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Episode.18

 それは突然の出来事だった。

 朝早く、ウィル様の遣いの方から早馬が届いた。

 内容は急遽、この屋敷で茶会を開くと言う皇室からのほぼ命令のようなものだった。

 今日は招待されている夜会もお茶会もないので、ゆっくりしようと思っていたのに…

 手紙を受け取り、直ぐに身支度を整える。



「皇太子殿下がいらっしゃいました。」

「お通しして。」

「かしこまりました。」


 もうすぐでウィル様が来るのね…

 何度も顔を合わせお茶会をしていると言うのに、今更謎の緊張感が込み上げる。

 茶菓子は大丈夫かしら?嫌いな物はないかしら?

 最終確認を済ませ、ドレスの裾を広げ直して、出迎えるためにスカートの前で手を重ねる。


 その直後、扉がノックされ、侍従の声がした。


「エリザベス様、皇太子殿下がご到着されました。」

「ど、どうぞ。」


 緊張のせいで声が上擦ってしまった。恥ずかしい……

 侍従は失礼致します。と、ドアを開け、ウィル様を中へ通す。


「ようこそお越しくださいました。ウィリアム皇太子殿下。」


 社交シーズンに入って何回目かのカーテシーをする。

 顔を上げると、嬉しそうに私を見て微笑むウィル様。その笑みが何だか怖い。

 私はウィル様がソファへ座るのを確認し、向かいのソファへ腰を下ろそうとした。


「隣においでよ。エリー。」

「ふぇ!?」


 突然の提案に、そして初めての言動に、驚きすぎて淑女らしからぬ声が出た。

 何とか誤魔化すため、咳払いをし、微笑む。


「いくら婚約者と言えど、適切な距離感はお守りせねばならないと思うのですが……」

「もうすぐ結婚するんだし、大丈夫だよ。それとも、皇太子である僕の言うことが聞けないの?」


 そんな綺麗な顔で微笑みながら、そんな脅し文句を言われても……

 怖いから従うしかなくなる。


「そ、それもそうですわね。では、お隣失礼致しますわ。」

「うん。」


 満足そうにニコニコ笑うウィル様。その笑顔、破壊力半端ない。



 コニーにお茶を注いでもらい、私達のお茶会が始まった。と言っても、いつものように腹の探り合いになるのかしら…仲睦まじい婚約者なんて無理よね。

 表面上ニコニコ笑っていても、多分私のことは嫌いだろうし…


「エリー、今日来たのは大事な話があるからなんだ。」

「大事な話…ですか?」


 何かしら?遂に婚約破棄?私とエディの作戦が上手く行ったのね!

 基本能天気な私は、浮かれていた。


「あぁ。実は、急遽今年の社交シーズンは隣国へ行かなくてはならなくなってね。」

「そうなのですね…エディも行くのですか?」

「いや、行くのは君だよ。エリー。」

「………え?」

「エリーだよ。」

「わ、私ですか?」

「あぁ。一応まだ婚約者ではあるし、パートナーとして着いてきてもらいたくてね。そして最後の皇宮で催されるパーティーは僕たちに関する、大切な事の発表があるから、それまでには帝国へ帰ってくるけれど、大丈夫だよね?」


 そう言って微笑むウィル様。

 ウィル様よ…その大丈夫は有無を言わさないソレですよね。

 もちろん私に断れる筈もなく、脊髄反射でイエスの返事をしてしまった。



 それにしても大切な発表ってなんだろう?

 もしかして、婚約破棄の事かしら?

 ヒロイン未登場の今、婚約破棄は静かに行われるものと思っていたけれど、エディと恋人の振りをしたからかしら?

 断罪されたら国外追放ないし、処刑。原作通りだと処刑確実。


 でもでも、原作が始まっているはずの時期に地方視察ではなく、隣国へ行くというのはだいぶ離れたのではないだろうか。

 ということはざまぁされて断罪はなし?

 そうだと嬉しいけれど……


 とにかく、発表が怖すぎて夜も眠れないのだった。

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