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サンタクロース泥棒

作者:
掲載日:2026/04/07

ぼくはクリスマスが好きだった。


十二月二十五日、朝に起きたとき、

枕元にプレゼントがそっと置かれている。


はやる気持ちを抑えて包装紙を開けると、

ぼくがサンタクロースにお願いしていた

プレゼントが入っている。


そんな朝が好きだった。


大人になってもその気持ちはなくならなかった。


なのでぼくは、

十二月二十四日に他人の家に侵入しては、

子どもの枕元にプレゼントを置き、

その代わりに別の家にある

同価値程度のものを取っていく、

ということを続けて行っていた。


よろしくないことは分かっていた。

ばれたらやめようと思っていたが、

どうにもやめられずに三年目に入り、


また少し遠くの家に入った。


静かな家だった。

明かりは消えている。


子ども部屋に行くと、そこに子どもがいた。


ベッドの上ではなく、下に。


そしてベッドには、

誰か知らない男が眠っていた。


「おまえは誰だ?」


驚きつつもそう言うと、

その男は起きて、こう言った。


「おれはサンタクロースが来なかった不公平だ。

だからこの子の代わりに、おれがもらおうとしているだけだ」


何を言っているのかも分からないが、

わたしはなぜか心から憤りを感じていた。


「プレゼントとは、善意と施しと、

裏のない見返りを求めない愛であって、

おまえのような大人のものではない。


子どものものだ」


その男は黙って聞いていたが、

何かを思ったかのように口を開いた。


「おれはそんなものを

与えられたことがない。


そんな子どもになりたいと

何度も思った。


なぜおれは与えられないのか疑問だった。


なぜおれは

大人であることを求められるのか?


一度大人になった人は

もう戻れないのか?」


わたしは何とも言えない気持ちになった。


それが正しいのか間違いなのかは分からない。

だが、彼の言っていることは本心で、

心からの叫びだった。


わたしがプレゼントをもらっていたのは、

七歳のころまでだった。


両親が離婚して、

わたしは母に引き取られることになった。


そこからは

プレゼントをもらえることはなくなった。


経済的に余裕がなくなったからだ。


求めることはなくなった。


わたしは


わたしは、

だから、だからこそ求める子どもの気持ちが

痛いほどに分かる。


求めても求めても

与えられない気持ちが。


だからわたしは

こんな奇行に走っていた。


決して常識的な行為ではないことを

分かっていながら繰り返していた」


わたしは彼にこう言った。


「言いたいことは分かったし、

気持ちも分かる。


しかし人に迷惑をかけてはいけない。


それは、わたしも同じだけれど」


そのとき、子どもが起きた。


どうやら

少し前から意識があったらしい


そのとき、子どもが起きた。


どうやら

少し前から意識があったらしい。


ベッドの下から顔を出し、

わたしと男を交互に見ている。


「……サンタさん?」


小さな声だった。


男は黙ったまま立っている。

わたしも言葉が出ない。


子どもは少し考えてから、

こう言った。


「ねえ」


「どうしてサンタさんは

二人いるの?」


その言葉を聞いた瞬間、

わたしははっとした。


部屋が妙に静かだった。


わたしはゆっくりと

ベッドの上を見た。


誰もいない。


さっきまで

そこに寝ていたはずの男は

消えていた。


慌ててベッドの下を見る。


そこにも

子どもはいなかった。


暗い床だけが

広がっている。


わたしは立ち尽くした。


気づく。


最初から

この部屋には


わたししかいなかった。


男も。


子どもも。


ここで交わされた言葉も。


すべて、

わたしの頭の中で

作られたものだった。


静かな子ども部屋で、

わたしは一人立っていた。


そして枕元を見る。


そこには

わたしが置いたプレゼントが

ひとつだけあった。


小さなタグがついている。


そこにはこう書かれていた。


「七歳のぼくへ」


その文字は、


わたしの字だった。

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