お洒落
部屋でどうしようかと考えていると委員長から電話が掛かってきた。
「もしもし委員長どうした?」
「陽菜ちゃんの投稿みました。意図汲み取ってくれたんですね」
「あぁカンカンだったよ」
「ふふっそうですよね。今陽菜ちゃん横にいます?」
「いや。今はいないけど変わるか?」
「はい。お願いします」
どうやら陽菜の方に用事があるみたいだ。
ドアをノックして委員長からの電話だと伝えると明らかに不機嫌そうになるもスマホを取り出ていくようにジェスチャーした。
「私に用があるなんて珍しいこともあるんですね」
「はい。陽菜さんには申し訳ないんですが勝手に勝負挑ませてもらいました」
「ふーん。まあ、そっちが2人でも負けないけど」
「いえ。私のいいね数だけで戦います」
「え?無茶言ってるのわかってます?」
「もちろん。でも私は負けたくないんです」
「ふーんそう。ストーカーさんが言うなら良いんだけどいいね数は夏休みの合計?それとも単発で?」
「1つならまぐれって言われるかもしれないので合計で戦いたいです」
「舐められたものね。いいけど」
「それではまた」
「ちょっと待って。どうして今回こんな勝負を持ちかけて来たの?」
「それは陽菜ちゃんに勝って虎生くんを手に入れるためです」
「ふーんおにいは絶対に渡さないから」
陽菜の怒気を含んだ声が俺の部屋まで断片的にだが聞こえてくる。
収まったのだ終わったのかと思っているとノックされた。
「ごめんねありがと」
「いいけど大丈夫か?」
「別に。ただ戦いましょうって正式に言っただけ」
「そうか。2人だから強気だな」
「それが自分1人の数字でいいって。しかも夏休み中の合計でだって」
「は?」
聞き間違いを疑うほどに信じられない。
三上先生いるならまだしも委員長の力だけで?
しかも合計ってなるとフォロワーの多い陽菜が圧倒的に有利だ。
「とにかくそれだけ自信があるんでしょ」
「あぁそうなんだろうな」
三上先生と話してよっぽど自信がついたのかもしれない。
不気味さを感じ本当に自分の立てた作戦で大丈夫だったか不安になる。
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私が珍しくお洒落して外に行くものだから両親はとても驚いていた。
今から三上先生と会って作戦会議をする予定だ。
予め教えて頂いていた住所に付く。
インターホンを鳴らすとすぐに出た。普段の学校では見れないオフの姿だ。
「院内さんいらっしゃい。入って入って」
「失礼します」
教師は多忙と聞いていたが本当なのだろう。
家で採点をしていたであろう赤ペンが何本も机に置かれている。
「よし!じゃあまずは院内さんが今度どうしていくかだけど」
「私はやっぱりこの前陽菜ちゃんや先生が言ってくれたようにメンヘラ系で攻めるべきでしょうか?」
「うーんちょっと違うかな」
先生はタブレットを取り出し私のアカウントを開く。そしてスマホでは陽菜ちゃんのアカウントを。
「あとは私のアカウントだけど院内さんので見て」
言われた通りに先生のアカウントを確認する。
どれも世界観がしっかりと作られていて1つ1つの完成度が高い。
「この3つのアカウント見てどう思う?」
「そうですね。先生のは圧倒的に世界観が出来ています。陽菜ちゃんと私はそこまでないんですが、陽菜ちゃんには可愛さという圧倒的な武器がありますね」
私のは今撮って今上げたんでしょってぐらいのクオリティだ。こうして3つ並べてみると違いは明白だ。
「そうね。ただあくまで私や陽菜ちゃんはしっかりとベースを作った上でキャラ付けしてるの。だから院内さんも自分の強みをまずは理解してからキャラ付けしないとチープなものになるわよ」
「なるほど。でも私って陽菜ちゃん程の可愛さも先生程の綺麗さもないです」
どっちを取っても2人に勝てるとは到底思えない。
やはり圧倒的なビジュアルがないと駄目なのかと悔しい。自然と手にも力が入る。
「あのね。院内さんは事情があるのだろうけどメイクとかお洒落が中学生で止まっているのよ」
心当たりがある。
イジメられて目立たないように好きだったお洒落も辞めてしまった。
「だけど貴方はほぼすっぴんでこれ程可愛い。私の見立てなら可愛さと綺麗さ両方を兼ね備えた存在になれると思ってるの」
「両方?私が?」
「ええ。そう思ったこれ用意してたのよ」
先生が取り出したのはお化粧道具。
その中からピンク色のチークを取り出す
「院内さんの必殺技よ」
「ピンク色って……私そんな可愛い色似合いますか?」
「ふふっ。わかってないのね。物事は何事も程度が大事なのよ。もちろんリップとかは可愛さアピールに繋がるけどこれは別なの」
「別ですか……」
「まあいいからちょっと顔貸しなさい」
慣れた手付きでチークを塗ってくれる。
正直これで変わるとは思っていなかったのだが
「どう鏡見てみて」
「わぁ……」
まるで別人のようだ。
ピンクって可愛いっていう先入観があったけど実際は逆だった。
肌の血色を高め、透明感も出してくれる。
まさに綺麗なお姉さんそのものだった。
「あと細かいところも色々あるけどどう?自信ついた?」
「はい!私ってこんなに綺麗になれるんだ……」
「当たり前よ。ほら!次いくわよ!」
「はい!お願いします!」
変わっていく自分が嬉しくて鏡を見る度にどんどん別人になっていく。
気が付くと勝負のこと忘れてお洒落に没頭していた。




