Episode.28
「……私は、命令を受けただけです。」
「誰からだ?」
「“上”から、としか……」
ウィル様はそれを聞くなり、もう一度部下に目配せした。
部下は部屋を出て行った。
もう1人残っていた部下に、グラスは証拠解析に回すよう指示する。
そして給仕と侍従長を捕まえ、侍女は関係なしと処分された。
「エリー、これは事故ではない。我々帝国への反逆罪だ。」
ウィル様はそう呟くと、私に再び水を差し出してくれた。
私は素直に受け取った水を飲む。
彼は愛おしそうな目で微笑むと、再び私を抱き上げて本来用意されていた寝室へ運んでくれた。
今日はもう休むといい。と行って布団をかけ、その大きい手で頭を撫でる。
私はその手の温かさに安心して、微睡んだ。
「頼むから、俺から離れようとしないでくれ。」
眠りに落ちる瞬間、ウィル様が何か言った気がしたが、聞こえなかった。
そして次の日、証拠解析やその他諸々の、証拠集めは一晩で終わらせたらしく、ウィル様は玉座に座る国王へ剣を向けていた。
「今ここで首を切り落とされ国を帝国へ渡すか、全て吐いて帝国への属国となるかどちらがいいか選べ。」
今までに見たことがないほど冷たい目に、聞いたことがないほど冷たい声。
剣を向けられた国王は、狼狽えて冷や汗を流している。
周りの騎士達はウィル様の気迫に押されて1歩も動けない。
一ミリでも動こうものなら、ウィル様に切られる可能性があるからだ。
最初、国王は抵抗したが、刃先が首に当たった瞬間、彼は洗いざらい吐いた。
「こ、これは全て貴国のカルリーニ公爵に唆されてした事だ!我が国は貴国から貿易の際にありえない額の関税が課せられていた!!
そのせいで我が国は特産品だったケシの花や実を使った物が全く利益を持たない物となった!!
……だが、思わぬ誤算もあった。
ケシの“未熟果”には、人を狂わせる力があると分かったのだ。
――そう、“アヘン”だよ
だから私はこれを使い、貴国から巻き上げられた金を取り返したまでだ!!」
国王はあっさりと洗いざらい全て吐いた。
ウィル様はそれを聞き、剣を鞘に収める。
そして高らかに笑う。
「愚かだ。お前は愚王よ。のう?国王。我が帝国は関税なんぞかけていない。関税をかけていたのはその協力者のカルリーニだ。」
ウィル様はそう言って大笑いした。
そして突然笑いを辞め、部下に捉えよと命じた。
ヤンデレにならないように接してきたのに!結局狂気は居たんじゃない!!
私は真っ青な顔をして、その光景を眺めることしか出来なかった。
「エリー。帰ろう。」
全てが終わった。と、こちらを振り返るウィル様は、王子様スマイルを貼り付けて私に手をさし伸ばした。
その笑顔が、さっき剣を振るっていた人と同一人物だと、
頭では分かっているのに、心が追いつかなかった。
私には抵抗する気力も、勇気もなかったのでその手を取り、今日中に帝国へと出発した。
もちろん、罪人となる、そして証人にもなり得る国王を連れて。




