Episode.17 ウィリアム視点
「起きろ。」
僕はそう言って、目の前で椅子に縛られているオトコにバケツ1杯の水をかけた。
「ぷはっ!げほっげほっ…」
「早速だが、お前の知っていることを全て吐け。」
「誰が言うかよ。」
「そうか。」
挑発的な態度の男を見下ろし、僕は帯刀していた剣を鞘から抜き、男の首へ当てる。
地下牢に置かれている松明に反射して、ギラりと鈍く光っている刀身。
このまま横へ引けば、男の首はいとも容易く飛ぶだろう。
それともゆっくりと、ノコギリのように左右へ往復して切ろうか。
「どちらがいいか選べ。」
「な、何がだよ。」
「苦しく逝くか、楽に逝くか。だ。まぁ、素直に全部吐くなら命は助けてやらんことも無い。」
「分かった!言う!言うよ!!」
男はそう言うと、堰を切ったように全てを話し始めた。
「雇い主は、隣国のモンシェリー王国の国王だ。直接依頼に来たのは、フードを被ってた男だがな。俺が所属してるところは裏情報ギルドもやってるから、同僚に頼んで後をつけさせたら、そいつが国王と会っていた。」
「それで?」
「そ、それで、フードの男と国王の会話で、暗殺依頼をしたって話してたんだとよ。んで、国王もあのお方に知らせるために早馬でどーのって。」
「お前が所属しているギルドは?」
「色々やってるが、簡単に言えば裏便利屋だよ。表で出来ないこと、暗殺、盗み、何でもする。」
何でも…最近流行りのアヘンもこいつらのギルドか?
「アヘンは知ってるか?」
「あぁ。俺たちのギルドがやってる闇市で売り始めたやつだ。ギルドの1人が最近、この国でばら蒔いてるってのは聞いた事ある。だが、それ以上はなんも知らねぇ。国王か言ってたあの方も、アヘンの製造元も分からねぇ。」
やはりな。こいつは暗殺専門の下っ端ってところか。
まぁ、これだけ聞き出せたら十分だろう。
後は僕の部下を使い、捜査を進めるだけだ。
「そうか。情報提供、感謝する。」
「お、おう。俺はもう全部ゲロったから、命だけはっ……!」
そう懇願する彼を一瞥し、僕は躊躇なく剣を横に引いた。
「あぁ。全部吐いてくれて感謝するよ。だから、楽に逝かせてあげるね。」
剣を振り、刀身に着いた血を振り落とす。
「殿下、こちらを。」
「あぁ。それで、やることは分かっているな?」
「はい。」
「ならば下がれ。」
共に話を聞くために、傍に控えていた侍従からハンカチを受け取り、落ちきらなかった血を拭う。
侍従はかしこまりました。と、その場から姿を消した。
それにしても、今回の件は隣国が絡んでいるのか。少し、いや、かなり厄介な問題だ。
取り敢えず、明日一番に皇帝へ報告をして、必要があれば隣国へ…その間エリーに会えないのか。
……いや、エリーを連れて共に隣国へ行けばいい。
婚前旅行だと誘って。その代わりエリーの身辺警護を強化して。
そうだ。それがいい。そうしよう。
僕はなんて頭がいいんだ!
そう自画自賛しながら、自室へ戻り、僕は寝る支度をした。