チェンジ
「虎生くん私どうしたらいい?」
「何もしなくて大丈夫」
「え?」
「自然体の委員長が撮りたいんだ」
「う、うん」
いつも通りでいい。
自然体の委員長にこそ意味がある。
「こうかな?」
「ポーズもしなくて大丈夫」
「えぇそれだと立ってるだけだよ?」
「大丈夫だから」
「わかりました。じゃあ」
ほんとに普通に立っているだけ。
いつもの委員長は猫背気味で自信無さげで目だってあんまり合うことない。
俺はそれが委員長だと思っていたし、みんながそう思っていた。
だけど違った。
保健室で見た委員長は大胆で自信満々で目が輝いていた。
もはや二重人格に近いレベルで演技してて、おそらく自分すら騙しているんじゃないだろうか。
その為の眼鏡だろう。
だから俺はこの方法を思い付いた。
何気ない女の子としか思われない委員長と眩しいほどの光を放つ委員長。
この2枚の写真を同時にアップすることでパッと見たらまさに大変身だ。
もちろん他の人もやっている。
だが決定的な違いがある。
それは陽の女の子が陰の女の子の真似をしているに過ぎない点だ。
だから驚きが圧倒的に少ない。
それに対して委員長は陰も陽もどっちが本物かわからない。
そのギャップが桁違いなんだ。
これを活かせないともったいないだろ。
「委員長。眼鏡取るね」
「え!?ちょっと虎生くん恥ずかしいじゃん!」
委員長の眼鏡を取りあの日みた委員長を呼び出す。
すると風が吹き委員長の髪がなびき、やがて風は止み天真爛漫な委員長がいた。
「虎生くんが眼鏡取ったから!」
「いいじゃん委員長可愛いよ」
「はあ!?あ、わかった!私を乗せようとしてるんでしょ!」
「違うよ本当に」
委員長の顔が紅潮していく。
俺も少し恥ずかしかったが本心だ。
「わかった。じゃあ今から私のことさくらって呼んで」
「まだ名字も呼んだかわからないのに!?」
「えー?呼べないのー?だったらこれ以上は見せられないよー」
なんだよこれ以上って。
今でも充分すぎるぐらいに可愛いのに気になるじゃねえか。
呼んでやるからその先見せてくれよ。
「さくら!……可愛いよ」
「うへへへ……ありがと♪」
初めてみたその打算なしの笑顔はまるで見る者を魅了し思わず足を止め見上げるような満開の桜のような美しさだった。
「どうかなっ!いい感じ?」
「あぁ最高だよ」
ファイルを確認し撮れている写真を見たら思っていた以上だった。
横にスワイプして陰の委員長を確認しまたスワイプして今撮ったのを確認する。
同一人物かも疑いたくなる程だ。
眼鏡の委員長を見て何も考えずに横にスワイプして満開の笑みのさくらを見たら恐らく衝撃に脳を支配され何度も見比べる事だろう。
何度みても完璧だ。
「ねぇ虎生くん」
「ん?どうした?」
「これから眼鏡外したときはさくらって呼んでね!」
「え、えっと……さくら「さん」でもいいでしょうか?」
「うーんまあ呼んでくれるだけいっか!でももし呼ばなかったらわかるよね?」
首を傾げ笑顔でこちらを見ている。あれ?笑顔なのに凄い怖いどうしよう。
「頑張ります」
「うん!ほら!もっかい呼んで!」
「え?!えーと……さくらさん…」
「うんうん!なーに?」
「いや呼んでって言ったからだろ!」
「いいじゃんっ!やってみたかったのー」
そう言ってさくらさんは眼鏡を拾い元の委員長に戻る。
雰囲気がガラッと変わった。
「新城くん。今日はありがとう」
「お、おう」
落差に付いていけねーよ!
そこが良かったんだけどざ
「帰りますか」
「ああ。委員長少し加工して投稿してな」
「もちろんです」
学校の制服で撮ってしまったからバレない程度にしておかないと怖い。
「あ、それと明日からコンタクトにしようと思うのですが」
「絶対にやめて!!!」
「うふふ、冗談です。それではまた明日」
「冗談かよ……じゃーな委員長」
太陽もすっかり落ちかけ部活動も片付け始め校舎にはほとんど生徒は残っていない。
どこからか聞こえてくる吹奏楽の音色に耳を傾けながら屋上をあとにした。




