撮影会
「おにい入っていいよー」
「はーい」
着替えるといって自分の部屋に帰り、20分程すると声が掛かった。
ドアを開けてみると
「ほんとににゃーこさんなんだな、、」
「ちょっと他に感想あるでしょー!」
ウィッグを被っただけで全然印象違う。
派手な髪色とは対照的に清楚な白い水着がよく映えており羽織っているパーカーが海辺で遊ぶ彼女感出てて最高だ。
手首や足首に可愛いシュシュみたいなの付けててよりいい。
「その、やっぱかわいいな」
「でしょー!じゃあこれで撮って」
陽菜のスマホでカメラを起動させる。
はぁ。ほんとに撮るんだな。
「あ、マスク忘れてるぞ」
「さすがおにい!ファンなだけあるねー」
最後の一言が余計だ。
陽菜は体育座りで座って笑顔でカメラ目線で覗きこんでくる。
「じゃあいくぞー。はいチーズ」
撮った写真を陽菜に確認してもらうが、、
「ぜんっぜん可愛くない!おにい感情込めてる!?」
「撮るだけなのに感情いるのか、、?」
「当たり前だよ!おにいの視線の先に私がいるんだからおにいが冷めた目で見てたらそれは冷めた写真になるんだよ!」
「は、はぁ」
熱弁されたがまったく意味がわからない。
とにかくちゃんと撮れってことでいいかな。
「おにい!今は妹の陽菜じゃなくてにゃーこさんを撮ってるんだよ!?」
「い、一緒だろ」
「違う!おにいがキモいリプ送ってたら時のこと思い出して」
「でも知ってしまったらなぁー」
「はぁ、そうだよね私も悪かった」
そう言い陽菜が近付いてくる。
陽菜の気迫に押されてどんどん壁まで追い詰められていく。
「虎生くん私を撮って?」
あれ?妹じゃない。これは完全ににゃーこさんだ。
俺が何度も妄想したにゃーこさんが今目の前で動いている。
自然と落ちていた手が上がりシャッターを押していた。
「やれば出来るじゃん♪」
ニカッと笑った。
この瞬間を逃すわけにはいかないと思った。
何故かはわからないけど。
今までにないにゃーこさんが見えた気がしたから。
撮られたのを確認した妹が写真を確認する。
「ちょっと可愛いじゃん!おにいさすが!」
「あ、あぁよかった、、、」
「この八重歯見えてる感じ最高に可愛いー!」
一瞬悪い夢でも見たのかと思ったが、今目の前にいるのは正真正銘の妹。陽菜だ。
なのにどうして、、、
「おにい才能あるじゃん!」
「そんなによかったか?」
撮った写真を見せてもらう。
自分で撮っててなんだが撮った瞬間のことはあまり覚えていない。
「なんか、、自然な笑顔だな、、」
「おぉー!おにいわかってるねー!」
陽菜がスマホのアルバムから何枚か写真を見せてくれる。
俺も知っている。にゃーこさんの過去の写真だ。
「これもこれもぜーんぶセルフで撮ってるんだよね」
「だろうな」
「私はあくまでフォロワーさんに向けて笑ってたけど今日はおにいに向けて笑ったの。そこが違い」
「こんなに差が出るもんなんだな」
「うん。さっきも言ったでしょ?撮ってる人の目線で写真は変わるって。それは撮られてる私も一緒なの」
「へーなるほどなぁー」
まとめると今までは不特定多数に向けての笑顔だったのが目の前に俺がいることでカメラ越しの人が明確になったってことか。
「それに恋する乙女は可愛いんだから、、、」
きっと写真を見た一人一人のフォロワーが自分に向けられた笑顔だって思うだろうな。
「ん?なんて?考え事してた」
「最低!!!どうせまたキモいリプ考えてたんでしょ!」
「誰が送るか!それにこれでもう撮らなくてもいいだろ」
「おにいこれ見て」
ん?なんだ。
陽菜が差し出したスマホには先程俺が写真を撮っている姿が、、、
「隠し撮り♪」
「お前ふざけんなぁー!!」
「あはははは!これからもカメラマンよろしくー!」
ったく。
ていうかこの写真俺鼻の下伸びすぎじゃねぇか。
何してんだよー俺。