表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/52

スタジオ

スタジオの前で先生と待ち合わせしており、もうすぐ来るはずなのだが……


「ごめんねー!待った?」

「いえいえ。すごい息切れてますけど大丈夫ですか?」

「実はねー今日コンビニのスタッフさんが新人さんでいつものチキン用意してなかったのよー」


結構どうでもよかった。

スタジオ借りてくれてるんだからこっちとしては何も文句はない。


「先生。昨日おにいがカメラもらったみたいでありがとうございます」

「あーもう!全然いいのよ!それよりいい写真撮れた?」

「あ、良かったら見ますか?おにい見せてー」

「おう」


カバンからカメラを取り出し先生に渡す。

一枚、一枚と写真を確認する度に先生の表情が険しくなっていく。出来に不満があったのだろうか?


「ごめんなさい。私には刺激が強すぎるわ」

「え?そうですか?そんな過激なのはないと思うんですけど……」

「いやいや!載せないだろうけど虎生くんの手つきやらしいからね!?」

「え、ええ!?」

「あの2人共ここは外ですよ」

「「あっ」」


一番冷静だった陽菜に諭されて気が付いた。

人通りが少なかったから聞かれずに済んだみたいだ。


「先生私可愛い写真の為ならそれくらい全然しますから」

「私より年下なのに………いやむしろこの界隈だと年上の方が駄目ね。若い子に学ばないと」


先生のこういう所凄く尊敬できる。

実力が見えやすい世界だからか決して侮らない。

先生の投稿の平均的なクオリティが高いのもそういう所からだろう。


「よし!時間になりそうだし入りましょうか」

「はい」


簡単な受け付けをして、先に料金を払っていた。

時間過ぎると延長料金取られるみたいだ。

先生の財布から万札が出て行きそうなのを見てこれ以上見てはいけない。目を逸らしてそれだけの写真が撮れるよう集中する。


スタジオは神社がコンセプトといっても社があるわけではなく、境内を出来る限り再現している。

もっとも神様に関わりそうなものは全て置かれていない。


「すごいわねー。じゃあ陽菜ちゃんと着替えてくるから待っててね」

「はい。わかりました」


俺はカメラを取り出し簡単に景色を撮ってみる。

まだ使いこなせていないのもあり、今はスマホに少し毛が生えた程度だ。

今から練習していこう。


「おまたせどうかしら?」

「シャー」


2人共想像以上だ。

先生はいつも通りの巫女さんスタイルとはいえ、今日は気合を入れてきたのが小道具一つ一つから伝わってくる。

陽菜も黒と赤の巫女服が似合っており、メイクも普段とは少しテイストを変え大人っぽくなっている。だが一番の驚きはやはり小道具だ。俺が買っていたものとはレベルが違う。八重歯はしっかりと見えまるで本物のようだ。猫耳も綺麗な黒色なのもそうだがしっかりと立っており、毛並みが整っている。

先生やっぱりすげぇよ。


「2人共最高です!!!」

「ねぇあんな笑顔学校で見たことないんだけど」

「うちのカメラマンは乗せるのも上手いんですよ」

「あーなるほどね。

それじゃあとりあえず私から撮って貰おうかな?表情の確認とかもしたいし」

「はい。もちろんです」


先生が背景を背に立ちそして見上げる。

いつもの先生しか知らない俺はここから絶句する。

目線の先には月があり、先生の表情はどこか寂しげ。

たったこれだけの写真からどれだけの物語が生まれるかもわからない程に情報が押し寄せてくる。

遅れないようにそして今先生が俺に示した情報を漏らすことなく伝わるように撮る。


「どうかなー?虎生くん?」


写真を確認する。


「私の意図伝わってるの嬉しいなぁー。うんいい感じ」

「あの、先生はあの月を見上げて何を考えてたんですか?」

「うーん。さっき逃がしたコンビニのチキンに思いを馳せてたかな」


なんで尊敬できると思ったのにこう落としてくるんだよ。


「ちょちょ!でも私と虎生くんが同じこと感じてる表情は作れてるよね!?」

「あ、たしかに」

「そう!だからなんでもいいのー」


なるほど演技とかそっちの部類になりそうだ。

出来なかった時に陽菜にアドバイス程度に覚えておこう。

さあ次は陽菜だ。


「ふん。ちゃんと撮ってよね」


そう言って陽菜も先生と全く同じ場所に立つ。

まったく同じように月を見上げているのだが、表情だけ違う。

陽菜は気分が高揚しているような顔だ。

妖怪にふさわしく文句のつけようが一切ない。

あの月には先生とは真逆の感情を乗せているのだ。

2人のレベルの高さを痛感するも負けじと撮る。


「おっおにいわかってるじゃん」

「おーなるほど。私より少し顔に重きを置いてるのね。私は月と同じように静かに撮って、陽菜ちゃんは月によってどこまでも覚醒していきそうな感じで撮ってるんだ」

「そ、そんな褒められると照れます………」


ウォーミングアップは終わり。

これから2人を撮って行かないといけない。

今から2人が作り出す空気を理解して撮り方を変えないと。


「それじゃあ最初の出会いのところからいきましょうかね」


陽菜と先生は反対に別れる。

なるほど。最初の出会いか。


「よーしいくよー」

「はいお願いします」


先生の合図で始まった。

陽菜だけ舞台の裏までいきそこから足音が聞こえてきて、見えた!!!!


なんて表情だ。口角は上がりきり、そこから見える八重歯の野性味を活かしてより妖怪に近い。

目はまるで相手を品定めしているようで見下している。

もちろんその先にいるのは先生だ。

先生は気付き振り返り鋭い視線を送る。

巫女服の着かたも陽菜の崩す感じではなく着こなしている。


ここで俺はシャッターを切る。

すぐに確認すると及第点といったところだかろうか。もちろん俺の実力不足。

しかし、先生の絶対零度のような視線と陽菜の情熱的で野性味溢れる視線がぶつかり打ち消している。


これで終わりじゃない。

陽菜の方からゆっくりゆっくりと近づいていく。

対して先生はまったく動かない

はっ!!!これは俺がお願いしたカットじゃないか。

ならば恐らくここから更に近付き、顔が触れそうな位置にまできた。

いや触れた!陽菜のおでこと先生のおでこを合わせ、陽菜が顎を引きまるで挑発しているようだ。

対して先生はどこまで冷たい視線のまま睨みつけるのだうか。

陽菜の口角が上がるのを確認してシャッターを切った。


「ふぅーおにいどう?これおにいが提案したやつだけど」

「もう上まで行ってるからわからん。でも凄くよかったと思う」

「うんうん。さすが優秀なカメラマン。一番いい瞬間を撮ってくれてるね」

「ほんと。この写真は私けっこう好きだよおにい」

「ありがとね。2人の表情のお陰だ」


俺が想定していたものを軽く超えてきた。

まさに人間対妖怪の戦争の口火が今切られる瞬間を撮れた。

今日は2人に驚かされぱなしだ。


「それじゃあお互い好きなポーズで撮りましょうか」

「はい。先生ついてきてくださいね」


これからは2人の撮ってみたかったポーズを撮る時間みたいだ。

陽菜は神社の猫になっていたり、先生は明るい巫女さんしたり盛り上がった。

そうしているとあっという間に時間が来てしまい終わりになった。

今日は疲れたな……

神経使ったから変な疲れだしこのまま家で寝ようかな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ