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狂気の始まり

掲載日:2026/05/31

15分短編です

 小学生のころに観た映画が、俺の原点だ。

 ピエロのようなメイク、派手な赤のジャケットに紫のズボンを履いた男が、愛する女を奪われ、殺された恨みから、爆弾を爆発させて、国家を揺るがす大事件を起こす。

 そんな悪役に俺は憧れた。彼のようになるには、まず爆弾を用意しなくてはいけない。幼心にそう考えた俺は、サンタへの手紙に“爆弾”と書いた。届いたのは爆弾を処理して世界を救うテレビゲームだった。サンタはこの世にいないことを知った。

 中学生のころ、国内で無差別連続殺人事件が起こった。町中でナイフを振り回して通行人を刺し、捕まった男の顔が、妙に焼き付いていた。次の事件を起こすのは俺だ。そう思ったのは確かだ。

 俺は、表向きは普通の人間を装った。まだ何もしていない時期から警察に目を付けられると仕事に支障をきたすからな。

 俺は勉強と偽って、図書館やネットから爆弾の作り方を探った。そう容易でないことはわかっていたけど「爆弾の作り方」なんて調べてもどうしようもないのはよくわかった。だから、爆弾を作るのではなく、装置を少しずつ作ることにした。

 まずはタイマーだ。文字盤がデジタルの物を映画でよく見るから、そのタイプの目覚まし時計を買ってもらった。解体して中身を知る。ここに配線を繋いで、時間が来たら起爆装置にスイッチが入るように改造すれば良い。なんだ、存外簡単じゃないか。

 そのためには機械工学の知識がないといけない。俺は親にねだって、高校も大学もその手の学校を探してもらった。良い調子だ。

 数学と物理が苦手な俺を先生も両親も止めたけど関係ない。俺はあの映画のダークヒーローになるんだ!

 機械についてを学ぶうち、爆弾を作るための知識、そして必要な材料についてが解ってきた。苦手な計算も、物理の知識も懸命に勉強した。

 大学を卒業するころ、ようやく爆弾第一号が完成した。危ないから火薬は付けずに、起爆装置が正常に作動するかをチェックする。

 時間になると、「ピーッ」と音をたてて、起爆装置のスイッチがカチッと音を立てた。まるで福音のようだと思った。

 やった、完成した!俺はついに爆弾を完成させたんだ!

 これでようやく、あのダークヒーローのように・・・。

 待てよ?あのダークヒーローは、愛する女性を金持ちに奪われて、殺された。だから犯行に及んだんだ。俺は間違っていた。俺のダークヒーローへの第一歩は爆弾を作ることじゃない、愛する女性を作ることだ!

 盲点だった。どの映画にも、必ずダークヒーローには愛する女性がついていた。

 焦るな、爆弾はもう準備できているんだ。町中で振り回すためのナイフだって準備できてる。

 最後のピースを手に入れに行かなければ!

 しかし今の今まで爆弾を作ることしか考えていなかったのに、俺に彼女なんてできるんだろうか。

 いや、弱音を吐いていてはだめだ。俺は世界一の大悪党、最高のダークヒーローになるんだ!自作の爆弾を爆発させて、爆風に背を向けてタバコを吸うんだ!

 俺はやるぞ!!


 俺は手始めにまず、マッチングアプリに登録した。



——待ってろよ!愛する人!——

俺の狂気の始まりはすぐそこだぜ!!

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