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虹色

学校が始まってから1週間経った。

特に何事もなく和平を保っている。他校では、位の高い階級の人間に毒を盛ったやらあったようだ。他校だから問題ないが。


(思っていたより遠いんだなぁ)


四つの国に囲まれてできているこの学校は、近く見えて実はどこからでもとんでもなく遠いのだ。

だいたいは馬車や馬、車などを使って登校する人が多いのだが、たまにヘリや飛行機などを使って登校するお嬢様、お坊ちゃまがたくさんいる。

もう少し近くに建設してくれれば良かったのに。

そう思う。

毎日の登校が長距離移動のため、車酔いがひどいと

最悪休む場合もあるのが現状だ。

そういえばここの学校の理事長は誰か、関係者以外教えてもらえないらしい。余計に気になる。

馬車酔いしたので窓を開けた。

窓のカーテンを開けると、目が合っていけない人と目が合ってしまった。


(爽太と理仁?!)


あちらも驚いているようで、爽太は呑気に手を振っている。理仁はそっぽを向いて寝ているらしい。

あの方々の家も遠いようで、少し疲れた顔をしている。

爽太達の馬車は、紺色とワインレッドを基調としたシックなデザインだった。派手だがどこか上品だ。


(金かかってそうだなぁ)


大粒の真珠をつけたままなんて物騒だ。

誰かが盗んでしまうだろう。

皇族だからできることだろう。


「あなた、15歳でしょう?」


周りの姫達や仕えている姫に、年下として嘲笑られたことも少なくはない。

まだ15歳なので、政治に口出しはできないが、生まれながらに持った地位でこうなっている。

階級的にも財力的にも愛華が勝るのだ。

ふと、朝日が映る窓に目をやった。

窓に自分が映っていた。

馬鹿にされたのは地位だけでなく容姿まで。もう他国と手を結んで婚約していてもおかしくない年齢。


いつまで経っても婚約できない自分の容姿を憎んで憎んでたまらなかった。


(美的にも、負けてるな)


そう思いながら、隣の長い睫毛で覆われた瞳を見ていた。




〇〇〇




「やっと着いたー、てか、寝てんの?起きろよー」


「んもぉーだめだよ…くん・・・」


(なんて言ったのかな)

そうぼやきながら、愛華を無理やり起こしていると


「祟りだ!呪われている!炎の色が、変わるなんて……ありえない!」

「ついに霊障がおこったんだ!」


ぎゃあぎゃあ騒ぎたてているのは、大きな大人だ。

子供は、もうとっくに車、馬車に乗り込んでいるようだった。


(放火か?でも、どこで火を起こした。建物は木造か?それでも、霊障はありえない。)


そう独り言を言っていると、ひとつのものに目がついた。

「なんだ?これ」

麻の袋に粉が入っている。

こぼれてしまっているが小麦色で、粒が大きい。すんすんと匂いを嗅いでみるが、ほのかに異国の香りがした。

ある程度の予想はついていたので、指につけて舐めた。


「酸っぱい、謎の味だねぇ」

気がついたら、隣に爽太が座っていた。


「うわぁ!!なんだよ!!びっくりしたじゃん……」

「火事騒ぎは気にならないの?」

気になってるよと返して、また粉をいじる。

「不思議な味だね。こんな味僕の国にはあまりないから」

「これはシトロンと言う名前の檸檬だ。私の国でも輸入されている」


知らないのか?金持ちの間で話題なはずだが。


「柑橘系は温暖な気候だと作れるけど……僕の国では作れないかもなぁ……輸入かなぁ」


爽太の国は、とても暖かい気候だが、砂漠や氷河など寒暖差が多い。寒暖差に敏感なシトロンは育てられないという。

紅茶を注いでシトロン、いわゆるレモン入り蜂蜜を混ぜて飲むと暖まるのだ。

ただ、食べすぎは毒にもなる。これはどの食べ物にも該当する。


「食べ過ぎは歯に良くないからな」


爽太の白い歯をみて警告する。

すぐ食べられないと知った爽太はしゅんとしている。

なんか気の毒なので、ご褒美代わりにこう言った。


「家にあるから飲ませてやるよ。あ、行かないとじゃない?」


爽太は目を輝かせて言った。


「ほんとに?やったー!」


いつも少し大人の笑みをしているその男は、子供になったように無邪気に笑った。

それほど感謝しているのか何故か抱きついてきた。


「ちょっ、苦し……」


嗅ぎなれない柔軟剤のいい香りがしてドキッとする。

爽太も馬鹿力なので潰されそうになっていると


「おい。困ってんだろ。」


理仁はそう言って。爽太のセンター分けの前髪と、少し伸ばして綺麗に束ねられている髪を解いた。


「そこら辺の建物にも燃え移ってるぞ。」


理仁は恋火にこのままじゃ焦げるぞと言った。


「ひどい!理仁!僕も連れてってよ!」


理仁はなんやかんや爽太を放っておけないのか、ちゃんと馬車に乗せてやると言っていた。

爽太とシトロンの話に夢中になっていた。

よって、木造の建物には目もくれなかった。





「早く避難を!」

かん高い大人の声が響く。

燃え盛る倉庫を見つめている。


「炎色反応か?」

隣の理仁に尋ねる。


「ああ。燃えたのは食料庫と鉱物庫だからな」

理仁の話によると放火の可能性が高いらしい。


「なに!何があったの?!」


放置していた愛華も我に返ったようで、焦り始めている。

帰りの馬車に乗りながら、遠目に見える学園を眺めていた。

「虹色の炎って、どういうこと!?みんな無事なの?!」

1人が暴れているだけなのにこんなにも馬車内が暑くなるなんてな、と呟く。


「火事になったから休校なの!」


「えっえっえ!!」

わたわたしている。


「やだぁやだ!!今日から楽しく青春するのぉ!」


「そんなこと言われても…」


心配そうにおろおろする爽太が気の毒なのでわけを説明する。


「愛華はパニックになると叫ぶので早めに対処しないと大変なことになる」


「お前も大変なんだな」

何故か2人に尊敬された。


「もうーめんどくせぇなぁ!」


「放火されたから火事なの!だから今は休校なの!!」

馬車の中なので控えめに注意。


「あら、そうだったの。早く言ってくれれば良かったのに。申し訳ないわ。」

スンと態度を変える愛華に少しイライラした。

が、またうるさくなって苦情が来ても困るので一旦飲み込んだ。


「まあ、無理ないよな。虹色の炎なんて」


霊障呪いと噂される、虹色の事件は、数日後解き明かされることとなる。




続く

大変申し訳ないんですが、誤字脱字が見つかったので

再編集させて頂きました。

編集前の作品を読んでくださった方々、ありがとうございました。

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