屋上
あれから2日ほど経ち委員長は定期的に投稿して徐々にいいねを増やしていっており順調そうだ。
三上先生もコンタクト取ってくることなく土曜日まで安全そうだ。
「うーん」
今日最後の授業を終えたので凝り固まった体を伸ばす。
久しぶりの平穏な学校生活だ。満足にこのまま何事もなく過ごせると思っていたのだが………
「新城くんちょっといいかな」
「ん?どうした?」
「ごめんね」
委員長が何やら深刻そうな面持ちで俺の手に何か入れた。
去っていく委員長から視線を戻し手を開けるとグシャグシャの紙が入っておりシャーペンで書かれている。
(三十分後に屋上きて。1人で)
来てって言われてもこの前までストーカーされていた人にほいほいと付いて行くわけが………
だけど深刻そうな委員長の顔が脳裏にちらつく。
絶対だめだってわかっているけど
陽菜には先生に呼ばれたから先に帰るようにメッセージを入れておいた。
そして三十分後。
約束通りの時間にいくと委員長が待っていた。
どこか寂しそうな背中がやはり心配で駆け寄る。
「委員長どうしたんだ?いきなり」
「虎生くん。私やっぱり無理だ」
そう言って俺の胸に寄り掛かる。
一瞬躊躇ったが避けるわけにはいかなかった。
「どうしたの委員長?」
「虎生くんごめんね。やっぱり私駄目だった」
「何を言っ………て……」
視界が揺らいでいく。
駄目だここで意識を失うわけには……
目が醒めると焼けるような空が目に入ってきた。
もう夕暮れか。俺はどうしてこんなところに。
「はっ!委員長は!?」
「虎生くんごめんね」
委員長に近付こうとするもガシャンと音を立て何かが俺を引っ張る。
よく見るとパイプに手錠で繋がれていた。
「私、頑張ったんだ、」
「まって委員長!!」
委員長は眼鏡を外しどこか遠い目をしている。
今は皆の前で作っている委員長キャラじゃない。
「でもね。すっごく悪口言われたんだ」
「それって、」
「虎生くんならわかるよね」
おそらくアンチだろう。
あんなもの無視すればいいのだが最近初めた委員長がわからないのは当然だ。
どうして一番大切なことを伝えていなかったんだと激しく後悔する。
「なのにさ……ヒドイよね」
「委員長話を聞いてくれないか?!」
「虎生くんには話してたよね。私イジメられてたんだ。だから委員長として仮面を被って本当の私は隠していたのに」
「委員長!」
「やっぱり思い出しちゃうよ。悪口言われるとね。あははは震えが止まらないや」
まずい俺の声が届いていない。
「これってあれかな?PTSDってやつかな?怖いよ。ねぇ虎生くん」
「委員長!俺は委員長の味方だ!だから話を………」
「だったさ!私のこと撮ってよ!虎生くんになら出来るでしょ!最高の私を撮ってよ!じゃなきゃ………」
「私がいても良いんだよって言ってよ!!」
委員長の心の叫びがこだまする。
きっと辛かったんだろう。
本当の自分を隠してたのにこんな俺の為、過去のトラウマ背負いながら心の奥底に隠してた「院内 さくら」を見せたのに……
待っていたのは誹謗中傷だった。
それは彼女のトラウマを引き出すには充分すぎた。
「委員長。いや院内さん」
「うん」
「俺があの時止めないで無責任なこと言ってごめん」
「それはいいの」
「うん。だから責任取らせてくれ。今から撮る!」
「いいの?」
「当たり前だ。最高の院内さくらを見せつけてやる」
「虎生くん……ありがとう」
委員長は泣きながら俺の手錠を外す。
やっと開放された右手で委員長が投げ捨てた眼鏡を拾う。
「委員長。これを付けてもらっていいかな?」
「え?どうして?私を撮ってくれるんじゃないの?」
「あぁ撮るよ。最高の写真をな」
委員長の涙をハンカチで拭き、そっと眼鏡を掛けポケットからスマホを取り出す。
「俺は誰も否定しない。だから委員長信じてくれるかな?」
「うん!信じるよ」
アンチ共め。今から最高の写真を撮ってやるから反転するなら今の内だからな。




