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虚史   作者: 田中 平八
時代との邂逅
4/13

[嗣乃村妖怪戦線] 下調べ

 今作はちゃんと考えてから、作り始めたので今までよりは自身があります。

 今回は無理やり後付けで誤魔化したりする様な無様な真似はしないように心がけました。

町が燃え住人達は逃げ惑う。火の回りが異常に早いこの惨状においてなぜか逃げずに家事の現場に走っている上から下まで真っ白な服を着た男がいた。野次馬というのではなく、至って真剣な眼差しである。その男が大声で叫んだ。

 「結び目!上から敵を捕獲しろ奴の被害を最小限に抑えるんだ。」また白い服を着た人間が何処からともなく飛んできて、両手を開いた。「よし。」何がよしなのか何も変わっていない。ただ火が回る速度が緩まっただけだ。

「殺し目は属性で少し弱らせてから片を付けろ!油断するなよ以外とこいつ強いぞ」男が言うといつの間にか男の隣に別の白い服を着た子供が札を炎の勢いが一番強いところに投げた。驚いたことに札は燃えずに宙に浮いている。

その後少し経つと札を投げた箇所の火の勢いが嘘のように消えた。男が何かを言っている。すると今度は、残っていた火が全て消えた。「っく大分被害がでたな。まあ誰も死ななかったことだけでも良しとするべきか。」

 もし誰かが彼らの仕事の一部始終を見ていたら、八割方の彼らの部外者の人はこうまとめるであろう。彼ら人外のものを退治し、人の道を超えた忍者や侍の技に彼らの同業者以外で唯一対処できる『陰陽師』達の仕事を見れば・・・。言うまでもないが、あえて言おう。八割以外の人間とは、忍者と侍の最上位に位置する人間達である。

 今回の虚子は、そんな陰陽師の中において最高の後継者と思われている青年の初めての死線の一部始終である。




 青年は古そうな巻物を読んでいる。「んー。成る程。」などと言っている。この状況だけ見れば、彼がいかにも賢そうな青年に見える。が、悲しいことに青年は書いてある中身が全く理解できていない。といっても、彼が読んでいるのは陰陽師の業である妖怪退治の基礎が欠かれている巻物だということを判っていて彼は読んでいるのだ。しかし悲しいかな・・・彼は意味が全く判らないのだ。

 「平等丸!」平等丸とは青年の現在の名前である。

 「こんなところでそんな物を読んでずに一緒に練習しますぞ!理論よりも実践する方が覚えられるのですからね!」大柄な男は言う。

 「判ったよ奏流丸・・・。」平等丸は申し訳なさそうに言う。平等丸は、実践で全く効果が得られなかったので理論から入ろうとしていたのっだたがそんな事は言えない。結果が出なかったからである。

 判ってはいるだろうが、彼らは最初に登場してきた陰陽師たちの仲間である。 



 外で子ども達が式神と契約をしている。式神とは、妖怪や精霊の類と契約することで如何なるときでも助けてくれる。万能な相棒である。勿論良い所ばかりではなく、精神状態がしっかりしていない時に使うと精神も肉体も喰われる。

 平等丸は、一応これもやってみたが運の悪いことに契約段階で無理だった。しかし弱気な平等丸はこのことを思い返すと、「もし偶然うまく契約できていても今頃は式神の餌食であっただろう。」と、だから運は良かったのだと思うのだった。

 その様に考え事をしていると、「おい、あいつだぜ。」契約している子どもの内の一人の子どもが言う。「ああそうだな。」とまた別の子ども二人はどうやら言いたいことがあるらしい。だが奏流丸がいるし自分より格上であると聞いている平等丸を前にして気が小さくなっている。二人の言いたいことも言えない仲間を見ていられず、他の子ども達の大将的雰囲気をかもし出している子どもが前に出てきた。

 「おい。平等丸!お前がこの有名な陰陽師である『嗣乃組』の次期頭首だとは俺は認めないぞ!頭首ってのはずっと努力した優秀な術者が成るのがいいんだ。お前がどれだけ優秀なのか知らないが、今の時点で決まっているというのは、不公平だ!」仲間が言いたかったことを彼が代弁する。彼らはほかの子ども達と同様に平等丸を妬んでいるのだった。

 「懺悔丸。確かにお前の言うことは間違ってはいない。だがお前もきっとわかる時が来る。こいつが・・・平等丸が頭首である必要が・・・。」奏流丸は平等丸を見て言う。

 平等丸は俯いている。この時が一番平等丸にとって嫌いな瞬間だった。

 彼が出来る陰陽術は、四つだけだ。まず『幻診』である。これはありはしないものを診る能力である。その次に『裂け診』。これは敵の『氣』の濃度の低い所を診つける能力である。そのほかに『先診』。これは一般的に予見のことである。そして最後に、『伝心』という思念波である。これらは勿論陰陽師の中でも珍しい。

 しか、妖怪を攻撃する系統の技がなぜか出来ない。こんな事では頭首どころか改名の許可つまり、一人前の術者になれるかどうかさえ怪しい。にもかかわらず、嗣乃組の隠居どもは、自分のことを頭首にしようとしている。他人が自分に自分の限界以上を期待する。しかし、自分はそれに答えることが出来ない。惨めだ。

 平等丸は逃げたい気持ちをこらえる。これ以上奏流丸を失望させたくはなかったのだった。

 「それが・・・王者の気質か?余裕というのか?っクソ!俺のことなんか相手にしないってのか。」懺悔丸は最後の方は、声が小さくなる。どうやら平等丸が考え事をしていたときの様子を診て懺悔丸は自分達を相手にもしていないと勘違いしたようだった。彼は二人に合図をして去る。最初は歩いていたが堪らなくなりだんだん小走りになり最後は走っていった。

 3人が逃げてから暫く経つと平等丸は奏流丸に「ゴメン・・・少し一人にさせてくれ。」と言ってふらふらと歩いていった。




 場所は変わって懺悔丸達は街中を歩いている。因みに、上から下までの真っ白な戦闘服は、自らを清めるための服で修行のときと任務のとき意外は、侍やら農民やらの一般の人達と同じように普段は和服を着ている。そのため彼らが街中にいて浮くことは無い。

 駕楼都とは比べ物にならない大きさを誇る罵玖都は星七剣衆(せいななけんしゅう)の一角『万刀流(ばんとうりゅう)心剣術』の本家まである。・・・といっても星七剣衆(せいななけんしゅう)が在るか無いかは、大きな都の基準でもある。そのため罵玖都というこの国でもトップクラスの都にあるのは殆ど当たり前である。といっても駕楼都にはなかった。

 「そういやぁ最近ここいらの妖怪が以上に強くなってきているって聞いたか?」と三人組のうちの一人が言う。

 「どういうことだ?そんな事は聞いたことが無いぞ。説明しろ陀手朗。」全く感情のこもっていないように懺悔丸は言う。そして「とでも言うと思っているのか?」と聞き返す。

 「いやぁ・・・知っているのを前提で僕はちゃんと喋っているよ。あんたの兄貴が最近のここいらの仕事の指揮を取っているって事実をちゃんと記憶しているぞ。うん。」陀手朗という男は誤解を解く。懺悔丸はどうでもよさそうにしている。

 「じゃあ俺達だけで今夜この辺りを調査しませんか?」もう一人が思いついたように二人の前に立って言う。

 「良い考えですね休兵衛さん。私たち三人がいれば確かになんとかなるかもしれません。」陀手朗は楽しそうに言う。

 そうしていると、思いついたように「イヤ、念には念を入れる。ということで我々の頭に隠居の皆さんが推している彼を呼びましょうよ。平等丸さんをね。」いやらしそうに、懺悔丸は言う。勘違いされがちだが、彼は至って一般的な性格で、単純にみんなの言っている力量の違いを診ようとしているのだった。決して弱者を戦場で見殺しにしようなどとは思っていない。

 冗談で言っていたのに懺悔丸が本気にしているので、二人は焦っている。もう引けない。提案した休兵衛に至っては、口を中途半端にあけ呆然としている。無理も無い自分の不始末でもしかしたら死ぬかもしれないのだ。




 物語が陰陽師一色の中遥か先の竜雅塚(りゅうがずか)といわれる地に物語は移る。

 小柄な少年が一人で話している。が、その少年以外に何人かの男や女の話し声が聞こえる。どう見ても殺風景な何も無いただかなり大きな七つの水晶が奇妙に光ながらゆらゆらと浮いているだけの部屋だ。

 「最後の質問だ『獏戦丸』。罵玖都に居座っている嗣乃組の現在の戦力はどうなっている?」男は聞く。

 「何体か式神を放ち調査しております。今のところ今まで通り代理の頭領でやっておりそれほど高い結束力は無いものの個々の能力もやはり今まで通りといった所です。」水晶を通して声が伝わる。水晶は光を失い床にゆっくりと着地する。

「次に『駿神』。極最近まで我々の実態を知ってなお、我々に反乱を行っていた『曽根崎 縛斗』の動向はどうなって折るのだ?」男は問う。

 「はい。現在隠殺頭拾参連隊おんさつがしらじゅうさんれんたいにも数えられております、爆聾(ばくろう)忍軍末端機関の山椒魚を使い調査しております。」水晶からはさっきまでとは別の声が聞こえる。水晶からなので、感情は伝わってこない。

 それを聞いた少年は不愉快そうにしながら「忍軍なんてのはいない。隠殺頭拾参連隊おんさつがしらじゅうさんれんたいなんてのがあって忍者共は調子に乗っているが、忍びってのは金をちらつかせられればすぐに心変わりして信用ならん。軍隊なんてのとは程遠い。だからあるのは忍びの群れだけで、精々忍群だけだ。」蔑む様に言い放ち、悪態を打つ。何年間も忍びに裏切られ続けて来た様に言う。少年にしか見えないのに・・・。

 彼ら『新大和改革党』という名称の軍事組織は大衆に気づかれる事も無く徐々にこの国を陰から制圧していくのである。


 





 

 

 

 

 

 次回[嗣乃村妖怪戦線] 開戦 お楽しみにっていうか読んでる人もいない自己満足な小説では誰も楽しみにしてませんが・・・。

 他人が読んで面白いと思える小説を目指します。

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