帰り道
陽菜はもうお腹いっぱいだと言うようにお腹をさすっている。
デザートまでしっかり食べていたからもう夜ご飯はいらないだろう。
「おにいはお腹いっぱい食べたー?」
「もちろん」
「今日は楽しかったね」
「そうだな。いっぱい写真撮ったから選ぶの大変だけど」
「嬉しい悩みだよね。私前まで写真足りなくて困ったのにー」
家族にバレないようにメイクして化粧して写真撮る大変だったんだろう。
そういう意味では俺にバレて結果的にはいい方向にいってよかった。
「ねえねえ。今日の私も可愛かった?」
「可愛かったぞ」
「そっかそっかー」
可愛かった。そして今までになく色気があった。
おそらく先生に引っ張られるようにだろう。
「おにい約束覚えてる?」
「約束?」
「もうー覚えてないの?可愛い私撮ったら辞めるって話」
「え?」
まさか陽菜はもう満足してその時なのか?
前までの俺なら素直に手を上げて喜んでいたんだろうが………
色んなものを見てきた。
たった1枚の写真を上げるためにメイクして場所選んだりシチュエーション考えたり。
数え切れない下準備があったんだ。
それに掛ける情熱を知っているから今の俺はむしろ辞めないで欲しいとまで思ってる。
「まだ撮ってないぞ」
「え?今日も可愛かったって」
「あれは嘘だ!」
「はぁー?」
「だからもう少しだけ。今度は俺のワガママだ。どうか撮らせてくれないか?」
「ぷふ。おにい引っ掛かったー!」
「は?」
何をこんな大事な話の時に冗談を。
辞めるっていうのは嘘だったのか?
「おにいの口から撮りたいって言葉が聞きたかったの」
「はあー?お前いくらなんでもそれはないだろ!」
「うるさい!ちゃんと伝えないおにいが悪いんだからねー」
まんまとハメられた。
辞めないで安心したがまだ心にはぽっかりと先程感じた寂しさが残っている。
あぁ俺ってほんとにやめて欲しくないんだな。
「おい陽菜!」
「なーにー?怒ったー?」
「ああ!かなりな!だから陽菜が泣き出すぐらい練習台にしてやるからな!」
「はあ?なにそれ?私は練習で委員長が本番みたいな言い方なんですけどー」
「そうかもな」
「おにいなんか褒めて損した!」
ちょっぴりやり返した気分だ。
後ろでストーカーがどうとか言ってるが気にしない。
だって俺は陽菜を撮るためにやってるんだ。
撮る技術だってもう他には負けられない。
俺が陽菜を最高の場所まで連れて行くんだ。
「家まで勝負な!負けた方がアイス奢りな!」
「あーずるっ!」
陽菜はお腹いっぱいで動けまい。
少しズルいが負けっぱなしでは面子が立たないからな。
それにちょっと泣いている顔は見られたくない。
結局陽菜に負けてしまったが汗だと言い訳できたのが救いだった。




