Episode.26
考えても仕方が無いので、私は公爵の話を整理することにした。
前国王を排除し、王国に対する悪政は無くなったものの、他国へ対して戦争では無い、薬を使ったりして内部からの侵略を行なっていると言う。
所詮は今の国王も前国王の息子だ。血は争えないと言うわけだ。
そして今回の視察は、現状確認と言ったところだろう。こんな展開、小説には書かれていなかった。
小説では物事を進めるために‘ご都合主義‘と言う言葉があるが、現実にはいつも理由がある。
転生した今だから分かる。やはりここは、‘小説の中の世界‘ではなく、‘現実‘なのだ。
「はぁ、思ったより血生臭い世界に来ちゃったなぁ。」
寝れる気がしない。
そんなことを考えていたが、私は自分が思っているより神経が図太い性格らしい。朝までぐっすりと眠った。
そして今日からは、黒い疑惑のある国王の元へ向かう。
公爵へ挨拶をして、出発した。
公爵領からはそんなに時間もかからず、王都へと着くことができた。
城へ入り、国王の間で挨拶のため謁見をし夜に行われる歓迎会のため準備をした。
「緊張してきた。」
「大丈夫ですよ、お嬢様が一番お綺麗です。」
「ありがとう。」
用意が終わり、鏡の前で自分の顔を見る。
やっぱり、エリザベスって可愛いわね。こんなに可愛かったら甘やかされてわがままになるのもわからなくもない。だからって、甘やかされて自分が一番優先されるべきだとヒロインに意地悪したり、貶めようとするのは間違っているけれど。
そんなことを考えていると、扉をノックされる。
「エリー、用意は終わったかい?」
「はい!バッチリです!」
私はウィル様と共に舞踏会へ向かった。
「本日はお招きいただきありがとうございます。」
ウィル様と一通り挨拶周りをした。私は少し疲れてしまい、ウィル様から離れてソファに座っていた。
そこにタイミングよく給仕が現れて、私はシャンパンを受け取る。
気付かなかったが、緊張でかなり喉が渇いていたらしい。私はシャンパンを一気に煽り、グラスを戻した。
給仕に手渡そうとした時、誤ってグラスを落として割ってしまった。
会場中に響き渡り、私は慌ててガラスを拾い集める。
そして近くにいた侍女に袋を頼み、そこへ入れた。
焦ったウィル様が駆けつけて、私の手に怪我がないか確認する。
「大丈夫か?怪我は?割れたグラスを拾うなんて…」
「大丈夫ですわ。怪我もしておりませんし。痛くないです。ご心配おかけ致しました。」
私はそう言ってウィル様を安心させる。
「少し疲れたのかもしれません。休憩室で休みますわ。」
私はそう続けて立ち上がった瞬間のことだった。体が、ふっと軽くなった。
音楽が、少し遠くに聞こえる。
まぶたが重く、思考が追いつかない。
——おかしい。
そう思った時には、足元が揺れていた。
これ、完全に疲れてる……
私は壁に寄りかかる。
「おい、大丈夫か?」
「ええ…えっと……大丈夫です。」
強い眠気に襲われて、思考がまともに働かない。身体が熱く感じる。発熱したのだろうか?
ウィル様はなにかに気付いたように、私の脈を取り、そして頬に両手を添えて私の瞳を見つめた。
「……触れたな。」
普段から低い声をより一層低くしてそう呟くと、私を横抱きにして会場を出た。
出る前に外に控えていた部下になにか声をかけていたようだが、頭が朦朧としていて何を言っていたかまでは分からなかった。




