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TS剣神の徒然奇譚  作者:
第二幕『世界の脅威』

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第28話 決着の行方


 戦いは橋から移動し、森の中へ。

 フラムの拳は人の胴回りよりも太い大木をスポンジケーキのように砕き、木こりも真っ青な速度で次々と木をなぎ倒していく。しかし空を舞う蝶のように軽やかなコルトの前には、まるで当たる気がしない。


「そろそろ飽きたな」


 地面にクレーターを作った一撃を軽く後ろに動いて躱したコルトは、退屈そうにそう言って槍を強く握った。


 同時に輝く石突。

 色は青。その光はまるで穂先のように鋭く尖り、フラムの体を貫いた。


「むぅ……!!」

「これは効くだろ」


 石突の一撃はフラムの肩口に直撃、その体が大きく反れる。

 予想外の一撃に目を丸くしたフラムは、続けて放たれた石突の連続攻撃に反撃すら許されず滅多打ちにされてしまう。


星騎士(ステラ)並と聞いちゃいたが、当たらなきゃ意味ねぇな」


 降りしきる雨のような連続攻撃の中、コルトの言葉が森の静けさの中に溶け込んだ。


 何十本もの木々をなぎ倒そうとも、いくつものクレータを地面に作ろうとも、その全てを紙一重で避けきったコルトの余裕の言葉である。


 そして連続攻撃の最後、とどめを刺すかのようにコルトがほんの少しのためを入れた。


 石突の光はより強くなり、穂先のようになった光は鋭利に輝く。


「“銀箭”」


 コルトが放ったその技は、まさしくとどめに相応しい一撃だった。

 だが、その技はフラムの手に捕まれる。


「ッ!?」


 見切られた、そんな考えがコルトの脳裏に過ると同時に、彼女の獣のような双眸が彼を捉えた。


「あははは……楽しいねぇ」


 迸る赤い魔力。

 それは炎のように彼女の全身を包み込んでいく。


 恐ろし一撃が来る。

 回避するしかない。

 しかし回避するためには、槍を手放すしかない。


「“グランド――」


 フラムの拳が振り上げられた、その時だった。

 遠くから声が聞こえてきた。


「お頭! ベッツから報告だ! 国軍がこっちに来てる!」

「なぁにぃ!?」


 盗賊の一人がフラムへとそう報告すると、今の今まで立ち上っていた赤い魔力は霧のように消えてしまった。


 そして、不満を顔いっぱいに浮かべたまま、彼女は言う。


「……あたしはまだ負けてねーからな! 次会ったときは覚えてろよ!」


 そうしてフラムはなんとも間抜けな捨て台詞を吐いた後、部下と共に橋の方へと走って行ってしまった。そしてしばらく呆けていれば、橋の方から馬の嘶く音共に、一斉に街道から森の中へと集団で移動する盗賊たちの姿が見えた。


 そしてあとに残るのは、森の静けさと、戦場として破壊され尽くした景色ばかり。その中で立ち尽くしたコルトは、馬の走り去っていった方を見ながら小さく舌打ちをした。



 ◇



「周囲の安全は確保できました! 遅れてしまい申し訳ございません!」


 鈍色の鉄製ヘルメットに白色の軍服。腰には杖と剣を持った国軍の兵士たちが、橋を占領していた盗賊を追い払い、安全確保を宣言した。


「ようやく来たか!」

「おい! どうしてこんなに遅れたんだよ!」


 しかし、国軍の仕事はもちろん王国の治安の維持であるために、仕事が遅れてしまった今回は、立ち往生を食らっていた商人や旅人から非難の声が飛んできてしまっていた。


「平和だな」


 国軍へ詰め寄り、責任追及や賠償請求を行う彼らを見て、パルフェットはそう呟いた。ついでに干し肉をパクリ。塩気が効いててそれなりに美味しい仕上がりだ。


「あ、パルフェット! まだお昼の時間じゃないのに食べちゃダメって言ったでしょ!」

「む……い、いやこれはだな……腹が減っては戦はできぬというか……」

「問答無用! 計画的じゃない間食は経済的に健康的にも悪いんだからね!」

「あー! まだ食べかけなのにー!」


 食べていた干し肉を取られてしまったパルフェット。ぴょんぴょんと天高く上げられたそれを取ろうと飛ぶけれど、成長期のアネッサと比べてなんと背の低いことか。そもそもパルフェットは同年代の子供と比べて少し背が低い。


 だから干し肉を取り返すことは叶わず、アネッサからおしかりを受けてしまうパルフェットであった。


「なんだかだんだんシスターコナに似てきたな……」

「当然でしょ! シスターコナは私の憧れなんだから!」


 将来は絶対に男を尻に敷くタイプだと確信するパルフェットであった。


「おい、戻ったぞ」

「来たかコルト」


 気分を切り替えて、戻って来たコルトに向き直るパルフェット。


「その様子じゃ、水を差されたみたいだな」

「チッ、わかるのかよ」


 コルトの顔にはわかりやすく不満が溢れていて、パルフェットでなくとも今回の決着に納得が言っていないことがわかる顔色だ。果たして預けられた戦いに決着がつく日が来るのか、今はまだわからない。


「……しかし、国軍か。あの腕帯、王都勤務の兵隊だぞ。」

「ということは」


 国軍の兵隊の所属は王都。それが示すのはつまり――


「王都は近いな」


 魔王はもう、目と鼻の先だ。

 

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