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Prolog

 好き。大好き。愛してる。君はもうボクのもの。

 何があっても逃がしてあげない。

 ずっとボクと一緒。

 今までもこれからも。

 死んでも離してあげない。

 誰の目にも触れないように、誰も彼女の声を聞かないように。


 彼女にはボク以外必要ないから。

 ボクが買ったものを着て、ボクが用意した所に住み、一生、ボクの中で。

 死ぬ時も一緒に。


 ボクの可愛い可愛いお人形さん。エリー。

 君が行けないんだよ。

 すごく可愛いのが悪い。

 ボク以外の人の前に現れるのが悪い。

 僕以外の、人を見るのが悪い。


 だから、一生、ボクから離れないで。

 ボクの事だけ考えて、ボクの事だけを頼って。

 ねぇ。エリー。世界で一番愛してるよ。いいや、ボク以外、君を愛する事は許さないよ。


 そうして、エリーとウィリアムは死ぬまでずっとウィリアムの幸せの中で生きましたとさ。

 めでたしめでたし。






 ……全然めでたしめでたしじゃない……何この胸糞エンド。

 ヤンデレ溺愛がすぎる!ありえない。

 恋愛小説のはずなのにバッドエンド……。


 主人公はこの狂気の皇太子に好かれたがために、一生囚われの身。

 ヤンデレは好きだけど!こんなヤンデレ無理!!!


 深夜、何気なくスマホを触っていると流れてきた広告。

 漫画の絵が綺麗なのに惹かれ、読み始めた作品。

 話が面白くて読んでいたのだが、続きが気になった私は原作小説が完結している事を知り、思い切って買ってしまった。


 そこまでは良かった。それまでは。

 途中皇太子の婚約者がヒロインに嫉妬して誘拐からの殺人未遂、皇太子が助けて二人の仲はさらに深まる。

 ここまではまぁお決まりパターン。

 この後の、お互い愛を確かめあって終わりかと思いきや、一癖も二癖もある執着監禁エンド。


 ヤンデレがヤンデレすぎて怖い……。

 読まなければよかったと後悔する程の胸糞。


[レビューよろしくお願いします]


「……いいわよ。もちろんレビューしてあげますとも。最低評価でね!!!」


 私は納得のいかない終わり方に腹を立てた勢いで、つい長文レビューをした。


[今まで読んだ作品の中で一番最低な終わり方の作品です。(ネタバレ注意)…………本当に時間を返して欲しい程です。]


 よし、書けた。投稿!軽く数十分くらいは文字を打ち続けていた。

 こんなに最悪な作品は、後にも先にもこれだけだ。

 この作品を超えるものに出会う事は難しいだろう。

 本当にそれほど胸糞なのである。


 気付くと既に夜が明けていて、外では雀のさえずりが聞こえて来た。


「やば!!今何時!?」


 時計を見ると時刻は6時過ぎ。

 急がないと!!!何も考えず家賃が安く広いからと言う考えで住み始めたマンション。職場まで1時間半はかかる。


 急いでお風呂に入り、軽く化粧をしてスーツに着替え、私は家を出た。

 駅まで全速力で走り、改札を抜け、ホームまで駆け上がっている時だった。

 強い目眩がしたと思えば、その拍子に階段を踏み外し、私の視界は大きく揺れた。


 え?落ちる?どうしよう。

 体動かない。てかスーツだから動きにくいし。

 あ〜こんな事ならパンプスじゃなくてスニーカー履けばよかった。

 なんで今日に限ってプレゼンなのよ。


 てか夜更かしするんじゃなかった。

 それもこれも全部あのクソ小説のせいだ。

 あークソ。私、死んじゃうのかな。

 まだ完結してない漫画たくさんあるのに……読みたかったな……


 こんな事になるなら彼氏の1人や2人、作ればよかったなぁ。恋愛、したかったなぁ。


 意識が遠のいていく。嫌でも悟る。あぁ。これが、死なのか。

 私、死ぬのか。全然良くない人生だった。


 来世こそ、逃げずに行動できますように。来世こそ。友達も彼氏も出来ますように……


 桂木優香、享年24歳。


 数多(あまた)の未練を遺して短い生涯に幕を閉じた。 ~完~

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