Episode.14 カルリーニ公爵視点
正式に皇子となってからは、社交活動に力を入れた。
最初は当然敬遠されたが、活動していくうちに皆私の話に耳を傾けてくれるようになった。
父上とは、兄が皇帝になった暁には、臣籍降下し、公爵家へと婿入りすることが決まった。
もちろん、これに納得いくはずはない。私こそが皇帝に相応しい男なのだから。
私の人生の目標。皇帝。
皇位に就くには、クーデターを起こす他ない。そのためには他国の協力が必要だ。
私は他国へのコネクションを広げるため、数カ国へ外遊する事にした。
その中で、最も利害が一致したのが隣国のモンシェリー王国。
我が帝国からの重関税により、苦しんでいるのだそう。戦を起こそうにも、資金不足、兵士不足、そして土地柄の問題で食糧不足のため、手が出せずにいるらしい。
国王との面会の時、重関税をどうにかしてくれと泣きながら懇願されたので、親身な振りをすると話してくれた。
それからモンシェリー王国での外遊が終わるまでに、事細かな契約を結んだ。
まずは国内から破綻させて行き、手が回らなくなったところで攻め入る。
混乱に満ちた国を攻め落とすのは簡単だ。
内部からジワジワと、毒を広げて食い殺す。
まずは、貧民から、平民、貴族へとアヘンを広める。アヘンは最近発見された、強い依存性と多幸感に浸れる、非常に危険な毒物の一種だ。
足がつかないように、着々と辺境から広めて行く。
そして王都の貴族へ広がった時が、チェックメイトだ。
チェス盤のキングの駒の前にクイーンの駒を置く。
「もうすぐで、チェックメイトだよ。兄上。」
「父上は本当に、趣味が悪いですね。」
「笑わせるな。私よりもタチが悪いのはお前だろう。」
「俺はただのビショップですよ。」
そう言いながら、我が息子エドモンドはビショップの駒を盤から取り上げ、ニヤリと笑った。
私の性格をさらに二、三度捻りあげたような性格のエドモンドは、自分の事を聖職者だと言って、笑った。
「ところで、あの計画はどうなっている?」
「何も心配いりません。ウィルも、エリーも俺の思った通りに動いてくれています。」
本当に恐ろしい男だ。私の計画を知るやいなや、貴族の方は俺が壊すから任せてくれと。
任せた結果、こんなに上手くやってくれるとは。
皇太子の地方視察は取りやめになり、エリザベス嬢を誘惑する事で、下位貴族、平民から高位貴族への不信感を買い、今や社交界はぐちゃぐちゃである。
エリザベス嬢の生家であり、政敵のロレーヌ侯爵の立場を悪くする事ができた。
「期待以上だよ。さすが、我が息子だ。」