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5


 まずは旅の途中で仕留めた魔物の素材を売りに、市場へ向かった。


 セシリカの町は、やはり市場も大きく活気がある。 

 いろんな服装の人が多く行き交う。威勢のよい声が響く。

 見慣れぬ異国の品、嗅ぎ慣れない香り、珍しい食材に、ポーチカは興味津々で露店を見て歩いた。

 


 素材の引取をする露店の店主は無愛想だった。

 しかし特に足元を見られるわけでもなく、相場の値段で何体分かの魔物の素材を買ってくれた。


「自分で仕留めたのか?」

 胡座をかいて大儀そうに金を準備しながら、店主はポーチカに尋ねた。

「頑張りましたけど、最後は連れの方にやってもらいました」

 正直に答える。店主の表情はぴくりともしない。

「ギルドに属さない、フリーの狩人か」

「ええまあ。ぼくではなくてその連れのほうがですね」

 皿に金を乗せて店主がポーチカに差し出した。

「解体が上手いな。処理が丁寧だ。また素材があったら引き取ると、その連れに伝えてくれ」

「……ありがとうございます!」

 どうやら魔物を解体したのは自分だとは思われていないらしいが、ポーチカはそれで満足だった。


 さて次は、肝心のニカゲ聖草の抽出液である。

 この間ガルデニアからもらったお金があれば、一瓶は無理でも半量くらいなら買えるのでは。

 そんな期待を胸にポーチカは取り扱っている店を探した。

 

 

 しかし。


「……ない」


 いくつかの露店を見たがない。町中の薬局にもなく、最後に望みをかけた今にも潰れそうな雑貨屋でも、ニカゲ聖草の抽出液は品切れだった。


「なんで……?」

 ニカゲ聖草の抽出液の置いてあった場所だけがぽっかりと空いた棚。

 呆然と立ち尽くすポーチカに、「何を探してるのかい」と店主の老婆が尋ねた。

 ポーチカが店に入っても何の反応もせず会計台でじっと本を読んでいただけに、ポーチカはびっくりした。

「あ、えっと、ニカゲ聖草の液を」

「それなら最近売り切れたねえ」と本に視線を落としたまま老婆が告げる。

「売り切れ? あの、いろんなお店を見たんですけど、どこにもないんですが」

「たぶん、狩人ギルドだろうねえ。あちこちで買い占めてるのかねえ」

「えっ」

 ポーチカは思わず声を上げた。

「ギルドはギルドの購入ルートがあるんですよね。一般の人向けのお店で買うのはだめなはずですよ」

 知ってて売ったのか。

 ポーチカはつい詰め寄った。

 老婆は細い目でポーチカを見上げる。

「ギルドの人かどうかなんて、いちいち確認しないからねえ」

「それは、そうでしょうけど」

 確かにニカゲ聖草を購入する時に身分証明などが求められているわけでもない。社会通念上のモラルの問題だ。

 しかし、ギルドは独自購入ルートで買った方が安いはずなのだ。こういう店で高値で買う理由がない。

「なんで買いに来たのがギルドの人だってわかるんですか」

「見た目とか喋り方がねえ。それに、ひとりで全部買っていったし。あんな馬鹿高いものたくさん使うのは、狩人ギルドくらいだろうからねえ」

「……」

 いまいち要領を得ない回答だ。

「どこの狩人ギルドなんですか? この町の常駐ギルドでしょうか」

「さあねえ」

 まあ、それを知ったからといってどうすることもできない、とポーチカは諦めの気分になる。

「……それじゃあ、いつごろ入荷するんですか?」 

 訊いても返事は「さあねえ」である。

 大きな溜息が出た。

 別の店で情報収集すべきだろう。

「……ありがとうございました」

 礼を告げて、棚に挟まれた細い通路を注意深く進んでポーチカは出口に戻ろうとすると、

「入荷状況なら、ソレイル商会に聞いた方がいいだろうねえ」

 随分と遅れたタイミングで老婆が言った。

「ソレイル商会、ですか」

「色んな商品の流通を管理してるところだからねえ」

 

 結局そうなるのか、とポーチカは思う。

 半ば、そんな予感もしていた。   

 商売を手広くやっているところならば、どこかで関わる可能性があってもおかしくはない。


 無礼、と言ってもいいくらいの態度で断ったばかりの相手のところにお願いしに行くのも気が引けるが……


 その後ポーチカは他の店に戻り、ニカゲ聖草が購入された時のことについて聞きに行った。意図的かはわからないが返事は曖昧で、購入者が狩人ギルドであるか含めて、これといった情報は得られなかった。

 


 ──一旦状況をユランさんに伝えて、行動を考えよう。


 

 夕暮れが迫る中、ポーチカは宿へと駆け戻った。

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