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Episode.9 ウィリアム視点

 その日から数日後、僕は今まで以上にお茶会をする頻度を増やした。

 正直、その分仕事は押しているが、今までエリーを蔑ろにしていた分、つけが回っているのだ。

 やはり地方視察は部下に任せよう。絶対にエリーのそばは離れたくない。

 そうなると必然的に、エディも地方視察へは行かないことになるが、妥協も必要だ。

 エディは僕の最側近なので、離すことはできない。


「地方視察の件だが、トレローニー子爵に任せようと思う。」


 子爵は辺境伯領の担当補佐官だ。これ以上の適任は、僕を除いて他にいない。

 明後日には出発してもらうので、急な出張ではあるが、早退して準備をしてもらう。

 さて、そろそろエリーへエスコートの手紙を出さなければ。

 引き出しから便箋を取り出そうとしたその時、休憩終わりのエディが入ってきた。


「ウィル、今度の夜会のことなんだが、エリーから手紙が来て、一緒に参加しようって。」


「……そうか。分かった。」


 今年初めての夜会なだけに、エスコートを楽しみにしていた分、ショックが大きい。

 僕は平然を装い、引き出しを閉じた。

 今までエリーが出る夜会は全て僕が屋敷まで迎えに行き、エスコートしていたのに。

 一番最初に着飾ったドレス姿を見るのは、いつだって僕だったのに。

 そんなわがままを言うのか。君は。


 君の心は僕の所には無いんだね……残念だ。



 そして迎えた社交シーズンの幕開けとなる、最初の夜会。

 いつもなら主催である、皇族の控え室にいるはずのエリーの姿はない。

 共に登場して、ファーストダンスを踊るのに。

 誰もいないダンスフロアで踊る、2人だけのダンス。

 その瞬間、僕のエリーだとみんなに教え込む時間でもある。

 招待客達からの視線を一気に集め、僕がどれだけエリーを愛しているか、教え込むための。

 僕はそう思っているけれど、エリーからしたら、皇族の婚約者だから。と言う義務的行動なのだろう。


「ウィルよ、いいのか?」


「大丈夫ですよ。父上。エリーは幼い頃から僕だけのエリーですから。今は目移りして居ても、僕の元に帰ってきます。」


 いえ、どこかへ行きたくても放しません。

 そう笑顔で答える。そんな僕を見た父上は、少し困ったような顔をする。

 そんなやり取りを見ていた母上は、呆れてため息をついていた。


「ウィル、そんな性格ではエリザベス嬢に好かれるものも好かれませんわよ。」


「エリーの前でもこんな性格なわけないでしょう。しっかりと、エリーの好きな紳士を装っていますよ。母上。」


 そう答えると、エリザベス嬢にバレてしまえと呟く母上。

 皇后らしくない発言に、心からの笑顔で返す。

 母上は、家臣や召使いたちの前では高貴な皇后として振舞っているが、僕達三人だけの場になると、素を見せてくれる。

 小さい頃からそれが嬉しくて、僕は母上に冗談を投げかけることが多かった。


 三人で過ごす家族の時間が、唯一僕たちが素で接せられる大切な時間だ。

 結婚したらこの空間にエリーも加わる事を考えると、楽しみで仕方がない。

 そんな楽しい時間も終わり、侍従に呼ばれ僕達は会場へ向かった。


 カーテンが開き、会場の皆が注目する。

 会場の端にいる二人を見つける。そんな所で何をしていたのか、何を話していたのか。

 二人並んでいる姿を見ただけで、嫉妬でおかしくなりそうだ。


 そして僕に、会場の皆に見せ付けるように、2人揃って挨拶へ来る。


「帝国の太陽、皇帝陛下、皇后様にご挨拶致します。」


「久しいな。エドモンド、そしてエリザベス嬢。」


「ご無沙汰しております。」


 少し言葉を交わし、タイミングを見計らい、エリーをダンスに誘う。

 僕は(武器)を最大限に使い、手を差し出す。

 この顔をすれば、エリーは断れない事を知っているから。

 ダンスの音楽が流れ出し、僕達はステップを踏み始める。


 エリーのドレスを見れば、さりげなく、お互いの瞳の色を取り入れた装い。

 見る人が見れば、エディとエリーはとても仲のいい恋人だと、ひと目でわかる。

 いつもは僕が送るドレスを着ているのに、今年は違う。

 僕が送るアクセサリーも身に付けていない。

 そんなエリー見ていると、これまで我慢して来たのが馬鹿らしく感じる。

 その瞬間、僕の中に張られていた、糸の切れる音が聞こえた。


 ずっと、大好きなエリーに、愛するエリーに嫌われない為に、自分を偽って、エリーの理想の男性に成ろうとしてきた。

 だけど、それももうここまでだ。もう、僕は我慢しない。

 絶対に。エリーを放さない。どこへも行かせない。

 僕が居ないと生きて行けないと。僕の隣まで絶対に堕とす。

 飛ぶのは終わりだ。



 その翼をもいで、羽を抜き、何処へも飛べないように。

 その唇を縫い、僕以外と話せないように。

 その瞳を抉り、僕以外を見れないように。

 その腕を千切り、僕以外に触れられないように。

 その心臓を縛り、僕以外へ心動かされないように。



 そうだ。なんて簡単な事だったんだろう。

 最初からそうすれば良かったんだ。

 僕だけの、エリー。

 エリー。エリー、エリー。

 絶対に絶対に。ずっと一緒に居るために。


「僕はね、エリー。これからは我慢しないと決めたんだ。」


 そう告げた時、ダンスの音楽が終わった。

自分自身書いていてウィリアムの狂気具合が怖いです。


R15付けた方がいいですかね?

基準が分からないので、感想又はメッセージ等で教えて頂けると幸いです。

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