聞き込みをしているらしい。

 はっきり言って門番らしい仕事をしていないので、対応が面倒だ。

 一応奏流丸の許可証を持っているので、予約の無い客人とはいえ門番の自分としては入れなくてはならないのだろう。

 といってもこの男が我々を疑っているのは明白である。

 全く面倒だこの真治とか言う侍は・・・。


【1】 新天地への困惑

 

 嗣乃組はその存在を隠すために、別の何か特殊な武装集団のようなモノだ。と一般の人間には勘違いさせている。

 そのためかなりの秘密主義の集団である事はごく一部の人間のみが知る話だ。

 真治自身もある程度は覚悟していたが、その覚悟程度では少なかった事に真治はウンザリする事になるのであった。

 そもそも彼らは今となっては極少なくなってしまったものの、様々な職種の人間が使っている【異能】の原点である陰陽術者集団の数少ない一角である。

 そのため、もともと隠れる必要など当初は無かったのだが、そんな彼らも今や片手どころか嗣乃組を含め三家しか残っていない。

 よって、・・・である。



 「ったくなんなんだあいつは?散々俺の事を上から下にジロジロ見やがって。まったく・・・失礼な奴だ。嫌そうに対応してなかなか入れて貰えなかった。」

 許可証を見せてもはいれないのかと思っちまったぜ。と真治は誰にも聞かれないように独り言を呟いた。

 後ろ向きな真治は(全く…隆一殿のせいでこんな所に行かされる事になるとは…怨むぜ…)と負のオーラを出しながら想う。

 真治がこんな風に隆一を怨むのはなにも仲間外れにされたからだけではない。

 なんと隆一は真治が連れてきた捜査官を全員連れて行ってしまったのだ。

 真治にとっては『連行されてしまった』という気がしてならない。

 が、真治は「いや、こいつらは俺と一緒に嗣乃組を調べなきゃならんので……無理です。なっ?」と言った。

 そして彼の部下は「上司の命令は聞かなきゃですね」と言い、真治が頷く。そして真治が彼らを連れて行こうとすると。

 彼らは隆一の方になぜか近寄り、「真治様には申し訳ありませんが、直属の上司よりも一番上の御方の命が優先されますから」なんて真治に言うのだった。

 部下は自らの意思で真治から離れた。

 手柄を立ててなんぼの世界。つまり真治は部下に見限られてしまったのだった。まぁ手柄が立てれない仕事よりも立てれる仕事を選ぶというのは、至極当然の事である。

 よって真治は精神的にガタガタの状態。それに加え暑さやら人間関係やらで……。

 (ここはなんて活動しにくいんだ。ここの人間は恐らく捜査には非協力的だと思うぜ。この流れだと。)真治はそんな風にを心の中でぼやく。

 暫くだるそうに歩いていると「もしやあなた様は客人の現場事情調査課総監督であらせられる真治殿ではござらんか?」なんてうしらからこえをかけられたのでそちらを向く。

 化け物のような男だった。

 それは……つまり―――ゴッツイ厚着だったのだ。

 (なんとこんなに暑いのにかなりの厚着をしているのだ!)と俺は驚嘆する

 先日は兎に角大量の氷の塊で驚くほど寒かったが今日は通常通りうだるような暑さだ。

 だというのに。

 (俺なんてかなりの薄着なのに暑すぎてこんなに苛々してるんだぜ)

 そんな吃驚妖怪野郎が笑いながら話しかけてきた。

 勿論普通によく見ればある程度は汗もかいている。それに服には様々な刺繍があり、服によって階級のようなものを指し示すようにしているんだろう。

 素人の真治でもよく考えれば分かる事だった。

 (成る程こいつはある程度重役で俺が何故此処にいるのか知っているはずだ)と考えた真治は一安心して経緯を話す。


 真治が話し終えると「話は良く分かりました。ではこんな所でうろうろしておらずにどうぞ本堂にお入りください」とにこやかに言われる。

 そこでまた真治は(『今回の事件でこの陰陽一家がある程度の疑いをかけている男』に作り笑いまでしている。恐ろしい男だ。)などと敏感に反応する。

 俺に言わせれば妖怪なんてわけも分からない…というより、実際にはいないとされているそんな奴よりもソレを退治するのを生業としていると言われている陰陽術者のこいつの方がよっぽど妖怪だぜ。

 なんてことを思っていたら、返事をしない事で不信感を抱いているようなその妖怪厚着野郎がソワソワしているので、ウム等と言って肯定した。

 「おぉ、よかった私此処でご意見番をやっておりまする弥彦という者であります」

 等と自己紹介を始めだすので慌てて俺も自身の自己紹介も済ます。

 その後とりあえず日陰になる様な大樹の元に入り、党首と話がしたいなどという趣旨の話をすると、次期党首というのしか今はいないなどと言われる。

 党首がいない状態で今までやってきたという訳の分からないことに俺はまず驚く。

 何でも複数のご意見番が存在し、それらが導き出す結果で物事を決めるようだ。そういう仕組みでやっているらしい。

 真治にはよく分からなかったが、そういうことらしい。勿論無能な党首ならいない方がましだということはついさっき分かった事であるのだが・・・。

 兎に角そんな説明を聞けば納得できるような事で驚いた真治はまだまだ甘かった。

 しかし、一番真治が甘かったのは他人の文句ばかり考えていた暢気な思考回路だった。



 

 屋敷が真治を見に騒いでいた間一人だけ怪しい行動をしている者がいた。

 「真治とかいう無能そうな男が先日の事件でここに疑いをかけて来た事意外は大したことはありません」

 「ええ。まあ、恐らく本人は大して疑いを持っていないのか取調べからやる気は感じられませんがね」

 「っふ。分かっていますよ計画に支障が出るのであればしっかりと消します」

 そんなことを誰もいないにもかかわらずそんな事を…しかし、独り言ではない間の取り方で話していたた。決して喋っているようではなかった。


 


【2】 潜入経過


 朝目覚めると見慣れない天井がそこにあった。

 そんな小さなことで心に靄がかかる己の小ささに今更ながら嫌になりながら、真治は前日の事を頭の中で整理する。

 といっても一日目に収穫など無かった。それは当たり前で昨日の真治は自分の上司に対する愚痴と新境地での驚きと戸惑いを感じただけだったからだ。

 暫くたって寝室から客間へと移る。

 (次期党首があんな餓鬼だなんてここはどんだけ人員不足なんだよ)などと考えながら真治は朝食を食べる。

 朝食はご飯に味噌汁、漬物数種類に目玉焼き。妖怪の眼球やらそんなゲテモノではなく、そんな内容で一安心して気が抜けた。

 その為なのか、うっかりいつもと同じ調子で「醤油取ってください誠二郎君」などと迂闊にも言ってしまう。

 真治が訂正する前に「お友達ですか?」と手伝いの女…いや男か……。兎に角中世的な『嗣乃組(きのぐみ)』の者に尋ねられる。

 一瞬何について聞かれているのか分からなかったが、誠二郎の事だと気付き友人のことを少し話す。

 すべてを聞き終わった後その者は「あの人は良いお友達をお持ちのようですね」等と言い、誠二郎は変な気持ちに成りながらも適当に返事をする。

 (まったく、あの変な奴はなんだったんだ?調子が狂うぜ……。)

 この時はまだ真治は自分が感じている感覚が今考えている、軽い恋煩いのような物ではないということに気付いてなどいない。

 ふぅ。兎に角ここの事情を理解する必要があるな。兎に角情報収集でもするか。

 そのような事を真治が考えていた時、手近な所に何人かの言い合いをしている子供が目に映った。

 「いや、だからその胡散臭い忍者がよぉ」

 「休兵衛はやっぱり馬鹿だなぁ。本当の忍者が自分の正体をばらすような事をしないんだよ」

 真治は子供の言っている事というのもあって、暫くはその内容を聞き流していた。

 しかし、真治が「セミ」という忍者の名前を聞いたとき彼の顔色が変わった。

 そのとき彼は、今回の事件が思っていたよりもずっと厄介な事をいや、国が傾くほどの大惨事の幕開けになるであろう事を理解したのであった。



 

 所変わって隆一。

 隆一は真治と離れてから護衛の侍(勿論城之崎大名から使わされたもの以外の隆一の捜査員の侍)を何人か連れて轟忍軍の行った土地を巡っている。

 一応魔境や秘境のような赴くだけで死んでしまうようなところではなく、聞いた事もないような田舎町を選んで来た。

 余りにも田舎過ぎる内陸部のせいか、その地区は担当の大名がいない。

 よって、大名に収める年貢のよな物もない。しかしそれでは無法地帯で各地で指名手配されている者や落ち武者、大罪を犯した大名(大名クラスになると殆ど金で解決してしまうので、このクラスの犯罪は他の地の大名の暗殺を指令したやら国家級の犯罪となる)その他諸々の犯罪者の温床である。

 しかし、というかだからこそ、というべきか他の土地より検問の数が多く、身内(同じ犯罪者)しか入れない。

 そしてその検問に立っている者は恐ろしく強く、連絡網は早く一人と戦っていれば直ぐに応援が来て、強行突破では入れない。

 そんな訳有りのこの土地に名はなく、ただ独立しているため『陸の孤島』そして『鬼』のような人間の集まりのため『鬼ヶ島』と呼ばれている。


 真治から聞いた話では『ならなぜ、潰しに繋らないのか?』と思ったものだ。

 が、そんなことは直ぐに考えなくなった。来て分かった事だが、ここは思ったより周りに山が多く、元々往来には不向きな土地である。

 行軍には全く持って不向きだ。そこで大名達は不干渉を選んだ事が分かる。

 真治の部下は真治の命令でこのような無法地帯のような場所で何回か調査していたので、勝手が分かっているらしく難なく入る。

 なんなくといっても、ワザワザ数人に分かれて別々の検問を潜りはいった。

 その検問も一々分かりにくいところにあり、彼らでさえ探すのに時間がかかった。といっても出いれが少ないため、日にちごとに入ったのでそれは問題では無かったのだが……。

 今や隆一は、こんな事なら真治にこちらを一任させていればよかった。と考えていた。



 隆一が鬼ヶ島に潜入してから数刻してから、

 そのころとある飲食店では特別に個室になっている部屋からここの重役達が雑談を交わしている。

 といってもここの重役というのは服装で階級を表したりしていないので、服装はそこいらの農民と同じ服装である。

 他の住民と違うのはチラチラ光って見える恐ろしく冷たい眼光のみである。

 「おい。もうそろそろ幕府(大名や侍達の総意の事)からの調査団が入ってくる頃だが。来たか?」と一人の男が話してからは雑談の内容が変わる。

 「ああ、前回の会議では調査団が来る手筈だったな。まぁ、侵入者は彼ら(検問をしている門番の事)が切り殺してくれますからねぇ……」

 「そぉぅレニあいつらは一々殺した奴を報告だんてしねぇがらなぁ」こいつはかなり酔っているようでチャンと喋れていない。

 「許可証があっても複数人なら迷わず殺せとはちゃんと全ての検問所に言っているはずです。必ず群れれば死にますよ」

 「そして彼らは必ず群れてくれる。どんな事があっても三人程度ではこない」

 「ぐぉぉぉぉー」

 話をしていた二人が音のする方向を見る。

 「雄たけびではなく、いびきでしたか」などといい、潰れてしまった彼を介抱するため、話は自然に打ち切りになった。



 真治の部下の慎重さによって最初の関門を突破した隆一は無事に調査は出来るのか、そして真治に迫る怪しい者は一体……。


 


 


 

 

 

 なんも進展しませんでした。次は少しは動くかなぁ?

 種まいただけやからなぁ今回は。面白くなかったら御免ね。

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