朝焼け
いつもならカーテンの隙間から入る太陽の光で目が覚めるのだが今日は違う。
日の出の瞬間を撮るためベランダに出て待機している。
2階からならよく見えそうだし、カメラの練習にちょうどいい。
「おにいなにしてるの?」
「なんだ陽菜起きてたのか?」
「ちょっとお花摘みにね。それよりやる気になったんだ」
手元の一眼レフを指さしている。
そうだ。昨日帰ってからカメラのこと調べまくっていた。
やる気というか負けん気だ。
「俺も成長しないとな」
「ふーん。じゃあ感動的な日の出に付き添ってあげよう」
「眠たいんだろ。寝とけって」
「いいの。ほら空が明るくなりだしたよ!」
太陽が出てくる方角でカメラを構える。昨日調べたからな。
澄んだ空気がさあ今から暖かくなるぞと言わんばかりに色付き始める。
絞りを調整して顔を出した太陽を撮る。
絞りとは光量を調節するようなもので、絞るほど光量が少なくなり、風景がボケる。被写体が人の時には絞ったりする。
こちらを覗くようにゆっくりと出てくる。まるで太陽が準備はいいかと言わんばかりに。
始めは光量が足りないのであまり絞らない。
太陽が半分ほど出てくると次は光量が強すぎるので少し絞る。
「おにい撮れた?」
「うーんまあ初めにしては?」
「え!?すご!めっちゃ鮮明じゃん!」
「ありがとう。少し疲れたー」
なんとか成功したら今度は眠くなってきた。
戻って寝よう。
「おにいちょっと待ってよ!これすごいよ!」
「そんなにか?」
「うんうん」
改めて撮った写真を見てみるがまあよく出来たかなぐらいだ。
「この写真に流れる空気とか温度全部伝わってくるもん!」
「そ、そうか。そんなに言われると嬉しいな」
「うん!おにい自信持って!」
「ありがと。これで陽菜のも撮るからな」
「おにいこれおにいの裏垢に上げないの?」
「あ、実はだな……」
撮ってる人のほとんどが遠征などして撮っている中、自分の周辺しか撮らない俺は圧倒的に身バレのリスクが高い。
いいなって写真があったらこっちから声掛けるスタンスでいいかなって思ってる。
「たしかに!今日の写真とか角度で一発だね」
「そうなんだよな。まあ技術は色んな人に聞くから気にしないでいいぞ」
「よーし私もおにいに負けないように頑張るぞー」
ふう。これでゆっくり眠れそうだ。
ベットに入って目を瞑ったら………
「えーーーー!!」
となりの部屋から乙女の声とは思えない声が聞こえてきた。さすがに心配になるレベルなので行ってみると
「おにいこの写真覚えてる?」
「あぁ最後におまけで撮ったやつか」
「それが今めっちゃバズってるの!」
そんな馬鹿なと思いながら陽菜のスマホを確認すると4.5万いいね。
間違いなくバズってるわこれ。
「これは完全におにいの手柄だわぐぬぬ」
「まあまあ。彼シャツってやっぱいいのかな」
「うーん私もよくわからないけどこれが答えなんでしょ」
たしかに陽菜の言うとおりだ。
なにがバズるかほんとにわからないな。
「コラボしたやつも3万超えるくらいで嬉しかったんだけど……」
「そっちもすごいな!」
こりゃ学校で先生に小突かれるな。
私よりバズりやがってって。
でもコラボ効果は確実にあった。
陽菜もフォロワーがかなり増え、先生も新規の開拓に成功したみたいだ。
だか、そんな状況に喜んでられないのが……
コメント欄みるとかなり指導が入っている。
勉強になるものから誹謗中傷まで。
お前らカメラ小僧全員陽菜に恋させるから覚えておけ。




