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IV 革命戦士ウルド


「いーい? ウルドちゃん。私が王太子に近付いたのは王太子を堕落させるためだったの」

「は、はぁ」


 私が連れて来られたのは地下の薄汚いアジトでした。二十人は居るごろつきのような見た目の方々に囲まれて、私はリズリサにこれまでの経緯と、この団体の主義思想について教え込まれています。


「私達平民派は王族による血統を元にした統治を否定するわ。貴族に流れているという青い血がなんぼのものよ。良い? 王族はすぐに色ボケに走るし、その取り巻きも誘惑でイチコロよ。そんな人達に政治は任せられない」

「は、はぁ」


 王族が色ボケに走るのは恋愛小説の設定の話では? とツッコミたくなるのを必死に留めます。ここで下手なツッコミをすれば命がありません。それにこれは――。


(悪名高きイセ•カイージンの影響ですね)


 私はすぐさまこの思想の元となった人達に気がつきました。イセ•カイージンとは、この世界とは違う世界からやって来たと頑なに主張する頭の少しおかしな人達のことです。この人達の良い面としては、素晴らしいアイディアや考えを持って、新製品を開発するなど天才的な閃きを見せる人が多いところです。しかし、一方で『ロリこそ正義』や『男女平等参画社会』など妙な主義主張を並べ立ててデモを行うなど、過激な思想を持った狂人が出ることでも知られていました。


(トランクス伯爵が偲ばれますね)


 二年前に他界したトランクス伯爵は、一番成功したイセ•カイージンと呼ばれていました。政治的にも中立で、それまでにあった不便で不衛生な下着を撤廃し、今の機能的な下着を発明しました。彼は人格者でもあり、暴走しがちなイセ•カイージン達の抑え役にもなっていたのだと聞いたことがあります。


 しかし彼亡き後、残されたイセ•カイージン達は心の支えを失い、思うがままの正義を振り翳しているといいます。


(私には関係のない世界の話だと思ってたんですけどねぇ)


 きっとリズリサ達もイセ•カイージン達の極端な思想に当てられているのだと思います。何故ならイセ•カイージン達はこの血統を重んじるこの世界で殆どの人達が平民だからです。彼等は口を揃えて”夢にまで見た異世界転生で前世以下の生活を送るなんて耐えられない”と言いますが、私には何のことかよくわかりませんでした。


(私にわかるのは、あの王太子御乱心事件(テンプレ)が嘘っぱちであった場合、王太子くんが可哀想だなということくらいですかね)


「じゃあ、王太子くんのことはお遊びだったんですかぁ?」

「そっ、それは……」


 リズリサはしどろもどろになりながら小さな声で何かを言い始めました。


「遊びだったとかそんな訳はなくてぇ……その……」


 私はすぐに言いたいことがわかりました!

 そう、確かに王太子はパッとしなかったのです。


「確かに王太子は第二王子に比べると顔だけって感じがしましたね。王太子は金髪碧眼で超イケメンなんですけど、周りの取り巻きが超頭いい氷の参謀とハイパー肉体系マッチョ、コミュ力お化けのホストにミステリアス錬金術師! 取り巻きの皆さんは勿論顔がいい+特技なのに王太子なんにも出来なかったですもんね〜」


 テストの点数が張り出される学園だったので、私は知っています。取り巻き達は皆ほぼ満点にも関わらず、王太子だけがいつも平均点以下で親近感を覚えていたのです。


「庶民派王太子って言われていただけあります、本当に」


 王太子は失脚したということですから、取り巻きもきっと誰も居なくなったのでしょう。可哀想な王太子くん。


(氷の参謀も王太子のことは見捨てたってことですよね)


「クリスは……クリスはっ!!」


 クリスというのは王太子のことです。リズリサは今にも泣きそうな顔で私の手を無理やり引っ張ってどこかに連れていきます。ごろつきの方々がそれを咎めました。


「お嬢! どこへ!」

「教育よ! 二人きりでみっちり教えを叩き込んでやるわ」


(えっ)


 まだ怪訝そうな顔をしているごろつきに向かって、中指を立てたリズリサは劇画調の顔をしています。


「骨の髄までわからせてやるっていってるの!」

(えっえっ)


「流石はお嬢!」

「ひゅー!!」

「どこまでも着いていきます!」


(私、もしかしなくても、何かやらかしてしまいました〜!?!?)



「うわぁぁぁぁああん!! 違うの! クリスはクリスで頑張ってたの! クリスのことを笑わないで!」


 私が連れてこられたのは、リズリサの私室のようでした。この薄汚れた組織の中でピンクの壁紙の個室が与えられているところを見ると、リズリサがいかにこの組織で特別な存在かということがわかります。


「私、実は男爵家に養子縁組をしてもらっただけの平民なの。でも、クリスはそんな私に対しても優しくしてくれたわ。クリスは確かに取り巻きの人達に比べたら平凡かもしれない。でも、人一倍人の痛みがわかる優しい人なの。なのっ!」


 リズリサは泣きながらそう訴えました。


「……。」

(あれ、人の痛みがわかる優しい人って人前で婚約破棄しますっけ)


 私の思う〈優しい〉、とリズリサの思う〈優しい〉は違うかもしれないな感じました。しかし、リズリサは私の両の手をがっしりと掴んで離しません。


「お願い! 私、クリスを助けたい……! あなたの行動力には在学中から目を付けていたの。まさか氷の参謀のズボンを下ろすなんて、凄い行動力だわ。本当は何か彼に恨みがあるのよね!」

「いえ、ありませんけど」

「そうよね、あの冷徹男。本当に最低よね、わかるぅ!」

(あっ、全然話聞いてもらえません!)


 リズリサは何度も深く頷きながら私の両足首におもりを巻きました。


「????」


「うんうん、大丈夫! 私がランランの暗殺のチャンスをあげるわ! だから、一緒に鍛えましょうね!」


 こうして私は革命戦士の一人として、王太子クリスの奪還と氷の参謀ランティス氏に天誅を加えるべく訓練に参加することになったのです。


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