はじめの方
プロットとかは作ってません。完全に思いつきで、キャラ達が動きたいように動き回っている姿を、ただ私が描写しているだけです。ハチャメチャでも許してください。
溺れそうになっていた。
部屋に響くのは、掛け時計が秒針を刻む音。
窓から漏れてくる光がうるさい。だけど、まだ暖かい光のような気がした。もっとうるさいのは、ブルーライトだ。目の奥をトゲトゲした光が突き刺す。
「別れたよ」
それだけ打って、紙飛行機みたいなマークを押してそれっきり。バイブレーションは切っているから、通知は音、肌では感じない。裏を向いているスマホの、地面とスマホケースのほんの少しの隙間から見える点滅だけが、私に届かない慰めの言葉を知らせているらしい。だけど、それでも目にはトゲトゲ突き刺さる。
薄々、どこかで、そろそろ振られるんじゃないかって思ってた。けど気付かないふりをして、友達にも順調だってフリをしていた。多分知ってたのは私と、彼と、あと神様くらいだった。
でも、こんなに辛くなっちゃうって知ってたのは、たぶん神様くらいだった。
一年半続いた。出会いから数えたら、丸二年くらいだ。夏休み、私が働いていたカフェに新人として来たのが同い年、二十歳の彼だった。だけど、新人のくせにすごく仕事が出来た。
新人のくせに、直ぐにオーダーの取り方を覚えるし、レジの打ち方だって一回教えたらすぐだった。知らない間にキッチンに入って、ちょっとした料理まで作ってた。しかも、盛りつけが綺麗で本当に美味しそうだった。
話を聞いてみると、どうやら別の店で働いていたそうだった。私の半年で作り上げた威厳は、これで何とか保たれたらしかった。
でも、やっぱり彼はできる人だった。私は未だに、先輩に仕事を教わりに行くのにも緊張するというのに、彼はそんな素振りは全然見せなかった。私のできないことを、入りたての彼がどんどんこなしていく。すごいなぁと思った。私はそんな彼の姿に恋をしてしまったらしかった。チョロいなぁ、私。
とは言っても、私の性格で、彼を何とかしようだなんて思わなかった。今までだって、叶わぬ恋もしてきたし、逆に棚からぼたもち的な感じで恋人ができても、上手くいかなかったりもした。恋の儚さは分かってたつもりでいたし、今回の恋もそんな予感を、儚さを感じさせるような恋だった。だから眺めてるだけで、あとちょっと友達に「かっこいい人いるんだ~」って言うだけでよかった。良くも悪くも、これまで通りの、いつも通りの私で居られた。でも、そんな日々も今回ばかりは少しづつ変わっていった。
その時の季節限定商品はモンブラン。きっかけは、イルカショーの話だった。幼稚園児の姪っ子が、遠足で行った水族館のイルカショーにどハマりして、しきりに「すいぞっかんにつれていけー! 」とねだり、しまいには私にその嘆願が届くほどになったのだ。私はそのエピソードを、溢れんばかりの姪っ子の可愛らしさが伝わるように、その日シフトが被った人達に話した。その中に彼もいた。
彼とは、歳が同じということもあってシフトが被っている日にはよく話す、Theバイト先の友達くらいの関係値を築いていた。もちろんプライベートで会ったこともないし、LINEも交換していない。強いて言うなら、みんなで一緒に交換しようという場を駆使して獲得した、Instagramの相互フォローだけだった。
そんな関係値の彼が、この水族館の話題に、いつにも増して質問を重ねてきた。
「姪っ子ちゃんはどこの水族館に行ったの? 」「イルカショー、どんな感じって言ってた? 」「他にその水族館の見どころとかって分かる? 」
いつになくグイグイ来る彼に、少し戸惑いながらも、姪っ子のたどたどしい言葉と、姉のその翻訳の記憶を必死に引っ張り出した。しかし、全ての質問に対して、彼の納得いく答えを出すことは出来なかった。そしてついに、
「また、聞いてもいい?その話」
と言われて一応の決着は着いた。そう思っていた。
退勤して、自転車を漕いで家に着いた時、スマホの通知画面を見て、私はそのままスマホを落とす勢いでそれはもう驚いた。
彼が私のInstagramのアカウントにDMをしてきていたのだった。
今は2/10のam.2:44です。眠いのでまた気が向いた時に続きを描きます。