第1話 くすくす。怖がってる。怖がってる。
すてられてしまったりんねとやみやみのたましい。
くすくす。怖がってる。怖がってる。
ここは闇の世界。真っ暗な真っ暗な闇の中。
君はひとりぼっち。
誰も君を助けてくれないよ。
誰も君のことを覚えている人はいなんだよ。
さあ。君はどうする?
君が全力で駆け抜けたところ。
そして、君が最後にたどり着いたところ。
深い。とっても深い闇の中にゆっくりと落ちていく。ひとりぼっちで。まっさかさまに落ちていく。
りんねはとっても困っていた。真っ暗でなにも見えない。(自分の指や手も見えなかった)ここがどこなのかも、どこにいっていいのかもわからない。
ゆっくりと立ち上がってみると、(お尻から落っこちたから、お尻がすこし痛いだけで、どこにも怪我はしていないみたいだった。よかった)とりあえず平らな地面が足の下にはあることがわかった。(なにかを踏んでしまったり、なにかにつまずいて転んでしまったり、ぽっかりと大きな穴があいていたりするかもしれないから、不安でとっても怖かった)
さて。どうしよかな? うーんとあごのところに手を当てて、りんねは考えてみる。でもすごく天才的なこの状況を全部いっぺんに解決できる方法みたいなものはなにも思いつかなかった。(それはそうだ。だって、ここがどこで、どうして私がこんなところにいるのか。私にもよくわかっていなかったのだから)
もしかして、『私は死んでしまったのかもしれない』って思った。
はじめは夢なのかもしれないって思ったけど、(お尻も痛かったし)夢にしてはとても現実感がありすぎた。(こんなに現実じゃないような不思議な世界の中にいるのに、私の意識や体の感覚はよく眠った日の朝目覚めたばかりのときみたいに、とてもはっきりとしていた。全然眠たくもなかった)
私は死んでしまって、天国にも地獄にもいかないで、(あるいは、どちらにもいけなくて)死後の世界の中のよくわからない真っ暗なところに落っこちてしまってみんなに(神様や悪魔や家族やお友達のみんなに)忘れられてしまって、ここに一人で放り出されているのかもしれないって思ったのだった。(もういらないって言われて、捨てられてしまって、誰にもひろったり探したりしてもらえたりしない、落しものみたいに)
『くすくす。ふふ。怖かってる怖がってる』
『本当だ。怖がってる。きっと泣いちゃうね』
そんなとってもかわいらしいひそひそ声が真っ暗闇のどこかから聞こえてきた。
小さな女の子『たち』の声だった。
「誰!! 姿を見せなさい!」
りんねは強い目をして、そう真っ暗闇に向かって大きな声で叫んだ。
すると真っ暗闇の中に変化が起きた。
ぽっと薄い紫色の小さな明かりがともったのだ。
そこには、小さな火の玉が風船みたいに浮かんでいた。
小さなゆらゆらとした薄い紫色の火の玉だった。
小さな薄い紫色の火の玉はゆっくりとりんねの近くまでふわふわと空中に浮かんだまま動いてやってきた。
そして、りんねのすぐ目の前までやってくるとそこでぴたっと動くことをやめる。
もしそこに火の玉があれば、熱いと感じるくらいの距離だった。(火の玉の明かりでりんねは自分の姿をようやく自分の目で見ることができるようになった)
でも、熱くない。
それは火の玉に見えたけど、近くでよく見ると火の玉ではなかった。
全然熱くない熱を持たない空中にふわふわと浮かんでいるゆらゆらとゆらめいている小さな火の玉。
それは、そう。……、まるで生まれてはじめて見る『たましい』のようだった。




