隣の子
「それじゃあ、恋バナでもしましょうか!」
それは、爆弾だった。
「……は?」
そりゃあこんな反応するよな……
「「いや、ほかの話でいいんじゃないか?」」
心做しか理仁の指先が、爽太の脚が、揺れている。
「あ、そうだ。クッキー作ったんだぜ!食べるか?」
カサっと図書館のような紙の香りがふと、香った。
紙袋を取り出し、ブロンドの縁どりがされている皿に盛りつける。
「あらぁ〜!ありがとう!…そこに置いておいて!」
「美味そうだな。」
目を逸らされた。なんで?
「…恋火が作ったのか?!すごいな!」
…話を逸らすのに失敗したがまあいい。
「んじゃ始めましょうか!えーっと…」
桃色と称された色の瞳が動く。
「じゃあ…爽太くん!好きな人いるでしょう?そのこのいっちばん可愛いと思ったところ、教えてくださいな!」
部屋の中の視線が一気に爽太に向く。
「なんで俺なの?!」
「いいから早くして。」
何故か私も気になる。
「なに?」
「何だ?」
「早く…」
「ええっと…誰にも言うなよ!…そうやって…」
「上目遣いで見てくるところ…」
爽太の顔が、これ程にないほど赤面している。
部屋の温度が1、2度変わった。
これが恋というものなのか、よく分からないな。
「あら、そういう所が好きなの?やだぁ、ピュアね!」
そう言って、今度は舌なめずりしながら私と理仁を品定めする。
「じゃあ…次は理仁くん!可愛いと思ったところ、教えて?」
そう名指しされた理仁は苦い薬を噛み締めるよな顔をしている気がするが。
「早くしろよ。」
「気になるわ。」
「理仁が言うんだよ。」
「…は?なんで俺が…まあいい。じゃあ、言うぞ。」
「……俺と話す時…髪を揺らしながら、笑ってるとこ。」
また、部屋の温度が変わった気がする。
「なんか…自分のことじゃないはずなのに聞いてると照れるな。」
顔が熱い。何故か。
熱でもあるのか?
「恋火、顔赤くなっちゃってるわよ〜?」
にやにやして、理仁と爽太に語りかける。
「2人とも…私の顔見つめてどうしたんだよ。」
そんなに見つめられてると、また照れるよ。
チク…タク…
そうこうしているうちに、もう日は暮れていた。
「あらぁ、もうこんな時間!そろそろ帰りましょ。」
見送るわと言って、夕日に照らされた長い睫毛が、揺れている。
「ああ、そうだな。」
3人で談笑しながら歩いていると。
「恋火!大変!私の手違いで…馬車がひとつしか手配出来なかったわ!」
口角があがり、まつ毛はきゅっと揺れている。
「は?!なんで?!じゃあ1人しか帰れないんじゃ…」
予想外の展開に困惑するのが普通だが、理仁たちは全く気にしていない。
「それなら…ーーー」
「「俺の隣に座ればいいだろ」」
黒い革靴の理仁が、白い紐靴の爽太が、言った。
そう言われて、馬車に押し込まれる。
「なんでこうなるんだよ…」
これで私は強制的に、「2人の隣の子」になった。
「おい、恋火。俺の隣にもっと寄れ。」
「ねえ、恋火。俺の膝に座らない?」
きららと明るい笑顔の爽太に、理仁は一つの闇を注いだ。
お久しぶりです。久世です。
いつもご覧頂きありがとうございます。
体調を崩してしまいました。申し訳ございません。
皆様も気をつけていただきたいです。




