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私のたいせつな全て

作者: リーラー

遠い未来のあるところに、ドルチェという魔女が旅をしていました。

埋葬の旅を…

この世界が私の魔力で腐敗して

しまってから何十年がたっただろう?

私がゾンビにしてしまった人たちをひたすらに埋葬していた。

「これで、本当に最後ね…私に魔力を与えた元凶

 あなたを埋葬して私の旅は終わりを迎える。

 醜い姿になったわねミーチェ、私と契約したときはもっと白くて

 毛並みが美しく、そして可愛い声で鳴いていたのに」

今まで、やってきたようにゆっくりと埋葬を始める。

「これからあなたが向かう場所、そこは地獄よ…

 まあ、魔力の塊であるあなたに苦しみなんてないだろうけどね…

 せめてそこで償いなさい」

ああ、彼らが来る。

彼らは、本当に腐ってしまった者を地獄に届ける案内人。

犯罪者をよく埋葬するときに見かける彼らだが、いつも

見た目が違っている。

「今日は黒い馬に乗った死神さんか、よかったわね

 ミーチェ、私が見て来た中でもトップクラスにかっこいいわよ?」

死神はゆっくりと、私達に近づく。

「おやすみなさい、ドルチェ殿」

死神は私の名前を呼んだ。

何十年前のあの日の記憶が頭をよぎる。

ああ、そうかあのときの契約内容…ミーチェと結んだ大切な約束。

汝は主人の魔力を完全に引き継ぐ。

汝は私、主人はミーチェ…つまり、私はこの世界を腐敗させた

原因の魔力を完全に引き継いだ魔女……許されるわけがない。

肺の中の空気が全て絶望に変わっていくのを感じる。

私は、ゆっくりと目を閉じ息をするのをやめた。


「ドルチェ!いるか!」

「パパ!私はここよ!怖いよ!助けて!」

「ドルチェ!ドルチェ!!」

「…!ここは、確か私は死神に連れてかれて…ということは、ここは地獄?」

目を覚まし周りを見渡すと、部屋にはシャンデリアや

オシャレな絵画、窓からは日がさしていて

とても地獄とは思えなかった。

「ここは、どこなの?キレイな場所だけど」

ガシャリ!

ベットから降りようとすると、足から

金属音が鳴り響いた。

「ああ、そうかやっぱり私は罪人なんだ…」

私の足には、足枷がつけられていた。

これは、私が魔力で飛べないようにするためなのだろう。

「神様…もし本当にいるのなら、今度こそ  

 友をみんなを幸せにさせてください」

窓の日にそう告げる。

「ならば、やってみるといい、君の本心はきっとみんなを本気で笑わせたいだけなのだろう?そこは決して地獄なんかではない、

君が目を閉じて自分の部屋に閉じ籠っているだけだ、いつでも抜け出せるそしてまた始められる。新たな旅を…覚悟があるなら進めばいい、勇気があるなら戻るといい、

みんなを幸せにできるなら自分をしんじればいい、さあ、君の行動をずっと見ているよ

行ってらっしゃい」

神は本当にいた…私の勘違いなのかもしれないが確かに声が聴こえた。

「さあ、行こうまだ私の旅は…仕事は終わってない、この足枷も

 私が作り出した戒め……」

私は足枷に手をかざしスライドさせる。

「ほら、これで私は自由…取り戻しに行こう大切な仲間を」

私は窓ガラスを突き破り光の中に飛び込んでいった。


「私は…ここは?…私の家?」

昔住んでいた私の家、ミーチェと契約した場所でもある。

部屋には、勉強机にベットや鏡、大きなぬいぐるみがあった。

「でも、この部屋は確か契約のときに闇に飲まれたはずじゃ?

 にしてもなぜか足が自由に動かないわ、視線も低い」

私は、鏡を覗き込むそこには小さな頃の私がいた。

「うそ…まさか時が戻ったと言うの?」

そうだ!確か机の中に誕生日カードが入っていたはずそれで自分の年齢が確認できる。

私は机の引き出しを開け、一番最新の誕生日カードを開く。

「ハッピーバースデー、ドルチェ

 12歳になったな、これからの成長が楽しみだ。

 君の親愛なる父、フィーネより 11月16日」

なるほど、私は12歳に戻ったのかつまりミーチェと契約したのは

13歳の誕生日、時計を確認すると今は10月27日 日曜日…

そして、明日は学校のはず。

「もうすぐで、ミーチェが来る…その前にミーチェを陥れないと

 また、あんな悲劇が起こってしまう…とりあえず今日は寝よう」

 明日からの一週間に備え私は、再び眠りについた。

スマホから、目覚ましの音が聞こえる。

どうやら、このときの私はセットしたままポケットに入れていたようだ。

「そうそう、お母さんがいつも私の服を選択してここにおいてくれる」

今日は、10月にしては温かい日だそうだ。

私はタイツを履き、ドレス風のワンピースを着る。

確かこの季節から私は朝飯を食べていなかったはずだ。

「早く、友達に会いに行こう」

私は、白銀の髪をクシでとかす。

ショートにされてあるから、いつもよりとかす時間が減っていた。

「魔女になると、髪を長くする必要があるから大変だったのよね」

強大な魔力を扱う魔女にとって、髪は寿命を削らないためには

必須のものだった。

「えーと、今は6時28分すぐ出よう」

出発まであと、一時間の余裕はあるが早く友達とあいたかった。

「お母さんおはよう」

「あら、今日は早いのね?」

「まあね、こんなに素敵なドレス着たの久しぶりだからちょっと気分上がっちゃって」

「うーんと?2日前も同じの着たような気がするけど?」

不思議そうに母は私のことを見る。

こんなふうに、私の事を見てくれるのも久しぶりで

この世の全ての行動が嬉しかった。

「ああ、そうだったわね…この服すっごく素敵だからいつでも

 喜べちゃう」

「そうなのね、良かったわ、今日もご飯食べないの?」

母はいつも私のことを心配していたのだろう、でも私は

全てを幸せにするんだ、食べよう。

「何か食べてもいいかしら?」

「…!ええ、もちろん!ちょっと待ってね今用意するわ」

母はすぐに厨房に向かって走り出した。

私は厨房のカウンターに座る。

「良かった、今日は少し多めにご飯作っちゃって困ってたのはい、これ先に食べてて」

カウンターに出されたのは、キャベツや

ベーコン、卵などがたくさん挟まれてある

サンドイッチだった。

「いただきます!」

私は、一口サンドイッチを頬張ると

久々の母の味に感動して涙が出そうだった。

「どうしたの?目潤ませて?何か嫌なことでもあったの?」

「いいや、何でもない…ありがとうお母さん」

夢中でサンドイッチを食べていると、目の前にコーヒーが置かれた。

「…!」

「ほら、飲みなさい…ドルチェが教えてくれたコーヒーの淹れ方ずっと練習してきたの

しっかりと、カップも暖めて、豆も蒸らして

お湯の温度は70~80度はにしてしっかり淹れたの」

完璧、私が何十年前に教えた方法と同じだ。

私はカップを持ち上げゆっくりと味わう。

酸味と苦味のバランスがよくとれていて

味わい深い、この特徴の豆といったら…

「これ、ブルーマウンテンでしょ?

 結構高い豆なのに用意してくれたの?」

「あなた最近ご飯食べなくなったでしょ?

 元気付けようと思って買ってきたの」

なるほど、そこまで母は私を思ってくれてたんだ。

「て言うか、よく豆の名前当てられたわね?」

「当たり前よ、豆が私に自己紹介してくれるんだもの」

「ふーん」

きっと、私からコーヒーを見分けるコツを聞こうとしたんだろう、でもそれは私にもわからないコーヒーと言うのは対話をしながら楽しむものなのだから。

「でも、お母さんひとつだけわかることがあるのよ」

「うん?何?」

それは…

「お母さんの愛がいっぱいつまってるってことよ」

「フフ、なによそれ?全く今日はおかしいねあなた、愛か…そうね」

こんなに楽しそうな母を見るのは本当に久々だった。

「おっと、もうこんな時間

 行ってくるわね!」

「行ってらっしゃい、気を付けるのよ!」

「はーい!」

私はカバンを持ち、玄関のドアを開ける。

暖かくも少し乾いた、空気が頬に心地よく

あたった。

「あ!」

私は玄関に戻る。

「あら、どうしたの?」

「日焼け止め忘れてた!」

「あなたらしくないわね、ほら使いなさい」

母は、すぐに日焼け止めを差し出すと

私に塗ってくれた。

母の甘い匂いが全身を包む。

「ありがとう、じゃ!行ってくるね!」

私は日傘を持つと玄関を再び開けた。

「本当に日が嫌いなのね、じゃ、今度こそ気をつけていってらっしゃーい」

玄関を再び開け、傘をさす。

「風が心地良いわね」

さて、いろんな人を幸せにしにいこう。

きっとあんなふうになったのは、他の人を幸せにできずに私が私欲の

ために魔力を使ったのだから。

「ドルチェー!」

「あ!ハヤカ!おはよう!」

ハヤカは、隣の家に住んでいる幼馴染だ…

頭の中に埋葬したときの記憶が蘇る。

「どうしたの?なんか辛いことでもあったの?そんなにかわいい

 服着てるのに台無しだよ?」

「いいや、何でもないの…それよりハヤカ、最近学校どう?

 何かやり残したことはない?もうすぐ卒業だね?」

「もう〜、落ち着いて今日なんか変だよ?

 まあ、いつものことか…やり残したことか、ひとつあるかな」

ハヤカのやり残したことといえば…カヤトくんか。

ハヤカはゾンビになるときもカヤトくんと一緒にいた、きっと大好きなんだろう。

「そうか、できるといいね…」

「もう!暗くなったり明るくなったり意味わからないな〜」

そうこうしているうちに学校についた、

ハヤカの悩みは魔女にならないと、難しそうだ。

「あ!おはよう!ドルチェちゃん!ハヤカちゃん!」

「お!カノンおはよう!」

カノンは頭が良くて、ピアノをやっていた。

「カノンはさ、何か悩んでることはない?」

「え?急に?うん〜、音楽を一緒にやってくれる人がいないことかな」

カノンの悩みは、今の私でも叶えられそうだ。

二十年間ぐらい、バイオリンを引きながら旅をしたことがある。

バイオリンは、母がやっているからきっと貸してくれるだろう。

「そうか、でもいいな〜今度の合唱祭カノンがピアノ弾くんでしょ?

 歌わなくていいじゃない」

ああ、確かここでカノンが少し不機嫌になるんだ止めなくては

「ちょっと、カノンだって歌いたいかもしれないでしょ?

 そういうこと言うのやめなよ?」

「ドルチェちゃんいいの、そう思われるのは慣れてるから…

 ほら、笑って?そんな素敵な服着てるんだからさ」

カノンは空元気で笑っているようだった、でも前みたいに

黙ってうつむくだけではなくなっていた。

少しは支えに慣れたようだ。

「ほら、行こ?昇降口開いたよ?」

三人で並んで歩くのも久しぶりだった。

教室に着くと、荷物やカバンを片して辺りを見回した。

カノンは、電子ピアノで練習をしていて、ハヤカは席に向かって

絵を書いていた、ハヤカを観察していると時々ハヤカはカヤトくんの方を

見ている。

カヤトくんの方も、他の男子たちと話しながら時々ハヤカを見ているようだ。

邪魔はしたくない、カノンの練習に付き合ってあげよう。

「うーんこの音じゃないな〜」

「どうしたの?」

「ああ、ドルチェちゃん実はサビのところの音程がわからなくなっちゃって

 楽譜通りに弾いてるんだけどなんか音外れちゃうの」

「ちょっといい?」

カノンの横に座り、好きなジャズのワンフレーズを弾いてみる。

電子ピアノからなったのは私の知っている音ではなかった。

「楽譜やカノンが悪い訳じゃないね、

 悪いのはこのピアノよ」

「そう!それより!すごいね!?

 ドルチェちゃんピアノ弾けたんだ!」

横ではしゃぐカノンにうなずきつつ、

私は電子ピアノをチューニングした。

「よし、これで多分弾けるよ」

「確認のために一緒に弾いてくれる?」

「ええ、もちろん」

カノンと私は息をあわせ最初のパートを弾いていく。

小学生に弾かせるには結構ハードルの高い

アップテンポの曲だ。

最後の合唱際だから、みんなで好きな曲を選んでいいと言われ、選ばれたのは少し古めのアニメの主題歌らしい。

でも、合唱際にあまりに似合わない

歌詞と曲調だ…ひとつ評価できるならユカイなこのクラスにあっていることだ。

最後のパートを弾き終え、カノンが私に抱きついてきた。

「ありがとう、ドルチェちゃん…」

カノンは本当に幸せそうに笑っている。

その時クラスから拍手が飛び交った。

「すごいな!ドルチェ!カノン!」

「ピアノ賞とれるんじゃない?!」

「ドルチェお前ピアノ弾けたのかよ!?」

いつの間にか、先生も教室に入ってきていたようで、拍手をしていた。

「ドルチェ、カノン少し話がある。

 来てくれ」

私はカノンと顔を見合せ、少し不安そうなカノンを抱きながら先生の元へ歩く。

別の教室に入ると、そこにはピアノや

バイオリン、ビオラ、フルート、トロンボーンなどがいっぱいおいてあった。

どうやらここは、音楽準備室のようだ。

「座ってくれ」

私はカノンと一緒に座る。

「カノンの代わりにピアノを弾いてくれないか?」

突然の先生の言葉に私は目を見開く。

こんなことは起こらなかったはず…

つまりは、私が一緒にカノンとピアノを弾いたからこんな事が起こったのか。

「どうしてですか?カノンはこんなに楽しそうにピアノを弾いていたのに…どうして?」

「違うのドルチェちゃん…聞いて?…

 私ね、耐えれなかったの……いつも

 楽しく弾けてたのに、いざとなると

 指が止まって…なにも考えれなくなって…」

カノンは、泣きながら事情を話してくれる。

でも、カノンは私と弾いてるとき本当に楽しそうだった、私と弾けばカノンは幸せになれるはず。

「わかったわ、カノン…でも、そのまま逃げてちゃダメ、私がついてあげるだからカノンは本当の音楽の楽しさを思い出して?

誰かのために弾くんじゃない、あなたの…カノンのために弾くの、いい?」

カノンは、うつむきながらわずかにうなずいた。

「先生、私はカノンと一緒に演奏します

 ただし、私はピアノを弾きません」

「え?じゃあどうするって言うんだ?」

私は、未来でずっと使っていたバイオリンを持ち上げる。

「ちょっと待ってそれはチューニングが少し難しいんだ」

ラを弾き、A D G Eの順番でチューニングをする。

二十年近くに使っているのだ、我が子のように素直に扱える…まあこのバイオリンは私のことなど知らないが魔女だった、頃によく弾いたジャズの曲調は今でも耳に残ってる。

そして、このジャンルの音楽はカノンが一番好きなもの、埋葬するときにも弾いてあげた

「ドルチェちゃん…」

カノンは笑って、立ち上がるとピアノに向かって歩き出した。

カノンはピアノに向かって座るとすぐに、

構える。

おそらく次のパートで入るばず、

私は入りやすいように、ゆっくりにして

入るタイミングで二回うなずく。

完璧なタイミングで、ピアノが弾かれる。

その中に入ることのない音が聞こえてくる。

音のなる方を見ると、先生がトロンボーンを吹いていた。

先生はウインクをすると、自然と曲の中に入ってくる。

サビを弾き終わり、最後の締めをすると

カノンが笑顔で近づいてきた。

「ドルチェちゃん本当にありがとう…」

「感謝するのは早いよまだ本番があるんだから」

「ドルチェ、カノン、俺は先生という立場上一緒に演奏することは出来ない、だが練習に付き合おう…そしてドルチェそのバイオリンはお前が持ってろ、多分お前が一番そいつをうまく使える、安心しろ先生が新しいバイオリンを購入しとくからバレはしないよ」

このバイオリンが私のものか…これからもよろしくね、まあ君は私と初対面だと思うけどね。

「さあ、戻ろうみんなに伝えなきゃいけないだろ?」

「先生!その前に、このバイオリンはみんなの許可がないと持てません、

 だから、みんなが私の事を演奏者として認めてくれたらみんなの前で

 このバイオリンを渡してください」

「わかった、そうしよう。

私とカノンは、先生についていく。

教室に入り、電子ピアノの電源を消し忘れていたので急いで消した。

「さあ、みんな座って!朝の会始めるから!」

「はーい!」

みんな座って、教卓に目線を向ける。

学校なんて何十年ぶりだろう…

「じゃあ、みんなに伝えなきゃいけないことがありまーす!ささ、ドルチェ、カノン出てきて」

「はい…」

「ほら、元気だして?私に言ってくれたでしょ?笑って?」

カノンは空元気じゃなくて今度は本心から笑っているような気がした。

「はい、皆さんにお伝えすることがあります」

「え?なに?このタイミングで転校とか?」

「いや、もしかして何かやらかしたとか?」

「それだったら、ハヤカもあそこにいるだろ?」

まあ、こんな雰囲気なんだからそうなるわよね。

「はいはい、静かにして!じゃ、カノン、ドルチェ頼んだよ」

私は息を吐き、心を落ち着かせる。

「今回の合唱祭私は、カノンさんと一緒に演奏させていただきます」

「おいおい、なんだそんなことかよ、驚かせやがって」

「朝の演奏も上手だったしいいんじゃない?」

「さっきみたいに、ピアノを二人で演奏するってこと?

 それってなんかずるくない?」

「いいえ!私は、ピアノは弾きません!」

私の一言で、教室中に静寂が訪れた…だが、その時一人の言葉が

その空気を破った、その声を発しているのはハヤカだった。

「ねえ、つまりドルチェは何を演奏するの?」

「私がカノンの横で演奏するのはこれです!」

私は先生を指差し、先生は教卓に隠していたバイオリンを取り出す。

「おいおい、まじかよすげーじゃね〜か」

「ドルチェさんってバイオリン弾けたんだ」

「ちょっと待ってドルチェ?あんたバイオリンなんてやってたっけ?」

「それは、私の実力を見たほうが早いですね先生ちょっと予定違いですけど

バイオリンくださいませんか?」

私は先生の目を見てお願いする。

「駄目だ君は、みんなの許可がいると言った許可が出るまで

 俺も責任者として渡せない」

「わかりました、皆さん!私はバイオリンを合唱祭で弾きたいです!

 許可をくださいませんか?」

「ドルチェさんがすごいのはわかってるし、やりたいって言うならいいんじゃないか?」

「でも、ルール的にどうなの?」

「主催の先生がいいって言ってんだからいいだろ」

どんどん、賛成の手が上がっていく、最終的に許可を出していないのは

ハヤカだけとなった。

「みんな疲れるだろうから、手下げていいぞ」

「ハヤカどうして認めてくれないの?」

「あんたは、いちばん大切なものに気づいてないからよ」

私のいちばん大切なもの?…「仲間…そうか、カノンあなたの意見を聞かせて?」

カノンは最初は笑っていたが、前に出ると緊張なのか顔をずっとふせていた。

「私の案に賛成してくれる?」

カノンはポケットから、紙とペンを出し何かを書いていく。

どうやら、うまく声が出せないなりにカノンも工夫していたようだ。

私はカノンの手紙を受け取ると声に出して呼んだ。

「ドルチェちゃん、よろしくね。

 私に音楽の楽しさを思い出させてくれてありがとう」

手紙をよく見てみると、声に出さないでという文字のしたに何か書いてある。

ドルチェちゃん、私のためにこんな事してくれてありがとう。

ドルチェちゃんはきっと、みんなを幸せにしたくていろんなことを朝から聞いたりしてるんだよね?

私はカノン、あなたはドルチェ、どうかあなたの悩みもほっとかないであげてね。

カノン…私の願いはみんなを幸せにすることだよ。

「で、カノンの許可も出たこれであとはハヤカあんただけよ」

「よく頑張ったわね、もちろん許可するわよでも1つ条件があるの、

 まだ、指揮が決まってないわね?私にやらせてくれないかしら?」

「みんないい?」

私はみんなに問いかける、みんなはそれぞれのタイミングで頷いてくれた。

「ありがとう、許可するわドルチェ最高の合唱祭にしましょ?」

「ええもちろん!ね?カノン?」

「うん!ありがとう!みんな!ドルチェちゃん!ハヤカちゃん!」

「さあ、みんなの許可が得られた事だしこれをあげよう」

私は、先生からバイオリンを受け取る。

「頑張れよ!まあ俺達もやるけどな!」

クラスのムードメーカーが大きな声で雰囲気を盛り上げる。

そんななか、一番後ろの席にいる

カヤトくんが席から立ち上がり、静かに教室から出ていってしまった。

こんな、盛り上がりだから、他の人も気づいてないようだ。

「ちょっと、先生トイレ行ってきます」

「おう」

私は、バイオリンを机の上において、

カヤトくんを追う。

「ちょっと、待って!カヤトくん!」

「ん?なんだい?ドルチェさんじゃないか?」

「なんだいって、こっちが聞きたいよどうして急に教室から出ていったの?」

カヤトくんは、黙り込んで窓を見つめている。

「もしかして、ハヤカになにか言われたの?」

「ハヤカ…そうか、気づいているんだねドルチェさんは、そうだよ僕はハヤカの事が好きでね…伝えられずにいるんだよ」

「私の質問聞いてた?答えてよ?」

カヤトはこちらに向き直り、少し息を吐いたあと質問に答え始めた。

「僕が教室から出た理由は僕じゃ、

 ハヤカの器じゃないと思って悲しくなっただけだよ、君やハヤカは格好よく立候補出来てたのにさ僕なんて指揮をやりたかったのに想い人にその役をとられるなんてね、

あと、僕はハヤカに何も言われてないよ」

ハヤカだけじゃピアノとバイオリンと人を一気に指揮をとるのは難しいだろう、

じゃあ、この人に…

「ねぇ、指揮やりたいんだよね?」

「うん、そうだけど?」

「やらせてあげる、ハヤカと一緒にね」


「はいはーい!皆さん聞いてください!」

あんなに長々と喋ってたのにまだ教室は

盛り上がっていた。

「ちょっと、ごめんねハヤカいい?」

「うん?なに?」

私はハヤカに耳打ちする。

ハヤカの耳はどんどん赤くなっていった。

「いい?」

「……いいわよ、私一人じゃ指揮とれないもの」

「じゃあ、みんな!ハヤカとカヤトくんは

 一緒に指揮をとってくれます!」

「バイオリンもいるんだから仕方ないよね」

「もはやルール関係ないね」

「まあ、最後だしいいんじゃない?」

よし、いい感じこれであとは二人のどちらかが告白してくれればいい。

「よし!じゃ、席について!」

ああ、いいかんじだったのに結局先生が

邪魔するのか。 


「じゃ、今日の学校はここまで!

 みんな気を付けて帰れよー!」

「はーい!」

私は帰りの支度をすませ、カノンとハヤカに話しかけた。

「ドルチェちゃん?バイオリンどうやって持ち帰るの?」

「うちの家近いし構えながら家帰るよ」

「さっ行きましょうか?」

こうして、三人で帰るのも久々で今日はなんだか心が落ち着く。

「じゃ、私はここで!ドルチェちゃん、ハヤカちゃん今日はありがとう!」

「うん!また明日ねー!」

「じゃね!」

私はバイオリンを弾いて手をふる動作の代わりをする。

「ねぇ、カヤトを説得したのあなたでしょ?」

ここで、違うと言ってもいいのだが

ここは、本当のことを教えてあげよう。

「うん、そうだよ、私が指揮推薦した」

「ありがとう…カヤト、私のことなんか言ってた?」

「ハヤカはしっかりと指揮に立候補出来ていてかっこいいって」

「そうなのね…」

ハヤカの耳がまた、赤くなった。 

「きっと、カヤトくんはあの時立候補しても負けることがわかってたから立候補しなかったんだよ、それにハヤカ?カヤトくんは

あなたと同じ気持ちよ、じゃ私はここで

また明日ね」

「ちょっと!どういう意味よそれ!」

私は、家に入る。

「お母さんただいまー!」

「お帰りー!」

靴を脱ぎ、荷物を片し手を洗って

バイオリンを持ちカウンターに座った。

「あら!なにそのバイオリン?」

「あーこれ?あのね実は…」

私は学校であったことを全て話した。

「そうだったのね、良かったじゃない!

 にしてもあんたバイオリン弾けたのね?」

「まあね、学校でこっそり練習してたの」

そう言うことにしとかなきゃ、信じてもらえないだろう。

「ドルチェ?そう言えば甘いのいる?」

「も~私が甘いの嫌いなこと知ってそれいってる?」

「ごめんごめんそうだったわね、コーヒー淹れるからちょっと待ってて」

お母さんは、私のことを知ってるようで実はなにも知らない、そんな不思議な生命体なのだ。

お母さんのコーヒーを飲み、バイオリンを練習していたらいつの間にか11月16日になっていた。

今日は休日、そしてミーチェがやって来る日

今度こそ力をうまく使ってみんなを幸せにしよう。

確か、20時の夜にミーチェをやって来た、

それまでいつものようにバイオリンを弾こう。

朝食を食べ、いつものように練習をしているうちに20時なやってきた。

そして、私はこんなことを言ったはず。

「私が魔法を使えたら、みんなを幸せにできるのに」

そうすると、予想通り元凶が鏡からやってきた。

「やあ、ドルチェ…いま魔法が使いたいと言ったね?僕と契約したら使えるようになるよ?」

目の前に契約書が出てくる。

本来の私だったらこの契約を結ぶだろうだけどいまは違う。

「ねぇ、こういう契約にしない?

 汝は主人の魔力を完全に引き継ぐ。 

 主人は汝に無限の欲望を与える…て言うのはどう?」

「僕の契約を変更するなんて、君がはじめてだよ、でもいいよこれで契約を成立させよう」

紙の内容が私の提案を書き加えられたものになっていた。

私は、ペンで名前を書く。

「よし、これで君は今日から魔女だおめでとう」 

なぜ、私が無限の欲望を望んだそれは

欲望ならばコントロールできるし、

それに魔力を使うためにも、なにかをしたいという気持ちがいる。

魔力を使わずにいるとまた、魔力を暴走させあんな未来になってしまう。

ミーチェは、私の目の前で倒れる。

「じゃ、君の魔力になるからよろしく」

体に不思議な力がわいてくる。

魔力は万能なのだ、腹がへっても食べればいいし、色んなエネルギーにもなれる。

時を止めたり、未来にもいける。

さあ、ハヤカの願いを叶えに行こう。

時間を一気に合唱際終了時に飛ばす。

よし、ここでカヤトくんとハヤカを一緒にして、告白させよう。

二人を裏庭に誘導し、勇気が出る魔法を二人にかけた。

「よし、このあとはもう私は必要ないね」

沈んで行く、夕日を見つめながら私は空を飛び家に帰る。

その時頭のなかを危険な欲望で染められた。

「…!何この欲望!?」

そのないようは、あの世に行く感覚を知りたいという知識欲だった。

「やめて!私はまだ!やり残していることがあるの!」

その内容は、子を残し魔力を継承する事。

ミーチェの意思だけを私に残し魔力だけを子に継承する事で、元凶はもう私と一緒に消えていく。

このまま、消え去ってもミーチェは再び猫となって甦る、そんなこともうさせない。

私は一気に何十年も先に飛んだ。

「ドルチェさん!客が来てますよー」

「通して!」

ドアが勢いよくあいた。

そこに立っているのは私によく似た人だった。

「どうしたの?お母さん急に呼び出して?」

私はこの娘の名前を知らないだけど、

やるべきことはわかる。

私は、娘の手を握り魔力だけを娘に与える、

ミーチェの意思は私に残して…

完全に魔力だけを継承し終えた、これで

ミーチェは核のみ、本来なら私がこの世から消えたとしてもミーチェは猫に戻るが、

魔力を無くしたいま核は血のない心臓と同じ

「じゃあね、プシア」

私は知らないはずの娘の名前を呼び、

ベランダから飛び降りた。

地面に叩きつけられ、核がガラス細工のように砕け散る感覚がして、私の欲望はやんでいった。





数年後…

ピアノやトロンボーン、バイオリン、

フルートなどの音が聞こえてくる。

そんななか、消えたはずの私は目を覚ました。

「…!ドルチェ!」

「え!?ドルチェちゃん!?起きたの!?」

「お母さんよ!わかる!?」

「ドルチェ!あんた本当によく頑張ったね!」

「ドルチェ!よかった目覚めてくれたんだね!」

カノン、お母さん、先生、ハヤカ、そしてお父さん。

私が目覚めた場所は、病室ではなくコンサート会場だった。

「いい?よく聞いて?これから起こったことを全て説明するわね?遠い未来のあるところに、プシアという女の子がいました」

「プシアは、ある日お母さんから魔力をもらいお母さんはベランダから飛び降り重症になりました」

「しかし、プシアはお母さんを魔力で治し、

 過去に送り返しました…とある手紙と一緒に」

お父さんは私の目の前に手紙を持ってくる。

その内容は私にとっては、嬉しいことだった。

「僕、ミーチェの願いは君と同じ、みんなを幸せにすること、だけどその願いはもう叶ってしまった、だから僕は君の娘の魔力として生きていくよ、核が無くても僕は魔力として生きられるんだ、じゃあね僕はもう魔力を暴走させたりはしないよ、いつかまた会おう

君のもと主人 ミーチェより」

私は、枕の横に置いてある、バイオリンを構える。

思ったように力が入らないがそれでも今はみんなと一緒に演奏がしたかった。

「ドルチェ、無理はしないようにな、

 お父さんが指揮をとるからな?」

ゆっくりと振れていく指揮棒を見つめながら

バイオリンを奏でる。

そのあと、ハヤカ、カノン、お母さん、先生が次々と演奏に参加する。

この空間には、確かに私が幸せにした人たちの愛でつつまれていた。

これが、私のたいせつな全て。

本気で書かせていただきました!

最悪の未来回避出来ましたね!

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