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虚史   作者: 田中 平八
時代との邂逅
10/13

[万刀流殺戮事件]  窮鼠

 久々にアップしました。

 今までアップできなかった理由は色々ありますが、やはりゲーム三昧の毎日だからですかねぇ。

 兎に角読んでくだせぇ。

【1】 下働きの苦悩



 目下の現状は真治が隆一の命により嗣乃組陰陽師にて諜報活動を実施していた。しかし……。

 「いや、何度も申し上げておりますように、うちの者がいつ誰が何処で戦ったかという情報は、教えられません」

 ものすごい厚着をしている男は、三回目も同じ質問をされてるにもかかわらず、端から見ればそんなに不快をあらわにしていない様に答えた。

 そのような対応をしたのは彼自身答えてやれない事をすまなく思っているからだろう。

 尚、彼の名前は栓堂せんどう 彼方かなたといい、昨年分家からこの嗣乃組宗家に配属された。

 『らしい』というのは、真治自信この男が本名を簡単に言うように思えないからだ。

 勿論それは勘であって、確たる証拠はない。しかし真治は『自分の勘を信じる』事を信条にしている。

 それは信じられる証拠の集まりにくい時代において彼の処世術でもあった。

 簡単な筈の仕事が全く進まない事に苛立ちながらも、真治は今日まで知りえた陰陽師と彼等が倒すべき対象物について、自分なりにまとめる事にした。


 陰陽師は、地脈の妖気や瘴気などのバランスが崩れやすいところなどに集まり、その崩れたバランスの『結果』として現れる『妖怪』を倒し人々を救ってきた一族らしい。

 しかし、彼らの技自体も妖怪の発生原因と同じ地脈などから沸いてくる妖気やらの得体の知れない物である。

 だからこそ、妖怪のような『外道』に道を踏み外すものが出てきてきた。

 よって、昔こそは多数あった陰陽家も、もはや片手で数えられるようになってしまった。

 だからこそ、これ以上陰陽師が減る事がないように、出入りや能力などを隠し、自らを守るのだろう。

  そんな彼等が倒すべき対象の妖怪が近頃は自然発生(その場に生きる全ての生物の生命力?によって出来る『すだま』の集まりに人間の思想が絡み合うこと)するのではなく人間によっと呼び出されるらしい。

 そして人為的にそれらを使役できる人間はそれなりの神通力を必要とし、生まれたときから始めるだけでなく、親子代々受け継いでこなければ成らないらしい。

 そして、そんなことが出来るのは、陰陽師や神社の巫女や仏閣の和尚級しかいない。

 そんな風に人為的に式神のような物が頻繁に出て事も、情報は部外者に出さない理由かもしれない。

 しかし、だからといって、『鬼が島』に行きを逃して、何もでないであろう陰陽師を調べた。

 それで『何も出てきませんでした』では隆一殿にまた小言を言われる。

 いや、そもそも自分自身納得できないではないか。

 せっかく手柄を上げるチャンスだったというのに……。

 それにセミと言う忍者が関わっているようでのんびりとしていられない。

 セミと言えば昆虫の名前だ。

 そして忍者でセミの名前といえば最近頭角を現してきた『昆獅子』忍軍のことであろう。

 あそこの忍者は昆虫の名前で呼び合っていると聞く。

 と言ってもそれは、情報屋の『誠二朗』から聴いた話なのだが…。

 兎に角、どんなものでもいいので今回の事件に限らず、昆獅子忍軍の情報を獲得せねば。

 情報がないなら自分で聞いて回るしかないが、時間ならいくらでもある。

 しかし、数人に絞って数日で切り上げないと警戒される。

 暫く真治は眉間にしわを寄せる。

 「っま、そんときゃどうにかするさ」

 迷いを振り切るように呟いて真治は行動する。

 




【2】 まほろばの天災



 所変わって、真治の上司である、『隆一』一行。

 鬼ヶ島は最近上層部の出した凶行と言える検問所に対する命令によって町人の何人かがあらぬ疑いで、戦々恐々としている。

 現状で二十五名死んでおりそのどれもが勘違いとして扱われている為、様々な抗議活動が行われているため上層部もある程度は揺らいでいる。

 といっても揺れているだけで、実際には血眼になって慌てふためいている訳ではなく、殆どの住民は大して不安めいてはいない。

 それはこの町(島と呼ぶ住人も居るには居る)の住人にとっては、自分達の住んでいる町や人間がどうなろうが、興味は無いのだ。

 彼らは元及び減犯罪者達の集団であり、俗に言う『仲間意識』のような協調性は何もなく、誰が死のうが自分さえ生きていれば、それで彼らは十分なのだ。

 町が壊滅状態になれば、また移るだけ。所詮その程度である。

 今回の抗議活動事態は暇な奴らが暇なときにやっているだけで、実際には何も求めていない。

 その証拠に連続で参加するものはおろか、二回以上参加するものも殆ど居ない。

 よって、上層部も慌てている本当の理由は隆一達(といっても彼らは現段階では隆一の名前までは知らない)の動向である。勿論抗議活動を行っている彼らには全く持って興味の無い話だ。彼らは暴れたいだけなのだから……。

 

 鬼が島の上層部の何人かが『鬼宮きぐう』と云う鍾乳洞内で輪を作って話していた。

 「おいおい。一体どうなっていやがるんだ。蟻(あり)から聞いた話では大名どもの使いは来ているんだろう?」

 まず、上層部の一員である、黄鬼(この町の上層部の人間は、『鬼』の字の前に色の名前をつけて『二つ名』として、扱われている)が口火を切った。

 「ああ。あいつらが嘘をついたとも、あいつらがガセネタを掴んだとも思えねぇ」

 続いて黒鬼が。

 「だとすると。もう入られているとしか思えませんね」

 次に赤鬼。

 「我々の考えた検問対策では不備があったということですね」

 そして、青鬼が。

 「いったいどうやって我々の対策をかいくぐったのだ?」

 そしてまた黒鬼、というように、論じている。

 彼ら『上層部』というのは実際には仕切りたがり屋の集まりで参加しても直ぐに飽きて次の会合には出ない奴などまちまちだ。

 よって、犯罪者集団にもかかわらず、独裁政権は出来ない。

 しかし、そのかわり統一思想というか、国としての目標ができる事はなく、大した協調性が生まれない。

 それがここの強みであり弱みである。

 彼らは火事が起きたときなどの異常事態や今回のような外的排除などのときに集まるのだった。

 今回集まったのは『蟻』という忍者から聞いていた大名どもからの使者に対する処置について集まっている。

 今までこのようなことは何度もあった。だが今までは町に住んでいる盗賊や下克上に失敗した輩を向かわせて対処すればよかったが、今回ははいられてしまった。それは彼らにとって由々しき事態であった。

 よって彼らは今まで会合に参加した事がある者の殆どを参加した上で善後策を論じているところだった。

 そんな彼等が、結論の見えない不毛な討論を初めて、暫く経ってから、数十の塊が彼らの周りに侵入した。

 彼等が言っていた『蟻』という忍者だった。





【3】 蟻の蠢動


 それとほぼ同じ頃の鍾乳洞から何里か離れた場所では数人の侍が黒い物に包囲されていた。

 それらは鬼宮にもいた、『蟻』だった。

 「どこでへまをしてしまったんでしょうね?僕達は」とその内の一人が……というか、現在・ ・隆一の部下の一人である、弘田ひろた 玄武げんぶが独り言のようにしかし、隆一にしっかり聞こえるようにいった。

 まったく、真治君と仕事をしていたときは、こんな酷い局面に遭う事はなかったってのに……。

 彼は今になって鞍替え(といっても直属の上司からさらに上の命令にしただけであるのだが……)をしたことを悔やんでいる。

 やっぱりこのひとのしたについて来たのはしっぱだったかな。

 そういえば、真治君は『隆一殿は他人の命を余り重く感じているわけではないのではないかと思える節がある』などといっていたが。

 いや、今回は隆一捜査現場監督も囲まれているのだから、この話は関係ないか。

 兎に角どうしてこちらの情報がばれた?

 この町の奴らの話を聞いただけでも、近々我々が来る事を知っていたことは明らか。

 ……やはり、大名達に裏切り者が……?

 「ふんっ。面白い」部下が尻込みしている中、隆一は微笑を浮かべ日本刀を抜く。

 玄武が嫌な雰囲気を隆一から感じ取ってから刹那に『蟻』が隆一たちに向かって飛んでくる。

 近くで見ると蟻の正体は、中年ぐらいのか細い男達であった。

 隆一はその内の、自分に向かって飛んできた『蟻』の足に見える部位を日本刀で斬る。

 次に隆一は、次の『蟻』に向かい同様に、動きを封じようと走り出した瞬間に急に体が軽くなったように感じた。しかし、そう感じて暫くも経たない間に右の脇腹に激痛が走った。

 どうやら、隆一は吹き飛ばされたようだった。

 痛みに顔をしかめながら、自分の飛ばされた方向を見る。

 するとそこには、隆一自信が足を切り落とした人間が立っていた。

 「っ痛。糞!なめたまねしやがって」と隆一は驚きや恐を抱くより先に、『蟻』に悪態をついた。

 アレはなぜか片足ででも立てるらしいな。ん?だとすると、片足で俺を吹っ飛ばしたのか?

 だとすればこいつらは人間ではないし、恐らくどのような攻撃をしても動き続ける。

 それに、前に戦った『くの一』と近い異質さをあの黒い霧のようなものに覆われている物体からは感じる。

 しかし気をつけなくてはいけないところは、一体一体の攻撃が強すぎるという点だな。

 それと後はこの数だな。ざっと見てこれが6体はいやがる。

 前に戦った忍者とは、なんとか戦う事は出来た。だが、今回の敵は普通に戦っていては勝てないかもしれない。

 彼は未だに逃げる事よりも、戦う事を考えていた。

 そう隆一が思案している間にも『蟻』の動きは止まらない。

 未だ残る腹の鈍痛に耐えながらも、隆一は片足のない怪力の化け物の攻撃を避ける。

 ふぅ。よく見れば、攻撃の初動が大きく攻撃自体を避けるのは容易い。

 しかし、いくら攻撃しても死なないのでは、攻撃が避けれてもあまり意味はない。

 「おい。隆一!こいつら只者じゃねぇ」

 と玄武。彼はほかの二名(飛拿ひだ匿鎖とくさ)と一緒に化け物3体と戦っている。

 その三体はどれも手足が欠損している。しかしながらも、その欠損部分を補うかのように、欠損部位に黒い塊が凝縮されている。

 また、攻撃もみなその黒いものでやってくる。

 暫くしてから、痺れを切らした玄武は「戦っても無駄だ。東山とうやま吏玖りくもやられた」と悲鳴交じりで叫ぶ。

 「こいつ等攻撃力や、耐久力は人間離れしている。しかし、攻撃速度や、移動速度も大したことはない」

 玄武はまだ戦おうとする隆一に撤退を要求した。

 それを見た隆一は漸く戦う事を諦めた。

 「恐らくこいつらは、人形かなんかに忍術の負荷をかけて動いている戦闘人形だ」

 玄武は『やはり』と思う反面、『ならばどうして戦おうとしたのだ』と、思いながらも、仲間に合図を送る。

 「おい!一旦引くぞ。俺が東山を担ぐからどちらか吏玖を頼む」

 そのとき『蟻』の一体が出鱈目に回転しながら、吏玖を担ごうとしていた飛拿を狙って攻撃を仕掛ける。

 飛騨は吏玖を降ろす事も出来ずに、担いだまま上に跳ぶ。

 いくら『蟻』の攻撃速度が優れていなくとも、『担いでいた仲間を降ろす』という、余分な動作が在ったため、結果として飛騨はその攻撃によって吹き飛ばされた。

 飛騨が飛ばされた反動で吏玖が孤立してしまう。

 「東山は任せた吏玖は俺が回収する。飛騨を頼んで良いか匿鎖?」

 っく。飛騨の奴までもが……真治君になんて詫びれば良いんだ?

 一応隆一殿についていっているものの、この町での調査活動は真治君に任されていたというのに。





【3】


 隆一たちが『蟻』と戯れる少し前、鬼宮にて会合の参加者の前に『蟻』がいた。

 「あなた方には失望してしまいましたよ」

 「アレだけ私が情報を前々から流したのに」

 「情報を流した後に会合を開かずに祭りをしていましたので、まさかとは思っておりましたが……」

 などと、『蟻』達は複数の口を介して鬼ヶ島の上層部の人間に語りかける。

 「っけ。忍者風情が生意気に部下をぞろぞろ連れてきやがってからに」

 上層部の一人の黒鬼は苛立ちながら『蟻』に言い放つ。

 この町にとって、鬼宮は『聖地』であり、町の住民でもなかなか、入れないような場所だからだ。

 「分かっていませんねぇー。私が今までこれだけの『体』をこれだけつれてきた事はなかったでしょ?」

 笑いながら言うその『蟻』は他のとは違い、目には生気が宿り、周りには黒い靄がかかっていなかった。

 「もう、あなた達には任せて入られません。もう我々が片付けてあげます」

 そう『蟻』が言い終わってから、『蟻』の数が増え、そして鬼宮鍾乳洞の壁に付けられている蝋燭の火が全て消えた。

 

 どうでしたか?

 よければ感想など送ってください。

 チャンと定期的にアップする予定なのでこれからも呼んでもらえれば嬉しいです。

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