Episode.10
次の日、夜会で神経の削られる時間を過ごしたからか、起きると正午を回っていた。
専属メイドのコニーに湯桶を持って来てもらい、寝ぼけた脳を覚まさせる。
「お嬢様、昨日はお疲れのご様子でしたが、体調の方は如何ですか?」
「良く眠れたから、大分すっきりしたわ。それよりコニー、今日の予定は?」
「本日は、ムート伯爵家の夜会へ参加予定です。ドレスコードの指定もございます。」
そう言えばそうだった……
確か、3ヶ月前に届いた招待状に、記載されていたドレスコードは、オフショルダーだった気がする。
オフショルダーのドレスは数枚所有している為、新しく制作することはしなかったはずだ。
ドレスルームへ移動して、オフショルダーのドレスを並べる。
コニーはあれもこれも素敵です。と褒めてくれるが、私にはどれも似たり寄ったりだ。
適当に選ぼう。
私は目をつぶり、人差し指を立て、適当な場所をさす。
「さすがお嬢様!本当にセンスがよろしいですわ!」
適当に選んだが、コニーに言われると本当にそんな気がする。
そうして準備を終わらせると、夜会に出発する時間になっていた。
出発の挨拶をするため、応接間にいる両親の元へ向かった。ノックをして中に入ると、そこに当然のように居座るエディの姿があった。
「やぁリズ。準備できたかい?」
「エディ?どうしてここに。」
困惑を隠せないでいると、当然だろう。という顔をして、私の手を取り、微笑んだ。
「行こうか。」
「え、えぇ。お父様、お母様、行ってまいります。」
「気を付けて行ってらっしゃい。」
2人とも笑顔で送り出してくれ、私たちは馬車へ乗り込んだ。
この前エディに参加する予定の夜会を聞かれてはいたが、まさか迎えに来てくれるなんて…
もしかして社交シーズンが終わるまでほとんどずっと!?
「そう言えばエディ、ウィル様は?」
「ウィルは違う夜会に参加してるよ。社交シーズンは二手に分かれて参加して、昼間にそこで話した内容とか整理してるんだ。」
なるほど…それなら今日の夜会へはウィル様は来ないのか。
確かに、言われてみれば去年まで、ウィル様と共に参加していた夜会で、エディを見かけたことは無い。
逆も然りで、エディとウィル様が共にいるのを見た事が無い……。
そのようにして仕事をこなしているとは、大変だ。
「ほら、普段領地に住んでる地方貴族たちも社交シーズンでは皇都に来るだろ?」
「そうね。来るわね。」
「ウィルは地方統括の仕事してるから。挨拶とかもしねぇといけねぇしな。」
こんな簡単に仕事を教えても大丈夫なのだろうか……
少し冷めた目でエディを見る。
まぁ国家機密の仕事をしている訳では無いし、きちんと皇太子としての役割をしているので、大丈夫なのだろう。
が、ウィル様、こんなやつ部下にするの間違ってると思いますよ。
なんて考えていると、馬車は伯爵邸へ着いた。
エスコートされて中へ進む。昨日の会場より大分小さいホール。100人程度集まっているだろうか。
みな各々談笑し、楽しんでいた。
私達も特に踊ることはせず、知り合い貴族達へ挨拶回りをしていた。
「じゃあ、私は向こうの方で待っているわ。」
「え、ダメだよ。今から地方貴族たちへの挨拶回り行くぞ。」
「どうして私まで…」
「将来皇太子妃になるんだから、ちゃんと挨拶しとけ。」
そう言われ、私は渋々着いていくこととなった。
いずれ婚約破棄されるから、仕事がサボれると思ったが、そうは問屋が卸さない。
しっかりと付き合わされた。
エディって、婚約破棄させる気あるのかしら?
胸を張り歩いているが、心の中では肩を落としている。
ある程度挨拶をしたあと、エディはある男を見つけて近づいて行った。
彼は少し小太りで背の丈は私より頭1つ分ほど大きい。
少し強面だが、髭の効果ですこし穏和に見える。
「これは、ダークレッド男爵。お久しぶりですね。」
「お久しぶりです。カルリーニ小公爵。お元気でしたか?」
ダークレッド男爵……たしか領地は山に囲まれている所にある…鉱山が沢山あり、鉄が取れるため、王室へ武器を税収と共に収めている家門。
私も後に続き挨拶をして、二人の会話を見守る。
「そういえば、ダークレッド男爵、最近鍛治職人が、隣国へ移住しているという話は知ってるか?」
「えぇ。もちろんですとも。ですが、我が領地の職人たちは、待遇がいいから出ていかないと申しておりました。」
そう言って自慢げに笑う男爵。
今地方貴族の間ではそんな事が起こっていたなんて…
私も近々領地へ帰り、現状を把握しなければ。
挨拶回りも終わり、気付くと夜会が始まってから2時間が経とうとしていた。
私たちはダンスを踊り、主催の伯爵夫妻へ帰宅の挨拶をして、会場を後にした。
それにしても、エディと踊っていた時の令嬢達からの視線。とても怖かった。
やはり、皇太子の従兄弟であり、皇帝の甥。継承権も持ち、公爵家。そして何より婚約者が居ない。
それは婚活中の令嬢達にとっては一番の優良物件に違いない。
私は彼女達にごめんね。と心の中で呟いた。
誤字すごい酷くて……報告ありがとうございます。
凄く助かりました!!
夜中は寝ぼけ書いちゃうからダメですね、、、