パンッ!
「院内さん早速だけど今から撮りましょ」
「はい!」
夏休みだからといって先生は休みというわけではなく、夕方に先生の家に集合した。
もう陽菜ちゃんは投稿していていつも通りいいねが付いている。
私も頑張って先生に教わったメイクをして来ているので準備は万端だ。
「今日は私の巫女さん衣装でどう?」
「はい。最初なので先生の得意分野の方が安心です」
着替えていく。
私の巫女さんの衣装はオーソドックスな感じだ。
これなら神社にいても馴染めそうなくらいだ。
髪を高い位置で結んでポニーテールにする。
巫女さんらしくはないが、元々私は髪が短いから巫女さんらしくって寄せるよりも、学生バイトのイメージだ。
首周りがすっきりして悪くない。それにちょっと鎖骨を見えるように……
「あら院内さん綺麗ね。若さ全開ね」
「えっ、先生すごい……」
先生の衣装は巫女さんの衣装には珍しく暗めのバラと茎が禍々しく描かれている。
手には狐のお面が。
やはり世界観作るのは先生が一番上手い。
「ありがと。院内さんこそメイク頑張ってるのね」
「はい!」
気付いてもらえて嬉しい。
先生に教えてもらってからより自分にあうピンクを見つけられるように頑張った。
「それじゃあ撮りましょう。院内さんはどんな風に撮りたい?」
「え?私がですか……」
どんな風に撮るかまでは考えてなかった。
けれど私が憧れていたものなら……
「青春というか……キラキラしたものがいいです」
「わかった!ちょっと待っててね」
「はい」
今ので伝わったのだろうか?
自分でも抽象的すぎたと思っているのだが、それ以外の言葉が見つからなかった。
先生は奥からラジカセとかるたを両脇に抱えて持ってきた。
「院内さん百人一首はできる?」
「一応学校で習ったくらいですけど」
「なら大丈夫ね。私も対して上手じゃないから」
何が何だかわからないまま札を並べてラジカセのボタンを押す。すると授業でよく聞いた札を読み上げる声が部屋に響く。
「院内さん全力でやりましょう」
「え……はい」
先生の事だからきっとこれも意味のあることだろう。
考える暇もなさそうだしここは言われた通り本気でやる。
袖を捲り気合をいれる。
パン!パン!と激しく取り合う。
古典の先生というだけあって強い。
「ちょっと私の方が速かったわ!」
「いえ!これは私が触ってました!」
言い争いになるくらい白熱した戦いだった。
結果は私が3枚ほど負けてしまった。
「はぁはぁ勝ったー」
「先生これは一体なんなんですか!」
息が上がるほどの対戦をしたが結局最後まで意図はわからなかった。
勝って嬉しそうなのが余計に腹が立つ。
「院内さんって結構負けず嫌いよね」
「そうですけど……」
「院内さんが真剣にやってる時って自分では気付いてないかもしれないけどすっごくイキイキしてるわよ」
「え?だとしてもいつわかったんですか?」
「ビーチバレーしたときよ」
あのときか。確かに陽菜ちゃんに負けたくなくて必死にやってたけどよく見てる。
「だから院内さんの要望通りキラキラしたとこ撮れたと思うわよ」
先生の視線の先にある小型のカメラが私を捉えていた。
これ隠し撮りじゃ……
「まあまあいいでしょ。さあこの中から何枚か厳選しましょ」
「なんだか2度負けた気分です」
「あっその表情いいわね」
今度は先生自らのスマホで自撮りした。
もっとも嬉しそうな先生とは対照的に悔しそうな私がいた。
「先生を今お面ごと殴りたいです」
「おぉ!言うようになったじゃない!まあ安心して。可愛いのはたしかだから」
確かに先生の言う通り隠し撮りされていたカメラを確認しても本気で戦ってる姿が何処かキラキラして見えた。
「感情剥き出しの戦いって大人になれば成る程しなくなるのよ。何処かで見苦しさに変わるの。
だからキラキラして見えるのよ」
「そういうものなんですね」
「そうよ。例え化粧が崩れたとしても可愛い!ってなる最強の年齢なんだから安心して頑張りなさい」
そうか。今の先生の話を聞いて陽菜ちゃんがなんであんなにもキラキラしてて可愛いのかわかった気がする。
今を全力で楽しんでいるからだ。
しかも撮っているのは大好きなお兄ちゃんなんだから強くて当然だ。
「先生もう一戦しましょう!」
「いいわよ!素材が足りなかったとこなのよ!」
私だって精一杯やってやる。
負けず嫌いなら私が1番だ。




