Episode.21
そして時間が経ち、今日はお開きとなった。
「本日はご参加ありがとうございました。また来年もお願いします。」
そう言って令嬢一人一人に手土産を配る。
私がお気に入りの茶葉を個包装した袋だ。
「またね〜バイバーイ。」
隣には軽く手を振ってあたかも主催者側ですという面構えをしたエディ。
こいつはいつ帰るんだ……と思いつつあえて触れないでいる。
そして最後の一人、アナスタシア嬢だけが残った。
「兄さんは一緒に帰らないの?」
「俺はリズと話したい事あるから残るわ。」
「そう。じゃあまた屋敷でね。エリザベス嬢も次は夜会で会いましょう!」
そう言って笑顔で手土産を受けとり、颯爽と馬車に乗り込み、帰って行った。
全員見送りが終わり、一息着く。
そして忘れ物等の最終確認のため、侍女達が片付けている図書館へ再び向かった。
もちろん後ろにはカルガモのコガモのように後を着いてくるエディ。
図書館に着くなり、エディは読書席へ座った。
私も釣られるように向かいの席に座る。コニーが空気を読んで2人分の紅茶を置いてくれ、片付けの方へ混ざって行った。
「それで、話って?」
「リズ、俺、恋したかもしれねぇ。」
えぇ、まぁ、予想は着いていましたよ。
原作通り一目惚れですね。
なんて心の中で茶化しつつ、紅茶を口にする。
「あら、そうなの?誰に?」
「今日来てたエリーゼって女の子。すっげー可愛かった。なんで今まで会わなかったんだろ。俺も城で働いてんのに。」
「お城って働いてる人多いじゃない?特に社交シーズンはさらに増えるし。それで会う機会も無かったんじゃないかしら?」
「そうかも。はぁ……また会えるかな。」
知らん。と一蹴してやりたいが……もしエリーゼとエディが結ばれたら、ウィル様とエリーゼが結ばれる事は無くなり、私の断罪確率は下がる。が、穏便に婚約破棄できる確率も下がる……
「ねぇ、エディ。」
私は持っていたティーカップを置き、エディの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「エリーゼさんを好きになるのは自由だけど、私が婚約破棄出来るまでは、その恋心を公にして欲しくないの。わがままだとは思うけれど…最後まで付き合って欲しい。お願い。」
「あ、あぁ。分かった。」
「ありがとう。」
遅い初恋に浮かれているエディに、圧をかけ笑いかける。
エディからこの作戦を提案してくれたのに、途中で反故にするなんて許さない。
契約は最後まで。クーリングオフ期間は終わり。
まぁ……明日から隣国へ行くことになっているし、エディはこの国に残るからその間はどうしようも無いけれど。
大丈夫……よね?
「じゃあ、また夜会かお茶会で会いましょ。」
「あぁ。また。」
馬車まで見送り、エディは別れ際、私の手の甲にキスをするフリをして帰って行った。
少し心配な事はあるが、エディなら大丈夫。
小さい頃から一緒に過ごしているから、義理堅い男だと信じている。