表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/26

Episode.15

「そう言えば、コニー。公爵令嬢の涙って知ってるかしら?」


 お茶会が終わり、帰りの馬車に揺られている時だった。

 ふと、先程の小説が気になったため、迎えに来てくれたコニーに聞いてみた。


「えぇ。もちろんです。最近平民の間で流行りの恋愛小説です。突然どうされましたか?」

「今日お茶会で私とエディがまるで、公爵令嬢の涙のようだと言われて少し気になったの。」


 コニーは少し困ったような顔をして、「お嬢様が気にする事ではございません。」と言った。

 そんな事を言われてしまえば、俄然気になるのが人の(さが)

 どうしても知りたい欲求に駆られてしまう。


「そんな事言わずに教えなさい。コニー。」


 教えたくなかったとしても、主から命じられてしまっては教えるしかない。

 こんな言い方はしたくなかったけど、隠すにはワケがあるはず。ごめんねコニー。と心の中で謝った。



 コニーが教えてくれた小説の内容はこうだった。

 主人公の公爵令嬢は、幼い頃から想い合ってきた幼馴染みの公爵子息がいた。

 だがある日突然、幼馴染みの従兄弟であり、冷酷非情の暴君と言われている王子と、結婚する羽目になった主人公。

 主人公は貴族としての勤めと、恋心を忘れ、王子に尽くす事を決めた。

 しかし、結婚式の誓いの言葉の瞬間、僅かに残っていた恋心が取っ掛りとなり、神に結婚の誓いを出来ずに悲しみの涙を流すのだった。

 参列していた幼馴染みは、その涙を見逃すこと無く、主人公をその場から連れ出し、駆け落ちすることに決めた。

 その行動に怒った王子は、追っ手を遣わすが、所在は掴めない。

 王子は自ら探しに行く事にし、捜索の末に2人の居場所を突き止める。

 そして王子と幼馴染みとの一騎打ちが始まり、激戦の末幼馴染みが勝利する。

 王子は国民の反感を買っていたこともあり、王位継承権を剥奪され、国外追放。

 継承順位的に、従兄弟である幼馴染みが王子となり、そのまま王に即位し、2人は結婚して主人公は今度こそ幸せな涙を流すのでした。


 と言った様な内容だった。確かに関係値は良く似ているし、今の状況も酷似している。

 これを書いているのは、私達に近しい誰かなのではないだろうか?


「ねぇコニー、この小説の作者ってどのような方なの?」

「そこまでは存じ上げません。なんでも、デビュー作のようで、他の作品はなく、性別も、風貌も一切謎に包まれています。」


 私達が恋人の振りを始めたのはつい最近の出来事だ。

 執筆から出版、そしてたくさんの人が読むまでには長い年月がかかる。

 と言うことは私たちの行動より、小説が執筆された方が先ということになる。

 たまたま似てしまっただけよね。

 未来の事なんて分かるはずがないし。他人の空似のようなものよ。


 何かが引っかかるが、あまり深く考えない事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ